2006年05月29日

相続税事例

◆1 相続税事例 合田正恒
6月も事業承継で困った相続税事例を引き続き紹介します。

今回は、事業が不振のため金融資産を事業に投入し、納税原資がない2事例を紹介します。

■事業が不振のため金融資産を事業に投入し、納税原資がない

現在のように、景気の低迷が長期化し、企業に資金的余裕がなくなった場合、経営者の自己の金融資産を事業につぎ込まざるを得ない事例である。

(事例12.都心3区)

A氏(50歳代後半)は、貸ビル業を営む会社(業歴40年、従業者数数人)の2代目社長(先代社長の娘婿)である。先代社長(義父)が始めた繊維卸業は業績悪化のため廃業し、現在貸ビル業専業である。不振の続いた繊維卸業に金融資産のほとんどを投入してきたので、A氏には余裕資産はなく、自宅(280u、195百万円)、貸ビル、自社株のみである。自宅および貸ビルが都心にあるため評価額(計559百万円)が高く、相続税額の予想は多額(1,2次計141百万円)にのぼっており、もし、A氏の相続が発生すると、貸ビルを売却するしかない。その場合、廃業ということが考えられる。

(事例13.都心3区)

A氏(70歳代後半)は、食器類卸売業を営む会社(業歴40年以上、従業者数数人)の創業者であり、会長である。資産蓄積に努めてきた結果、会社に提供している本社事務所・店舗のほかにアパート、マンションを所有している。金融資産も一応あるものの、会社の事業が不振(年商280百万円)のため会社へ貸しており、実態は長期固定債権と化している。したがって、もし、A氏の相続が発生(相続税評価額537百万円、税額1、2次計132百万円の見込み)すると、本社事務所・店舗は売却できないので、アパート・マンションを売却することになろう。その場含も、昨今の不動産不況を考えると、適当な値段で売れるかどうか心配である。


中小企業基本問題研究会(略称:中基研)

合田、亀井

出所:「事業承継(相続税制)が中小企業経営に与える影響」(平成6年、東京都労働局)