2006年07月30日
相続税事例 納税のための7通りの対策
8月は、いよいよ納税のための7通りの対策です。
〈3)納税のための対策と、その結果生じる事業経営への影響
相続税額が多額にのぼり、かつ十分な金融資産や余裕資産が蓄積されていないため、納税原資が確保されていない場合には、後継者である相続人は、納税資金ねん出のためにさまざまな対策を溝ずる必要がある。
このとき、後継者は、事業継続の観点から、できる限り事業に影響のない形での対策を検討し、また自分たちの生活基盤を維持できるよう工夫をする。しかし、現実には、相続財産の中身によっては、事業に必要な資産の売却や自社株の物納など、事業経営にマイナスの影響を与える対策を打たざるをえない場合もある。
こうした納税資金づくりのための対策をインタビュー事例から次の7通りに整理した。
1)「非」事業用資産の売却
事業に使用していない土地(遊休地)や取引に関係のない株式を売却して、 納税資金をつくる場合である
2)自宅の売却、物納
事業継続を最優先に考え、事業に直接関係のない自宅を売却、物納する場合である。
3)事業用資産の売却、物納
被相続人が事業に提供していた不動産(土地、建物)を売却、物納する場合である。
4)自社株の一部売却、物納
相続財産の大半が自社株であり、売却可能な資産が他にないときに、自社株の売却により納税する場合である。
5)後継者の流動資産充当による納税
相続財産に流動資産が少ない場合に、後継者自身が蓄積してきた流動資産により納税する場合である。
6)延納、納税資金の借り入れ
納税を延納する、あるいは金融機関からの借り入れによって納税する場合である。
7)会社の解散による会社資産の売却
相続財産の売却という方法では、納税資金がつくれない場合に、披相続人が経営していた会社を解散し、会社資産を売却して納税するか(廃業)、あるいは会社を丸ごと売却してしまう場合である。(M&A=自社株の全部売却)。
9月は、対策の結果生じる事業経営への影響です。
なお、今般、中小企業のオーナー経営者に事業承継問題への早期対応の重要性を浸透させ、各経営者の実状に応じた計画的取組を促すためにまとめた事業承継ガイドライン検討委員会の事業承継ガイドライン〔要約版〕をご一見ください。参考になると思います。
・事業承継ガイドライン〔要約版〕
http://jcbshp.com/achieve/guideline_brief_01.pdf
中小企業基本問題研究会(略称:中基研) 合田、亀井
出所:「事業承継(相続税制)が中小企業経営に与える影響」
(平成6年、東京都労働局)
投稿者 matuei : 11:28 | コメント (0) | トラックバック
2006年06月30日
◆1 相続税事例 合田正恒
7月は、6月に続き事業承継で困った相続税事例を紹介します。
今回は、事業が発展させるために資金を他に投入し、余裕資金を蓄積していない事例です
なお、今般、中小企業のオーナー経営者に事業承継問題への早期対応の重要性を浸透させ、各経営者の実状に応じた計画的取組を促すためにまとめた事業承継ガイドライン検討委員会の事業承継ガイドライン〔要約版〕http://jcbshp.com/achieve/guideline_brief_01.pdfをご一見ください。
参考になると思います。
B 事業を発展させるために資金を事業に投入し、余裕資産の蓄積をしていない
中小企業経営者によくある事例として、本業に励む故に相続税対策をおろそかにし、換金性のある資産を蓄積していないことがある。本業に精を出し、事業が順調であることが多く、その結果自社株の評価も高くなりますます相続税負担は大きくなる。
(事例14.都心3区)
A氏(40歳代後半)は、警備保障会社(業歴10年以上、従業者数約100人以上)の創業社長である。会社の業績が好調(年商8,600百万円)なため株式評価が高く、A氏の相続税額の予想も高額(1.2次計420百万円)である。A氏は事業の発展に全力を尽くすあまり、金融資産はほとんど蓄積しておらず、もし、現時点でA氏の相続が発生すると、所有する自社株(評価額938百万円)の一部を処分あるいは物納せざるをえないであろう。その場合、A氏の後継者の持株比率は相当低くなり経営権が縮小することになる。
中小企業基本問題研究会(略称:中基研) 合田、亀井
出所:「事業承継(相続税制)が中小企業経営に与える影響」(平成6年、東京都労働局)
投稿者 soken : 07:02 | コメント (0) | トラックバック
2006年05月29日
相続税事例
◆1 相続税事例 合田正恒
6月も事業承継で困った相続税事例を引き続き紹介します。
今回は、事業が不振のため金融資産を事業に投入し、納税原資がない2事例を紹介します。
■事業が不振のため金融資産を事業に投入し、納税原資がない
現在のように、景気の低迷が長期化し、企業に資金的余裕がなくなった場合、経営者の自己の金融資産を事業につぎ込まざるを得ない事例である。
(事例12.都心3区)
A氏(50歳代後半)は、貸ビル業を営む会社(業歴40年、従業者数数人)の2代目社長(先代社長の娘婿)である。先代社長(義父)が始めた繊維卸業は業績悪化のため廃業し、現在貸ビル業専業である。不振の続いた繊維卸業に金融資産のほとんどを投入してきたので、A氏には余裕資産はなく、自宅(280u、195百万円)、貸ビル、自社株のみである。自宅および貸ビルが都心にあるため評価額(計559百万円)が高く、相続税額の予想は多額(1,2次計141百万円)にのぼっており、もし、A氏の相続が発生すると、貸ビルを売却するしかない。その場合、廃業ということが考えられる。
(事例13.都心3区)
A氏(70歳代後半)は、食器類卸売業を営む会社(業歴40年以上、従業者数数人)の創業者であり、会長である。資産蓄積に努めてきた結果、会社に提供している本社事務所・店舗のほかにアパート、マンションを所有している。金融資産も一応あるものの、会社の事業が不振(年商280百万円)のため会社へ貸しており、実態は長期固定債権と化している。したがって、もし、A氏の相続が発生(相続税評価額537百万円、税額1、2次計132百万円の見込み)すると、本社事務所・店舗は売却できないので、アパート・マンションを売却することになろう。その場含も、昨今の不動産不況を考えると、適当な値段で売れるかどうか心配である。
中小企業基本問題研究会(略称:中基研)
合田、亀井
出所:「事業承継(相続税制)が中小企業経営に与える影響」(平成6年、東京都労働局)
投稿者 soken : 15:41 | コメント (0) | トラックバック
2006年04月30日
相続税事例
4月お休みした事業承継で困った相続税事例を引き続き紹介します。
今回は、相続税支払のための原資が確保できずに納税が困難となる、あるいはなった事例です。
〈2)相続税原資が確保できずに納税が困難となる、あるいはなった事例
相続税額が多額にのぼっても、相続財産の中に納税できるだけの余裕資産(金融資産、売却可能な不動産など)が含まれていれば特に問超はない。しかし、現実には相続税の納税原資が確保できないケースがある。その場合、事業に不可欠な資産を売却したり、経営権の縮小を覚悟しながら自社株を売却、物納せざるをえない事態も起こってくる。納税原資が確保できない要因として、地価の上昇が急で、相続税額が急上昇し、その上昇に資産の蓄積が追いつかないケースが最も多いが、そのほかに
1)一次相続の納税で、納税原資がない。
2)事業が不振のため金融資産を事業に投入し、納税原資がない。
3)事業を発展させるために資金を事業に投入し、余裕資金の蓄積をしていない。等があげられる。こうした相続税の納税原資を確保できない事例を紹介する。
@ 一次相続の納税で、納税原資がない。
経営者の死亡にともなう相続税(1次相続)は納税できたものの、引き続いて経営者の配偶者が死亡した場合、相続税(2次相続)の納税原資をすでに一次相続で使い果たしていることがよくみられる。
(事例10.その他23区)
A氏(60歳代後半)は、貸ビル業を営む会社(業歴50年以上、従業者数数人)の2代目社長である。昭和初期に義父が製造業を始めたが、20年前、義父の死去に伴い工場を売却して、その代金で貸ビル業に転業した。近時、ビルの賃貸収入が芳しくないため、金融資産の蓄積が進まず、義母(80歳代後半)の相続税(25百万円)の納税原資は確保できているが、A社長夫妻の相続発生時には納税原資がない。したがって、その時には、ビル用地の一部物納、あるいは売却をせざるをえず、転廃業のおそれもある。
(事例11.その他23区)
A氏(50歳代)は、車のディーラーを営む会社(業歴20年以上、従業者数約20名)の創業社長である。A氏の現在の資産構成では金融資産も相応にあるようにみえるが、父の相続税を延納しており、実態は金融資産の余裕はない。もし、A氏の相続が発生すると、相続税納税(1、2次計270百万円)には別法人で利用中の不動産か自宅を売却するか、自宅を物納せざるをえない。そうすると、経営者としては、資産的余裕がなくなり、事業の見通しもよくないので、事業継続を断念することが考えられる。
中小企業基本問題研究会(略称:中基研)
合田、亀井
出所:「事業承継(相続税制)が中小企業経営に与える影響」(平成6年、東京都労働局)
投稿者 soken : 10:51 | コメント (0) | トラックバック
2006年02月27日
相続税評価額が大きく納税困難となった具体的な事例
前回は、会社の立地が地価の高い都心にある場合で、多分に他力でしたが、今回は経営努力の結果、経営内容が良好な会社のケースです。
B会社の業績が好調、あるいは内部留保が厚いために自社株評価が高い
経営する会社の業績が好調だったり、会社の内部留保が厚いと、会社の株式評価が高くなり、そのために自社株を中心に経営者の資産評価額が必然的に高くなる。したがって、経営者の所有資産に占める自社株の割合が余りにも高く、その他の金融資産などの蓄積がないと、経営権の縮小につながる自社株の売却、物納に踏み切らざるをえなくなる。また、金融資産の蓄積があっても、ほとんど全てを納税に充当し、その結果、経営者として自社株以外の資産的余裕がなくなってしまうケースもある。
こうした事例として次のようなものがある。
(事例9.都心3区)
A氏(60歳代前半)は、電子部品の開発製造を営む会社(業歴30年以上、従業者数約100人)の創業社長である。会社が急発展中のため(年商約145億円)、株式評価はきわめて高い。ただ、現時点での相続税予想額(約200百万円)程度であれば、納税資金は確保できているが、納税してしまうと、後継者の手元には自宅と自社株しか残らず、経営者の資産としてはゆとりがなくなる。問題は、今後も会社業績が好調を続けると見込まれるため、株式評価がさらに高まると予想されることであり、納税のための資金づくりが間に合わない恐れもある。
いずれも平成6年、MFEMFEMFEMFEMFEM労働経済局
「事業承継〔相続税制〕が中小企業経営に与える影響」報告書より
「中小企業の相続を考える会」事務局
合田理事長、亀井副理事長
2006年01月25日
相続税評価額が大きく納税困難となった具体的な事例
前回は、中小企業によくあるケースで、用地を経営者が賃貸している事例であった。今回は、会社の
立地が地価の高い都心にある場合で、経営者が所有している場合と会社が所有している場合である。バブル崩壊後の地価下落の影響は大きいと思われるが、基本構造は変わっていない。
A会社が都心にあり、商業地〔地価の高い場所〕に立地
事業の沿革や経緯から都心や商業地に立地し、これが事業存続に不可欠な要因になっている場合がある。都心や都内商業地の地価は高いので、たとえ狭い土地でも相続税の評価額が多額にのぼり、相続税額が高額になる。その土地が事業に使用している土地であれば処分することはむずかしく、経営者としては相続税納税資金のねん出に苦慮することになる。
ィ.経営者が都心の商業地に不動産を所有している場合
(事例5、都心3区)
A氏(70歳代前半)、葬祭業を営む会社〔業歴30年以上、従業者数約20人〕の2代目社長である。事業の性格上、本社事務所以外に倉庫スペースが必要であり、この倉庫の土地(528u−評価額約1,820百万円)A氏が提供しているため、A氏の相続税の評価額は巨額にのぼっている。A氏の資産には、金融資産や余裕資産が少ないため、もし相続が発生すると、相続税納税には倉庫に提供している土地を売却、あるいは物納せざるをえないと思われ、その場合、葬祭事業の継続はむずかしくなろう(現地から離れて倉庫を持つことは、緊急性を求められる事業の特色からみて無理)
(事例6.都心3区)
A氏は、室内装飾用品卸業を営む会社(業歴50年以上、従業者数約30人)の社長である。A氏が所有し、会社の事業に提供している土地(264u)は、都心の幹線道路沿いにあるために評価額(約6、000百万円)が高く、予想される相続税額(約4,580百万円)は巨額にのぼる。近年、相続税の節税対策を始めたものの、実態は「焼け石に水」であり、もしA氏の相続が発生すると、事業に提供している不動産の売却、あるいは、物納を余儀なくされ、現状の形での事業継続は不可能となろう。
ロ.会社が都心の商業地に不動産を所有している場合
(事例7.都心3区)
A氏(70歳代前半)は、産業用電気機器製造業を営む会社(業歴50年以上、従業者数約60人)の2代目社長である。会社は戦前の創業であり、工場を都心3区内に所有している。土地の評価額がきわめて高く、土地保有特定会社にも該当するため、自社株評価(額面46.5倍、28%保有、評価額約427百万円)が非常に高い。そのため、A氏の相続税の予想額(約130百万円)は高額にのぼる。A氏の資産は、自宅と自社株が中心で金融資産の蓄積が少ないため、もし、相続が発生すると、自宅または自社株の売却、あるいは物納を余儀なくされよう。
(事例8.都心3区)
A氏(60歳代後半)は、貸ビル業を営む会社(業歴10年未満、従業者数数人)の社長である。A氏の夫が始めた電気機械販売業を、夫の死去に伴い、A氏が貸ビル業に転業した。会社の所有する貸ビルが都心区内にあるため、その評価額が多額にのぼり、その結果、自社株評価が高い。 A氏の資産のほとんどは自社株(100%保有、評価額約1,080百万円)で
あり、他の資産の蓄積がないので、現状ではA氏の相続が発生すると(相続税約600百万円)、自社株の物納、会社の解散、あるいはM&Aを余儀なくされることになる。
いずれも平成6年、MFEMFEMFEMFEMFEM労働経済局
「事業承継〔相続税制〕が中小企業経営に与える影響」報告書より
「中小企業の相続を考える会」事務局
合田理事長、亀井副理事長
2005年11月01日
相続税納税負担が中小企業経営に与える影響の事例
相続税納税負担が中小企業経営に与える影響の事例
われわれは、「事業承継〔相続税制〕が中小企業経営に与える影響」報告書(平成6年東京都労働経済局)を入手し、相続税納税負担が中小企業経営に与える影響の事例を把握することができた。
非常に良くまとまった事例集なので、これから暫く、都庁の了解を得てその事例を紹介していきたい。今回は、相続税納税負担が中小企業経営に与える影響の構造を概観する。
(1)相続税評価額が大きい
相続税評価額が大きい理由として、次のようなケースがある。@事業用地が広い、A都心、商業地に立地、B業績が好調などがあげられる。しかし、
(2)流動資産が不足しており、
@一次相続〔例えば代表者から配偶者が相続〕の納税で、その子が相続する場合などには納税原資が無くなっている
A事業が不振のため、金融資産を事業に投入しなければならない
B事業を発展させるため、資金を事業に投入している
そのため、納税資金の確保ができない。しかし、納税は国民の義務である。
(3)納税のために次のような対策(原資の確保等)をとる。
@「非」事業用資産の売却
A自宅の売却・物納
B事業用資産の売却・物納
C自社株の一部売却・物納
D後継者の流動資産充当
E延納、納税資金の借入
F会社の解散による会社資産の売却
無理な納税の結果、
(4)次のような事業経営への影響が出る。
@後継者の資産的ゆとりの喪失
A長期にわたる返済負担の継続
B後継者の資金調達力低下
C事業規模縮小、効率の低下
D経営者の経営意欲減退
E経営権の縮小
「中小企業の相続を考える会」
合田正恒、亀井 隆