2006年05月29日
第二十回 松尾由弘 「重点管理をやろう(その3)」
◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆
第二十回 松尾由弘 「重点管理をやろう(その3)」
営利を目的とした企業経営であれば当然のことですが、品質問題による損失とそれを防ぐ必要経費とのバランスを考えねばなりません。重点管理はこのために必要な管理であるといえます。今回はその具体的な方法について解説しましょう。
▼ 未然防止の基本的な考え方
不具合の未然防止は、以下のように行います。
(1) 不具合が顧客へ与える影響の大きさを小さくする
影響の大きさは、設計や工法を検討することによって改善することができます。例えば、突起部分をなくし怪我などの可能性を解消する、製品やサービスに使用する材料を検討して有害物質の使用を避ける、などの対策が考えられます。
(2) 不具合の発生頻度を下げる
発生頻度は、設備や工法を検討することによって改善することができます。例えば、刃具等のメンテナンスを定期的に行う、手加工を機械加工に変える、などの対策が考えられます。
(3) 不具合の検出度を上げる
検出度は、検査方法を検討することにより改善することができます。例えば、目視検査から測定器を使った検査に変える、あるいはフールプルーフ(不具合品が流れるのを自動的にとめる仕掛け)を採用するなどの対策が考えられます。
▼ 企画段階、提供段階における管理
次に、マネジメントシステムの中に重点管理の仕組みを取り入れることを考えて見ましょう。多くの業種は、製品やサービスを企画する段階と、それを提供する段階の二つに分けて考えることができます。
(1) 企画段階での管理
一般に、新規の製品やサービスの提供を始めるとき、市場調査、研究開発、商品企画、新製品設計、顧客開拓、生産設計、設備投資、部品・材料の調達などというステップが踏まれると思います。そのステップは業界によりまちまちですが、品質問題を防止するために、どこの企業でも、節々で何らかの評価を行いながら進められていることと思います。それらのステップに、以下の手順を組み込んでみましょう。
a) 起こりうる不具合を想定する、あるいは過去の経験不具合から類推する。
b) 想定された不具合について、未然防止策を立てて実行する。
c) 評価する。
d) 評価結果に基づいて設計、設備、工法、訓練などについて対策を講じる。
企画段階から製造・サービスの提供段階へ引き継がれる仕組みとして、建設業には「施工品質計画書」、製造業には「初期流動管理計画書」などがあります。これらについては、回を追って解説する予定です。
(2) 提供段階の管理
一般に、製造・サービスの提供段階では、作業標準書などの標準が整備されて決められた品質を維持する仕組みが作られています。業界によって名称はまちまちですが、品質工程図、コントロールプラン、施工手順書、加工図、引渡し検査規格などがあります。この中に以下の事項を定めておくとよいでしょう。
a) 企画段階で設定された対策を維持する。
b) 不具合が発生した場合の処置を取る体制を決めておき、対応する。
(3) 管理技術の活用
不具合を未然に防ぐ管理技術には以下のようなものがあります。これらを併用すればさらにレベルの高い品質マネジメントシステムを実現することができます。
FMEA(故障モード影響解析):Failure Modes and Effects Analysis
FTA(故障の木解析) :Fault Tree Analysis
ETA(事象の木解析):Event Tree Analysis
PPC(経験不具合確認): Pre-Product-Check
特にFMEAは先に述べた、「顧客への影響の大きさ」、「発生頻度」、「顧客へ渡す前に検出できる度合い」を加味して重要なものから対策を採るというものです。これらの管理技術の詳細な説明はここでは略しますが、PPCについては、是非とも品質マネジメントシステムに取り入れていただきたい技術ですので、回を追って説明する予定です。
▼ ISO9001のここを改造
ISO9001の8.5.2:是正処置には、「是正処置は発見された不適合のもつ影響に見合うものであること」が、また8.5.3:予防処置には、「予防処置は起こりうる不適合の持つ影響に見合うものであること」という条文があります。これらについては、ISO9004で「効率を考えて行うと良い」と付記されています。しかし、7.3項:設計・開発のところでは、重要管理の考え方は表現されていません。そこで、これらを加味してISO9001に、以下の事項を追加しておきます。
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7.3.1.2 重要特性の管理
組織は、要求事項のうち特に重要な特性を指定し(以下重要特性という)それらについて設計・開発の各段階に適したレビュー、検証及び妥当性確認を実施すること。
重要特性には以下を含むこと。
a) 不具合があると事故や他の器物を破損するなどの拡大被害をもたらす恐れのある特性
b) 顧客が指定した特性
7.5.1.1 重要特性の維持管理
組織は、重要特性を管理するための計画をもち、実施し維持すること。
計画には、以下の事項を含むこと。
a) 重要特性の不具合の発生を防止するための管理点
b) 重要特性で不具合が発生した場合の処置要領
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次回へ続く