2006年07月30日
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
第二十二回 松尾由弘 「経験不具合を活用しよう(その2)」
▼不具合の90%は過去に経験したことだった
再発防止策がきちんとできていなかった頃のことですが、品質不良の現象と原因について調査したしたことがありました。
その結果、現象はいろいろ異なっていても、原因は過去に経験したことがほとんどであることが判明しました。
あるとき、フランス向けの製品に英語を表記した部品を組みつけてしまったことがありました。原因は、英語と仏語の部品が同じ形状であったために、作業者が棚から取り出すときに、二種類あることを知らずに間違えてしまったものでした。
仏語と英語の部品を間違えたのは初めての経験であっても、棚から類似品を間違えて取り出してしまう過ちは、過去に経験していることでした。
このように、起きた現象は初めての経験であっても、原因は、過去に経験していることが多いものです。
製造業だけでなく、製造業、食品加工業、サービス業などについても調査しましたが、原因面で見ると、おおよそ90%が過去に経験している不具合でした。
過去に経験した不具合と同じものが90%を占めているということは、経験した不具合の再発防止をきちんとすれば、不具合を10分の1に減らせることができると云えます。
設計に起因する不具合は、一般にひとつの原因で大量に発生する傾向があります。製造に起因する不具合は、原因はひとつでも現象は多岐に渡ることがあります。いずれにしても、過去に経験している原因が90%を占めていることに変わりはありません。
▼初めての失敗には授業料を払っても良い
「初めての失敗には授業料を払っても良い、しかし同じことに二度と授業料を払うな」
「失敗は責められない、失敗を放置したときにはじめて責められるべきである」
これらは、T自動車のかたがたから教えられた教訓です。失敗経験はノウハウになります。そう考えれば初めての失敗による損失は授業料と考えてもよいでしょう。しかしそれを活用しなければ、再度同じ不具合をだすことになり、損失を発生させることになります。
品質保証は、新製品、新技術、新工法、原価低減との闘いです。失敗を恐れていては、ナンバーワンにはなれません。「初めての失敗には授業料を払っても良い」。この言葉には、「新しいことにも果敢に挑戦せよ」という意味もあります。品質マネジメントシステムを考えるとき、経営者は、社員のチャレンジ精神を大切にしたいものです。
▼経験不具合の対策をチェックシステムにしよう
経営環境は常に変化しています。新製品、新技術、新工法、原価低減などの変化があります。それにつれて人も変化します。担当者の経験だけにしておいては、再発防止が完全にできたとはいえません。
不具合が発生したら、対策をとり再発防止を図ることは当然のことですが、それをチェックシートにしておく必要があります。新製品立ち上げや、品質保証システムの定期審査などにそれを活用して歯止めにすることができるからです。
次回は、事例を挙げてどのようなことをチェックシートに残すべきか、考えてみることにします。
投稿者 matuei : 17:53 | コメント (0) | トラックバック
2006年06月30日
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
第二十一回 松尾由弘 「経験不具合を活用しよう(その1)」
▼ 「学習機能」がなければ企業は永続できない
今回から数回にわたり、業界ナンバーワンを目指すために欠くことのできない失敗経験をノウハウに転じて蓄積する方法について解説します。
企業は生き物、経営環境は常に変化しています。時とともに顧客が変わり従業員も変わります。経験を積んだ従業員もいつかは去っていきます。経験を個人の頭の中に置いたままでは、企業を永続させることは出来ません。企業には「学習してそれを蓄積する機能」が必要不可欠です。
現在のISO9001には、大事な「学習機能」が欠けています。8.5項に「継続的改善」という項目があり以下のように書かれていますが、この中には、「学習して蓄積する」という考え方がありません。
規格の記述******************************
8.5 改善 8.5.1 継続的改善 「組織は、品質方針、品質目標、監査結果、データの分析、是正処置、予防処置およびマネジメントレビューを通じて、品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること。」
***************************************
▼ 「売り物」の改善を優先すべき
規格では、顧客へ提供する製品やサービス、すなわち"売り物"の改善が曖昧にされています。
企業は、製品・サービスを売って生きています。それを作り出す源が品質マネジメントシステムですから、その有効性を継続的に改善することは無意味ではありませんが、顧客へ提供する製品やサービスの改善が優先されるべきではないでしょうか。
まず、規格に書かれた情報源が製品やサービスに対して、間接的であって直接的でないこと、これでは靴の上から足の裏を掻いているようなものです。企業が提供している製品・サービスに対する顧客満足、あるいはそれに代わる評価を、主たる情報源にして品質マネジメントシステムを改善しなければいけません。
▼ 企業の成長には、改善を蓄積するシステムが欠かせない
規格には、売り物に対する「改善策を蓄積するシステム」を持つことが謳われていないことも問題です。人事異動や昇進、昇格で責任者が変わると、考え方・方針が変わり、それまでに経験したことが忘れられてしまい、同じ愚を繰り返すことはよくあることです。そんな愚を避けるために、改善したことを蓄積する機能を明確にする必要があります。
8.5.2項 是正処置という項目がありますが、ここにも再発防止策を蓄積して次の製品・サービスに生かすという考え方が希薄です。
▼ 是正処置をノウハウに転じるシステムを
規格の記述****************************
「8.5.2 是正処置 組織は、再発防止のため、不適合の原因を除去する処置をとること。是正処置は,発見された不適合のもつ影響に見合うものであること。次の事項に関する要求事項を規定するために"文書化された手順"を確立すること。a)不適合(顧客からの苦情を含む。)の内容確認 b)不適合の原因の特定 c)不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価 d)必要な処置の決定及び実施 e)とった処置の結果の記録 f)是正処置において実施した活動のレビュー」
*************************************
ISO9001を導入した企業の多くは、この条項から、失敗事例を蓄積して次のプロジェクトへ活かせるようにしようという発想は生まれていないようです。その場限りの是正処置資料を作って、審査を凌いでいるようにも思えます。
次回は、品質問題の90%が過去に経験した不具合であること、経験不具合を蓄積して次の製品やサービスに活用することの効用などについて解説します。
(次回へ続く)
投稿者 soken : 07:03 | コメント (0) | トラックバック
2006年05月29日
第二十回 松尾由弘 「重点管理をやろう(その3)」
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
第二十回 松尾由弘 「重点管理をやろう(その3)」
営利を目的とした企業経営であれば当然のことですが、品質問題による損失とそれを防ぐ必要経費とのバランスを考えねばなりません。重点管理はこのために必要な管理であるといえます。今回はその具体的な方法について解説しましょう。
▼ 未然防止の基本的な考え方
不具合の未然防止は、以下のように行います。
(1) 不具合が顧客へ与える影響の大きさを小さくする
影響の大きさは、設計や工法を検討することによって改善することができます。例えば、突起部分をなくし怪我などの可能性を解消する、製品やサービスに使用する材料を検討して有害物質の使用を避ける、などの対策が考えられます。
(2) 不具合の発生頻度を下げる
発生頻度は、設備や工法を検討することによって改善することができます。例えば、刃具等のメンテナンスを定期的に行う、手加工を機械加工に変える、などの対策が考えられます。
(3) 不具合の検出度を上げる
検出度は、検査方法を検討することにより改善することができます。例えば、目視検査から測定器を使った検査に変える、あるいはフールプルーフ(不具合品が流れるのを自動的にとめる仕掛け)を採用するなどの対策が考えられます。
▼ 企画段階、提供段階における管理
次に、マネジメントシステムの中に重点管理の仕組みを取り入れることを考えて見ましょう。多くの業種は、製品やサービスを企画する段階と、それを提供する段階の二つに分けて考えることができます。
(1) 企画段階での管理
一般に、新規の製品やサービスの提供を始めるとき、市場調査、研究開発、商品企画、新製品設計、顧客開拓、生産設計、設備投資、部品・材料の調達などというステップが踏まれると思います。そのステップは業界によりまちまちですが、品質問題を防止するために、どこの企業でも、節々で何らかの評価を行いながら進められていることと思います。それらのステップに、以下の手順を組み込んでみましょう。
a) 起こりうる不具合を想定する、あるいは過去の経験不具合から類推する。
b) 想定された不具合について、未然防止策を立てて実行する。
c) 評価する。
d) 評価結果に基づいて設計、設備、工法、訓練などについて対策を講じる。
企画段階から製造・サービスの提供段階へ引き継がれる仕組みとして、建設業には「施工品質計画書」、製造業には「初期流動管理計画書」などがあります。これらについては、回を追って解説する予定です。
(2) 提供段階の管理
一般に、製造・サービスの提供段階では、作業標準書などの標準が整備されて決められた品質を維持する仕組みが作られています。業界によって名称はまちまちですが、品質工程図、コントロールプラン、施工手順書、加工図、引渡し検査規格などがあります。この中に以下の事項を定めておくとよいでしょう。
a) 企画段階で設定された対策を維持する。
b) 不具合が発生した場合の処置を取る体制を決めておき、対応する。
(3) 管理技術の活用
不具合を未然に防ぐ管理技術には以下のようなものがあります。これらを併用すればさらにレベルの高い品質マネジメントシステムを実現することができます。
FMEA(故障モード影響解析):Failure Modes and Effects Analysis
FTA(故障の木解析) :Fault Tree Analysis
ETA(事象の木解析):Event Tree Analysis
PPC(経験不具合確認): Pre-Product-Check
特にFMEAは先に述べた、「顧客への影響の大きさ」、「発生頻度」、「顧客へ渡す前に検出できる度合い」を加味して重要なものから対策を採るというものです。これらの管理技術の詳細な説明はここでは略しますが、PPCについては、是非とも品質マネジメントシステムに取り入れていただきたい技術ですので、回を追って説明する予定です。
▼ ISO9001のここを改造
ISO9001の8.5.2:是正処置には、「是正処置は発見された不適合のもつ影響に見合うものであること」が、また8.5.3:予防処置には、「予防処置は起こりうる不適合の持つ影響に見合うものであること」という条文があります。これらについては、ISO9004で「効率を考えて行うと良い」と付記されています。しかし、7.3項:設計・開発のところでは、重要管理の考え方は表現されていません。そこで、これらを加味してISO9001に、以下の事項を追加しておきます。
**********************
7.3.1.2 重要特性の管理
組織は、要求事項のうち特に重要な特性を指定し(以下重要特性という)それらについて設計・開発の各段階に適したレビュー、検証及び妥当性確認を実施すること。
重要特性には以下を含むこと。
a) 不具合があると事故や他の器物を破損するなどの拡大被害をもたらす恐れのある特性
b) 顧客が指定した特性
7.5.1.1 重要特性の維持管理
組織は、重要特性を管理するための計画をもち、実施し維持すること。
計画には、以下の事項を含むこと。
a) 重要特性の不具合の発生を防止するための管理点
b) 重要特性で不具合が発生した場合の処置要領
**********************
次回へ続く
投稿者 soken : 15:43 | コメント (0) | トラックバック
2006年04月30日
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
第十九回 松尾由弘 「重点管理をやろう(その2)」
▼ 品質特性・品質管理点は重要度に応じて管理しよう
数ある品質特性・品質管理点をすべて一律に管理するのは、不経済であるだけでなく管理が散漫となり重大な不具合を見落とす恐れもでてきます。往々にして1から10まで全てを管理しているはずなのに不具合が発生し、結果的に何も管理していないのと同じであった、ということは良く聞かれる話です。
品質特性・品質管理点には人命に関わるような重大なものから、表面の小さなキズなど顧客によっては容認されるような軽微な欠点までいろいろあります。それぞれのリスクに見合った管理が必要です。そのためには、品質特性・品質管理点の重要度を考慮しなければなりません。では、どんな観点で考えればよいでしょうか。
重要度の評価に良く使われるのは、不具合が顧客に与える「影響の大きさ」( Severity )、その「発生頻度」( Occurrence )、その「検出度」( Detection ) の三つの要素を総合して判断する方法です。具体的にその基準について考えて見ましょう。
▼ 顧客への影響の大きさを考える
「不完全燃焼を起こさない石油ストーブを下さい」と言って買いにくるお客様はいません。不完全燃焼や灯油補給時に蓋が外れる、などということは、お客様にとっては想像すらできないことなのです。企業がお客様の身になって、その重要性を判断しなければなりません。以下に判断基準を、自動車と建築物を例にして掲げておきますので、これを参考に皆さんの会社の製品やサービスの不具合が顧客に与える影響の大きさについて考えてみてください。
Aランク・・・人身事故になりうるもの
自動車では「ブレーキの効き具合」、「操縦性」など
建築物では「耐震性」、「手すりの強度」など
Bランク・・・他の器物を損傷させるもの
自動車では、「車室内の突起物」など
建築物では、「棚の強度」など
Cランク・・・本来の目的をなしえないもの
自動車では、「エンジンの始動」「視界の悪さ」など
建築物では、「雨漏り」「ドアの開閉不良」など
Dランク・・・使用できるが維持費、修理費など顧客に負担が生じるもの
自動車では、「燃費の悪さ」「各種部品の耐久性」など
建築物では、「壁の対候性」「変色」など
Eランク・・・使用できるが商品価値が落ちるもの
自動車では、「塗装のキズ」など
建築物では、「建造物の汚れ」など
この他に、「顧客が受ける損害の大きさ」でランクを決める方法もあります。
Aランクは、人身に絡むもので顧客の損害は「計り知れない」
Bランクは、その製品以外の器物を破損するので「購入価格以上の損害」
Cランクは、「購入価格相当」の損害
Dランクは、一般的に「購入価格より小さい損害」で顧客に不満が発生するもの
Eランクは、実質的な損害はなくても、潜在的な不満が発生するもの
▼ 発生頻度を考える
不具合がどの程度発生するか、その頻度に応じて管理のレベルは変わります。
発生頻度のランク付けは、以下のように考えるとよいでしょう。
Aランク・・・設計に起因する不具合で製品全体が不具合を起こす
Bランク・・・もともと不具合があるものを調整しているために時々発生する
Cランク・・・作業者の熟練度が影響する不具合で時々発生する
Dランク・・・偶発的な不具合でめったに発生しない
この他にも、具体的な数値をあげて、判断する方法もあります。
▼ 検出度を考える
不具合が発生しても、お客様に渡す前にそれを検出して止めることができれば、お客様に迷惑をかけずにすみます。そこで検出できるか否かがランク付けのポイントになります。
これも例を挙げておきます。
Aランク・・・破壊して検査しないと分からない、
あるいは検査工程がない、検査方法がないなど
Bランク・・・目視、感触等、人の五感に頼る検査で検出できる
あるいは、抜き取り検査であり、全数を見ていない
Cランク・・・計測器などを使い客観的に判断している
Dランク・・・自動化、ポカよけなどを使用しており100%検出できる
次回は、これらのランク付けに応じた管理のやり方について解説します。
投稿者 soken : 10:52 | コメント (0) | トラックバック
2006年02月27日
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
第十七回 松尾由弘 「導入しても品質が良くならないという人のために」
▼ 背骨混入「人為ミス」・牛肉問題・米報告書・特異事例と強調
これは2月18日の朝刊一面を飾ったニュースですが、怒りを通り越して思わず笑ってしまいました。なぜなら、「人為ミス」は、クレームに対する典型的な「言い訳用語」だからです。
この見出しから、米国には顧客(日本)の要求事項を実現するシステムが整備されていないことが推測されます。今回は、米国農務省の報告書を例に挙げて、顧客の要求事項を達成するためのシステムについて考えてみることにしましょう。
▼ 「認識不足」は「原因」ではない
新聞すなわち米国の報告書によれば、
『脊柱が混入していた牛肉は、オハイオ州の処理会社が解体した後、ニューヨークの食品加工会社で商品化され、日本向けに出荷された。昨年12月に米国産を輸入再開した際の日米合意では、日本向けの牛肉は脊柱の除去が義務付けられていたが、両社はこの条件を認識していなかった。両社には農務省の検査官も常駐していたが、「日本向けの輸出条件を十分に認識していなかったため、見逃した」としている。』
とありました。
整理すると、(1)脊柱の除去は義務付けられていた。(2)処理会社・加工会社の認識不足だった。(3)検査官の認識不足だった。ということになります。
残念ながら、顧客である日本の要求事項をどのように実現するか、品質保証システムでは非常に重要な過程であるにもかかわらず、この報告書には、述べられていません。
(1)脊柱の除去を義務付けた後、それをどのように各会社へ周知させたのか。(2)検査官に対する教育をどのよう実施したのか、という重要な部分が欠けています。
▼ 特異性の強調は、品質保証能力の低いことの証し
報告書では、さらに、『日本への輸出再開後、初めてのことで唯一の子牛の輸出だった』として特異性を強調しているとのことでした。
「特異性のある商品」は、「特注品」と同義語です。特異性を強調するのなら、今後、特注品は、この国には危なくて発注することができないということになります。特異性があろうが無かろうが、顧客の要求事項をどのように実現しようとしたのか、そのことが解明されなくてはなりません。
▼ 検査体制の強化では、対策にならない
報告書は、さらに、『検査官の再教育を行い、輸出承認の証明書には二人の検査官のサインを求める、再発防止の検査体制を強化する』などと述べられています。
この対策に至っては、呆れてものが言えません。米国農務省に品質保証の分かる人はいないのでしょうか。これが「対策」というのならこの国の品質保証能力は、かなりレベルが低いことになります。
どうして認識不足が発生したのか、その真因を捉えなくてはなりません。米国農務省が各会社へ顧客の要求事項を周知させる過程に「真因」があるはずです。それを捉え、その「真因」に手を打たねば効果のある対策は望めません。
『「原因」は認識不足、「対策」は検査の強化。』
日本の企業がこんな報告書を受け取ったら、「この会社は何もしていないな、机上で報告書をつくったな」と判断します。それが日本の品質管理の常識です。
▼ 再発防止を図れ
米国農務省は、当面の問題だけ改善すればいいと考えているのでしょう。再発防止の観点から対策が取られていません。再発防止というのは、脊柱混入の再発を防ぐという意味ではありません。同類の不具合を防ぐことが必要なのです。脊柱だけではなくて、他の要求事項も満たされなくてはなりません。
▼ 他山の石に
ISO9001を導入しても、品質は良くならないという声を聞きます。ISO9001に原因があるのではなく、米国農務省のようなことをやっているから、品質が良くならないのです。
まず、顧客の要求事項をいかにして満たすか、それを考えてシステムを構築する。不具合が起きたら、システムを見直して修正する。それを継続的に繰り返していけば、必ず品質は良くなります。
これは、筆者が30年余、自動車部品メーカーで品質保証システムの改善に取り組み、成果をあげてきた実績からいえることです。
なお、米国農務省の報告書については、新聞紙上で知りえたことだけで論じています。事実と異なる事項があった場合は、ご容赦を願います。
2006年01月25日
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
第十六回 松尾由弘 「顧客満足はここがポイント(その3)」
前回は、企業が本当に、お客様が望む製品やサービスを提供しているか、ということについて紹介しました。今回は、お客様の声をどのように捉えたらよいかということについて考えてみましょう。
▼ ISO9001、7.2.3項「顧客とのコミュニケーション」
規格には、こう定められています。
**********************
7.2.3 顧客とのコミュニケーション
組織は、次の事項に関して顧客とのコミュニケーションを図るための効果的な方法を明確にし、実施すること。
a)製品情報
b)引き合い、契約若しくは注文又はそれらの変更
c)苦情を含む顧客からのフィードバック
**********************
規格では、a)製品情報、b)引き合い、契約若しくは注文またはそれらの変更、c)苦情を含む顧客からのフィードバックの3項目について、効果的なコミュニケーションの方法を明確にして実施せよ、といっています。この程度のことなら、どこの企業でも何らかの方法で実施しているはずです。問題は「効果的な方法」が明確にされ実施されているか否かというところにあります。前回の遙洋子さんのエッセイと比較して考えて見ましょう。
▼ 規格は無味乾燥
・・・・・・「ETCつけて」という客に使い方を言わない店、「電話かけて」という客に、かけちゃいけないと思う部下、その部下をかばう上司。(中略)、企業戦略や経営術以前に、会話が成立すること、客を大事と思えること、簡単なことが教えられる上司がいない。」・・・・・・
これは、前回紹介した文章の一部ですが、『「ETCつけて」という客に使い方を言わない店』、という部分は、規格のa)製品情報 に該当します。自社の製品情報を正しく顧客に伝えて、理解していただくことが欠けていたのでしょう。
『「電話かけて」という客に、かけちゃいけないと思う部下、その部下をかばう上司。』、という部分は、規格の、b)引き合い、契約若しくは注文又はそれらの変更、c)苦情を含む顧客からのフィードバック、の部分に該当します。顧客の声を受け止めるシステムが欠けていたのでしょう。
コミュニケーションは人と人との問題です。無味乾燥な規格の表現では、理解しがたいものがあります。どうすれば効果的な方法といえるのでしょうか。整理してみましょう。
▼ 規格は、こう改造して使おう
一般には、カタログや会社説明書が製品情報と考えられています。ISO9001の審査を受ける際も、「わが社は、カタログ、ホームページで、公開しています」などと言えば、ほぼ合格点がいただけるようです。
しかし、それでは、遙洋子さんのようなお客様を満足させることはできません。紙に書いたものだけではなく、社員がきちんとお客様に説明できるように、教育しておく必要があります。
また、顧客からの要望や意見を聞いて社内の必要な部署へ伝達する機能も必要でしょう。
そこで、規格に以下の事項を追加して使ってみてはいかがでしょうか。
**********************
7.2.3.1 コミュニケーション体制
組織は、顧客とのコミュニケーションの担当窓口を明確にすること。
顧客担当窓口の担当者は、以下の能力を持つことを確実にすること。
a)顧客への製品およびサービスの説明
b)顧客からの要求、意見、苦情を的確に把握し、社内の必要な部署へ伝達する
**********************
ISO9001を導入しても、品質は少しもよくならないという話をよく聞きます。次回は、製品やサービスの品質評価について考えてみることにします。
2005年12月23日
顧客満足はここがポイント(その2)
第十五回 松尾由弘 「顧客満足はここがポイント(その2)」
ISO9001規格には「7.1 製品実現の計画」という条項があります。今回は、これらについて考えて見ましょう。
▼ お客が欲しいものを売っているのか
お客の欲しいものを提供して適正な対価を得る、これが商取引の原理ですが、われわれ企業は本当にお客様が欲しいと思うものを提供しているのでしょうか。よく考えてみる必要がありそうです。日経ビジネス2004.9.20号に、タレントでエッセイストの遙洋子さんが大変興味のある記事を書かれていました。自分の会社の売り物は何であるかを考えるよい材料になります。ちょっと借用させていただきました。
▼ 遙洋子さんのエッセイ 「電話でばれる会社のレベル」 から抜粋
ETC(自動料金収受システム)搭載車が人気だ。自動車販売店が「数時間で設置します」というので決心した。納車の前に電話するように頼んで車を預け納車を待った。ところがいくら待っても連絡が来ない。販売店に連絡すると上司が出て、「もう出発しました」という。担当者に電話させるように頼んだが担当者から電話がない。(中略)、指定場所と違うところでようやく担当者を見つけ、「なぜ電話をくれないの」と問い詰めると、「話中だったので、してはいけないと思って」という。(中略)、会話をあきらめてETCの利用法を確認した。「これですぐ使えるのね」「はい、カードを差し込めば」「カード?」、初耳だった。(中略)、私は販売店に電話した。上司が「ETC用クレジットカードがいるんです。それはお客様が銀行で発行してもらわないと。こちらの管轄ではありません。うちはETCの機械をつけるまでが仕事です。」「だったらそれをはじめに教えてくれればいいじゃないの。客がETC付けてって言ったら、それが使えるようにする義務はないわけ? 使えなくても関係ないの?」。上司はふてくされた。(中略)、「ETCつけて」という客に使い方を言わない店、「電話かけて」という客に、かけちゃいけないと思う部下、その部下をかばう上司。(中略)、企業戦略や経営術以前に、会話が成立すること、客を大事と思えること、簡単なことが教えられる上司がいない。電話一本でその企業の能力がばれる。
▼ 顧客の欲しいのは「もの」ではなく「機能」
遙洋子さんのエッセイから、
(1)企業にはものを売っているという勝手な思い込みがある。(2)これに対して顧客は「便利さ」などの「機能」を求めている。(3)顧客と企業の意思の疎通の悪さ。といった問題があることがわかります。
顧客が欲しいものは「料金収受をしないで料金所を通過できること」です。これに対して企業側は「ETCを取り付けること」が売り物と考えています。これでは顧客は満足しません。
<視点の違い>
「顧 客」・・・料金収受なしで料金所を通過できるようにしたい
「販売店」・・・ETCを車に取り付けるまでが製品の範囲
▼ 規格にはこう記されている
「7.1 製品実現の計画 組織は、製品実現のために必要なプロセスを計画して、構築すること。製品実現の計画は,品質マネジメントシステムのその他のプロセスの要求事項と整合性がとれていること。製品実現の計画に当たっては、組織は次の事項について該当するものを明確にすること。 a)製品に対する品質目標及び要求事項 b)その製品に特有な、プロセス及び文書の確立の必要性、並びに資源の提供の必要性 c)その製品のための検証、妥当性確認、監視、検査及び試験活動、並びに製品合否判定基準 d)製品実現のプロセス及びその結果としての製品が要求事項を満たしていることを実証するために必要な記録 この計画のアウトプットは,組織の計画の実行に適した様式であること。」
▼ この規格では、真の顧客満足は生まれない
現在のISO9001を忠実に実行しても、製造者あるいは販売店は、ETCの取り付け強度、電波の受信性、運転席からの操作性など、「ものの品質」から離れることは無さそうです。
顧客が求める「ゲートを金銭の収受なしで通過したい」という「機能の品質」を発想するためには、規格の改造が必要です。「7.1 製品実現の計画」は、以下の事項を補足して使うことをお勧めします。
*******************
7.1.1 組織が提供する製品の明確化
組織は、組織が顧客へ提供する製品とその機能を明確にすること。
製品の機能は、顧客がその製品を利用する目的にかなったものであること。
*******************
提供する製品の「機能」を明確にすることにより、ETCを取り付ける目的は、「金銭の収受なしでゲートを通過できるもの」と定義されて、「カードを事前に準備させる」、あるいは「カードを入手してあげる」といった真に顧客が求める事項を発想することができます。
▼ 次回は、遥洋子さんが指摘している顧客と企業とのコミュニケーションについて検討することにします。
2005年11月01日
第二部 品質保証の基本を極めよう
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
第二部 品質保証の基本を極めよう
第十三回 松尾由弘 「不満を感じた客は二度と戻らない(その2)」
▼ 友人Cの証言・・・ハードでなかったハードディスク
パソコンの外付け用ハードデスクを買ったのですが一週間で故障してしまいました。
販売店へ持ち込んで、記録したデータを取り出して新品に交換するように頼んだのですが、ハードディスクは交換してくれたものの記録したデータを取り出せることは出来なかったそうです。
保証期間内だから製品は交換されましたが、データを失ったことで、友人Cはたいへんぼやいていました。その後、そのメーカーの製品は一切買わないことにしているそうです。
▼ 友人Dの証言・・・あかんで家電屋
埼玉県在住の友人D。秋葉原に本店を持つ有名な家電屋が近くにオープンしたそうで、早速、その店で子供にCDカセットを買ってやったとのことでした。
ところが二日目に故障。家電屋に電話したところ、店長はなんだか、つっけんどんなものの言い方をしました。
翌日、交換に行ったら謝るでもなくぶっきらぼうに、きわめて事務的に交換されたとのこと、「何だ、あの態度は」彼はあきれていました。
半年足らずでその店は閉店したそうです。店長の態度が原因か否かはわかりませんが、不満を感じた客が他にも大勢いたのでしょう。
▼ 友人Eの証言・・・惚れてるホテル
家族を連れて静岡へ旅行したときのことだそうです。
初日に泊まった旅館は割烹旅館でしたが、部屋も食事もサービスも家族には不評。
連泊の予約を断って翌日は豪華なホテルに泊まろうと東へ向かいました。
やがて丘の上に見えてきたのはGホテル。
断られるかなあと思いながら入ってみると、運良く今晩は泊まれるとのこと。海岸で遊んで、夕方、ホテルに戻り案内されたのが、有名デザイナーがデザインしたという上品で落ち着いた雰囲気の部屋。大きな窓には駿河湾の大パノラマが広がっています。
夕食は、懐石料理が満席でバイキングになったとはいうものの、和食、洋食、中華、お寿司の屋台が並び、注文に応じて何でもその場で料理してくれるという豪華版。
コック・調理人が競い合っている様は壮観。さすがに焼津はマグロの本場、ネギトロがうまい。子供向けのイベントが組まれており、子供は大はしゃぎ。奥さんも大喜びであったとのことでした。
その後、友人は、静岡方面へ出張したときは必ずそこへ泊まることにしているとのことです。
▼ 教訓その2
友人Cはデータの消滅という"被害拡大"の問題。
友人Dは苦情処理の問題。
友人Eは、期待以上の満足があったときの顧客の反応を示しています。
いずれも、製品あるいはサービスの「価格相応の価値を超えた範囲」の話であり、ここに、ISO9001の規格では補えない経営システムの考え方がありそうな気がします。
▼ ISO9001の改造(次回)
ISO9001には、顧客満足に関連した条項として、「5.2 顧客重視」「7.1 製品実現の計画」「7.2 顧客関連のプロセス」「8.2.1 顧客満足」などがあります。
しかし、これらの条項の内容は製品の製造過程あるいはサービス過程に関する事項にとどまっており、会社を永続的に繁栄させるという本来の企業目的を満足させるものではありません。
次回は5人の証言を基に、企業目的を満足させる観点から、ISO9001の改造について述べることにします。
2005年09月30日
第二部 品質保証の基本を極めよう 第12回 「不満を感じた客は二度と戻らない(その1)」
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
前回まで「第一部 ISO9001を斬る」と題して、現在のISO9001誕生のいきさつなどをまじえて、規格の持つ不合理性、品質保証の原理原則に反する話などを紹介し、ISO9001改造の必要性を述べてまいりました。
今回から「第二部 品質保証の基本を極めよう」と題して、形式的ではなくもっと実践的な品質マネジメントシステムのあり方について、品質保証の基本的な考え方をまじえて紹介してまいります。
―――― 第二部 品質保証の基本を極めよう ――――
第12回 「不満を感じた客は二度と戻らない(その1)」
▼ システムの基本は「顧客満足」にあり
企業が永続的に繁栄していくために、「顧客満足」が最重要課題であることはいうまでもありません。
ISO9001でも、「顧客満足を重視せよ」という要求事項が述べられているのですが、肝心のそれを達成するシステムについては何も示されていないのが実情です。
ISO9001の5.2項には「顧客重視」という項目があり、次のように定められています。
「顧客重視・・・顧客満足の向上を目指して,トップマネジメントは,顧客要求事項が決定され,満たされていることを確実にすること」
また、8.2.1項には「顧客満足」という項目があり、
「顧客満足・・・組織は,品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定の一つとして,顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているかについての情報を監視すること。この情報の入手及び使用の方法を決めること。」
▼ これで「顧客満足」を達成できるシステムが構築できますか
これらは、要求事項であって、「こういう仕組みを作れ」というものではありません。ISO9001を導入した多くに企業は、戸惑っています。さらに、
ISO9000「品質マネジメントシステム−基本及び用語」には、3.1.4項「顧客満足」の定義があり、
ISO9004「品質マネジメントシステム−パフォーマンス改善の指針」には、「顧客重視」「顧客満足」の補足のような記述がありますが、いずれも顧客満足を達成するための具体的な手段を示すものではありません。
では、どうしたら顧客を満足させるシステムが作れるでしょうか。
友人たちの証言を参考にして考えてみましょう。
▼ 友人Aの証言・・・洗濯機の選択
「洗濯機が動かない、みて頂戴」
ある朝、奥さんから言われ点検してみました。スイッチをいれても、うんともすんともいいません。電源回路の接触不良か何かだろうと思い、裏返してみたところ、なんと裏側は埃と錆で汚れきっています。
「考えてみれば独身時代から18年間、よく使ったものだなあ」
感慨に耽っている場合ではありません。洗濯物の山を前に奥さんが困っています。
「修理するよりも、改良された新しいものを買ったほうがいいなあ」
そう思った友人Aは、早速、奥さんと一緒に電気屋へ行ったそうです。ところが店には、各社似たり寄ったりの洗濯機、奥さんは迷ってしまいました。どれにするか、行ったり来たり、店を歩き回っていてなかなか決まりません。業を煮やした友人Aは言ったそうです。
「前のものが18年も使えたのだから、今度も同じメーカーにしたら」
この一言で決定したということでした。
▼ 友人Bの証言・・・取り替えタイヤ
免許とりたてのころ買った新車が、10万キロ走る間にスペアを含めて5本のタイヤが、合計10回もパンクしたそうです。
途中で二本ずつメーカーの違うタイヤに二回交換して、最後にスペア一本が残ったのですが、この間の走行距離から計算すると5000キロに一回の割合でパンクしていたことになるそうです。
それ以来、友人は新車を買いかえるたびに、そのタイヤメーカーのタイヤだけは、装着を断っているといいます。
▼ 教訓その1
友人A、友人Bの二人の話から、品質に対する顧客の思いをまとめてみると、
「顧客にとって品質が良いのは当たり前。良いからといって次も必ず同じメーカーのものを購入するとは限らない。逆に悪いときは、絶対に同じメーカーのものは買わない。」
ということが言えると思います。
品質に問題がなかった場合・・・また同じメーカーを選ぶ確率は50%
品質が悪かった場合・・・・・・また同じメーカーを選ぶ確率は0%
▼ 次回は、更に友人たちの証言を基に、顧客満足の検証を続けます。
ご意見、ご質問を賜ります。下記ホームページの「メール連絡」をご利用いただければ幸いに存じます。
松尾由弘 http://www15.ocn.ne.jp/~blecture/
2005年08月31日
第十一回 松尾由弘 「もっと役に立つ審査制度に改造しようではないか(その2)」
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
第十一回 松尾由弘 「もっと役に立つ審査制度に改造しようではないか(その2)」
▼ 審査制度の当初の目的
部品や材料を購入するとき、購入者がまちまちに購買先を審査していては効率が悪い。第三者機関が代行して審査して認定することにして、購入者はそこから購入すればよいではないか。審査機関が設けられた背景にはこんな考えがありました。2000年改定が行われるまでの審査制度は、この目的に適っていました。
▼ 2000年改定により規格の目的が変わった
しかし、2000年改定により規格の目的は大きく変わりました。品質が保証されていれば、それでよいというのではなく、顧客の満足を高めていく仕組みが出来ていることが重要になりました。改定により規格の適用範囲が追加されて2つになったことは以前にも述べましたが、
ひとつは「要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力があることの実証」。もう一つは「継続的改善のプロセスを含むシステムを適用して顧客満足の向上を目指す場合」です。
▼ 審査制度を改定する必要はないのか
前者は「〜実証」ですから第三者機関が「審査」することには意義があります。証拠を集めて判断することも可能です。しかし、後者の「〜向上を目指す場合」は、「審査」で「合否」を決めるのは、いささか難しい気がします。向上を目指す姿は、画一的に合格、不合格に分けられるものではないと思うからです。
▼ 受審企業のISO9001にかける期待も変わった
ISO9001認証取得の目的は、おおむね以下のように変化しています。
制定当初・・・・・・・欧州に輸出するために、認証を取得しなければならない。
1994年版のころ・・・クレームを低減したい。不良を低減したい。
2000年改定以降・・・経営体制を整えたい。
私は、規格の改定、受審企業のニーズの変化、それらを考えると「審査制度」は「診断制度」に進化しなければならないと考えています。
▼ こうすれば審査制度はもっとよくなる
日本古来の柔道、剣道、書道、そろばん、あるいはスキーや英語のTOEICでもそうですが、検定試験というものがあり、級位、段位などが与えられる仕組みになっています。
人間ドックは、多数の測定項目がありますが、項目ごとに標準値の範囲が示されていて、自分の値がどの位置にあるかが分かるようになっています。 受験者・受診者は、この制度があるから上を目指して頑張ることができます。
いまどき高い審査料金をとって、ISO9001の審査は合否判定だけ。時代錯誤も甚だしいと言ったら言いすぎでしょうか。審査結果にはコメントが付けられますが、これもISO9001の規定事項の範囲の中での指摘であり、総合的な経営改善の観点からは、有効的とは言い難いものがあります。
ここで提案したいことは、合否判定だけの審査はやめて、級位、段位を与えるとか、人間ドックのように細目ごとに相対的な点数を与えるとか、「診断」の要素を取り入れた制度を設けて、受診企業が努力できる場を作ってはどうか、ということです。
ISO9001診断結果は合格、不合格ではなく、人間ドック風に、品質方針の管理は「A」、文書管理は「B」データの分析は「C」などと発表されれば、企業経営の改善に役立つものとなるでしょう。
▼ 認定制度の比較
ここで、いろいろな認定制度の利点、欠点を比較してみましょう。
ISO9001・・・・・・合否判定のみ、維持することだけが目標になってしまう
各種の資格制度・・・段位、級位などがあり、努力目標ができる
人間ドック・・・・・細目ごとにデータがとられてA〜Eのランクが示されるので、どこを改善すればよいか、よく分かる
▼ ISO9001は自己診断に使える
「審査制度」が「診断制度」へ進化するためには、診断の公平性など、まだまだ検討すべき課題があります。
一方、規格の序文に「ISO9001は自社の能力を自分で評価するためにも使える」と述べられています。自己診断してISO9001に適合したことを「自己宣言」してはいかがでしょうか。
ちなみに、日本規格協会から「TR Q0005、TR Q0006、クォリティマネジメントシステム、持続可能な成長の指針/自己評価の指針」という規格が発行されています。少し難しい部分もありますが参考になると思います。
また、自己診断と内部監査と同じではないか、という人がいるかもしれませんが、私は「自己診断」と「内部監査」とは、まったく別のものとして考えています。
この改造論で述べた事項を含めて自己診断できるように、私が作ったチェックシートを第四部で紹介する予定です。
▼ 今回で「第一部ISO9001を斬る」を終了します。次回から第二部に入ります。次回以降は、
「第二部 品質保証の基本を極めよう」
「第三部 変化に対応できるシステムにしよう」
「第四部 もっとよく効く内部監査をやろう」
と続けてまいります。
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