2005年12月23日

 前回は、経営する会

 前回は、経営する会社の事業の性格上、広い土地が不可欠な場合があり、この用地を経営者が賃貸
しているケースであった。今回は、その広い土地を会社が所有している場合である。

@−2 会社が事業用に所有している土地が広い

上記〔1〕と同じく会社の事業の性格上、広い土地が不可欠な場合であるが、この土地を会社が所有しているケースがある。土地を中心に会社の資産評価額が高額になり、その結果、会社の株式評価額が高くなり(※)、ひいては、相続税が高くなる。その場合、相続税に充当できる金融資産やその他の資産蓄積があればよいが、そうでない場合には、自社株の物納やM&A(企業合併又は買収)によって、相続税を納税せざる得ないケースも出てくる。こうした事例として、次のようなものがある。

*土地保有特定会社に該当する場合には、株式評価額はいっそう高くなる。

 土地保有特定会社とは、課税時期において評価会社の有する各資産を、評価基本通達の定めに従い評価した価額のうちに占める土地等の価額の合計額の割合が70%以上または90%以上は、株式評価の場合、必ず純資産価額方式となる。

(事例3.その他23区)

A氏(60歳代前半)は、鋼材卸業を営む会社(業歴30年以上、従業者数約20名)の創業社長である。事業の性格上広い資材用倉庫が必要なので、会社は都区内に広い土地(11,000u)を所有している。しかも、会社が土地保有特定会社に該当するため、会社の株式評価が高く、A氏の相続税予想額(約97百万円)は多額にのぼっている。現状の見通しでは、相続税は、会社からの退職金と蓄積してきた金融資産とにより納税できる見込みだが、会社にとってこの退職金の支払負担は相当な重荷となろう。

(事例4.その他23区)

A氏(50歳代前半)は、金型製造業を営む会社(業歴50年以上、従業者数非公開の3代目社長である。会社が工場として広い土地(1,650u)を所有しているために自社株評価(約1,200百万円)が高く、株式の100%を所有するA氏の相続税予想額も多額(約300万円)にのぼっている。現在、A氏には金融資産の蓄積がないため、もし相続が発生すると、納税には、自宅または自社株の売却、あるいは物納をせざるをえない状況である。

いずれも平成6年、東京都労働経済局
「事業承継〔相続税制〕が中小企業経営に与える影響」報告書より
「中小企業の相続を考える会」事務局

合田理事長、亀井副理事長

投稿者 soken : 14:13 | コメント (0)

2005年09月30日

相続税で資産の再配分その是非をめぐって両論

中小企業の事業承継という視点からではないが、相続税についての考え方を整理するのに、わかりやすい論評を見つけたので、今回は、紹介させていただく。出所は、ほうじん2005.4月号税制((財)全国法人会総連合)情報交差点(藤井彰夫・日本経済新聞社編集委員)

「中小企業の相続を考える会」事務局  合田、亀井

「相続税で資産の再配分その是非をめぐって両論」

 バブル崩壊後の長期不況で企業の淘汰が進み、「勝ち組」「負け組」といった言葉も定着した。−億総中流、平等社会といわれていた日本にも変化の兆しが出て「社会の階層化が進んでいる」という指摘もある。そうした中で、相続税の資産の再配分機能に注目が集まっている。

 日本では資産や所得の再配分を十分にして皆の取り分が公平になる「結果の平等」を重視してきた。だが、右肩上がりの経済成長が終わり、分配するパイも限られてきた。官主導の統制型経済が行き詰まり、民主導の市場経済への移行が進むなかで、もはや「結果の平等」は難しく「機会の平等」が必要という認識が広がってきた。

 企業や金融機関の優勝劣敗による再編・淘汰が進むと同時に、企業も成果型賃金体系の導入など、社内でも「格差」を認める方向が強まってきた。

 その結果、企業でも勝ち組、負け組といった二極化が進む一方、雇用面でも正社員とパート・アルバイトなど非正規社員に分かれ所得の二極分化の傾向も出ている。すでに米国では日本よりも十年以上前からこうした傾向が出ている。

 税制もこれに呼応するような方向に進んできた。一つは所得税率の累進度を緩める税率下げと簡素化だ。努力して働いて給料が上がったのにその分高い税金をとられたのではやる気を失ってしまう。こんな批判から所得が上がるほど税率が高くなる累進税率のカーブを緩めるなどの改革が日米で実施された。

 特に米国では、現在のブッシュ共和党政権が「オーナーシップ・ソサエティー」(所有者社会)という概念を掲げ、公的年金の一部民営化や税制改革を進めようとしている。簡単に言うと「自分で努力して稼いだお金や得た資産は自分のモノ。無駄遣いをする政府には渡さない」という個人の自助努力を重視する思想だ。

 個人が自ら努力して企業や資産の所有者になることを奨励する。逆に言えば「働かざるもの食うべからず」で金持ちから税金をとって社会的弱者にお金を回そうという発想に乏しい。

 こうした思想から米国は段階的な相続税の廃止も決めた。相続税も個人が努力して築き上げた資産を、たくさん持っているというだけで課税されてしまうのでは、子孫に遺産を残そうという個人の努力を阻害してしまうという理屈だ。

 翻って日本はどうだろうか。政府税制調査会が昨年十一月に出した税制改革答申では相続税については「より広い範囲に適切な税負担を求めるため、相続税の課税ベースの拡大に引き続き取り組むことが課題」と記した。つまり相続税も広く増税する方向で議論するということだ。

 所得税率では米国にならって簡素化を進めた日本も、相続税では所得再配分機能を重視しているようだ。それには理屈もある。所得税を簡素化し、低所得者ほど負担が重くなる「逆進性」のある消費税率引き上げが議論される中で、税の所得再配分の機能は低下する。それに歯止めをかけるのに相続税を使おうという考え方だ。死ぬ最後に税金をとるのだから問題はない。

 相続税が低いままだと富めるものにますます資産が集中し、格差が増えかねないという意見もある。同時に高齢化に伴い社会保障費負担が増加する中で、高齢者の資産への課税も必要という声も追い風になっている。

 相続税を軽減して、子孫に財産を残しやすくすればやる気が出るのか。逆に富める者がさらに富み、格差社会が広がり皆やる気をなくすのか。議論はつきない。

 (藤井彰夫・日本経済新聞社編集委員)ほうじん2005.4月号税制((財)全国法人会総連合)情報交差点

投稿者 soken : 17:06 | コメント (0)