2006年04月30日
相続税事例
4月お休みした事業承継で困った相続税事例を引き続き紹介します。
今回は、相続税支払のための原資が確保できずに納税が困難となる、あるいはなった事例です。
〈2)相続税原資が確保できずに納税が困難となる、あるいはなった事例
相続税額が多額にのぼっても、相続財産の中に納税できるだけの余裕資産(金融資産、売却可能な不動産など)が含まれていれば特に問超はない。しかし、現実には相続税の納税原資が確保できないケースがある。その場合、事業に不可欠な資産を売却したり、経営権の縮小を覚悟しながら自社株を売却、物納せざるをえない事態も起こってくる。納税原資が確保できない要因として、地価の上昇が急で、相続税額が急上昇し、その上昇に資産の蓄積が追いつかないケースが最も多いが、そのほかに
1)一次相続の納税で、納税原資がない。
2)事業が不振のため金融資産を事業に投入し、納税原資がない。
3)事業を発展させるために資金を事業に投入し、余裕資金の蓄積をしていない。等があげられる。こうした相続税の納税原資を確保できない事例を紹介する。
@ 一次相続の納税で、納税原資がない。
経営者の死亡にともなう相続税(1次相続)は納税できたものの、引き続いて経営者の配偶者が死亡した場合、相続税(2次相続)の納税原資をすでに一次相続で使い果たしていることがよくみられる。
(事例10.その他23区)
A氏(60歳代後半)は、貸ビル業を営む会社(業歴50年以上、従業者数数人)の2代目社長である。昭和初期に義父が製造業を始めたが、20年前、義父の死去に伴い工場を売却して、その代金で貸ビル業に転業した。近時、ビルの賃貸収入が芳しくないため、金融資産の蓄積が進まず、義母(80歳代後半)の相続税(25百万円)の納税原資は確保できているが、A社長夫妻の相続発生時には納税原資がない。したがって、その時には、ビル用地の一部物納、あるいは売却をせざるをえず、転廃業のおそれもある。
(事例11.その他23区)
A氏(50歳代)は、車のディーラーを営む会社(業歴20年以上、従業者数約20名)の創業社長である。A氏の現在の資産構成では金融資産も相応にあるようにみえるが、父の相続税を延納しており、実態は金融資産の余裕はない。もし、A氏の相続が発生すると、相続税納税(1、2次計270百万円)には別法人で利用中の不動産か自宅を売却するか、自宅を物納せざるをえない。そうすると、経営者としては、資産的余裕がなくなり、事業の見通しもよくないので、事業継続を断念することが考えられる。
中小企業基本問題研究会(略称:中基研)
合田、亀井
出所:「事業承継(相続税制)が中小企業経営に与える影響」(平成6年、東京都労働局)