2005年08月31日

第十一回 松尾由弘 「もっと役に立つ審査制度に改造しようではないか(その2)」

◆ ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論 ◆

第十一回 松尾由弘 「もっと役に立つ審査制度に改造しようではないか(その2)」

▼ 審査制度の当初の目的
部品や材料を購入するとき、購入者がまちまちに購買先を審査していては効率が悪い。第三者機関が代行して審査して認定することにして、購入者はそこから購入すればよいではないか。審査機関が設けられた背景にはこんな考えがありました。2000年改定が行われるまでの審査制度は、この目的に適っていました。

▼ 2000年改定により規格の目的が変わった
しかし、2000年改定により規格の目的は大きく変わりました。品質が保証されていれば、それでよいというのではなく、顧客の満足を高めていく仕組みが出来ていることが重要になりました。改定により規格の適用範囲が追加されて2つになったことは以前にも述べましたが、
ひとつは「要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力があることの実証」。もう一つは「継続的改善のプロセスを含むシステムを適用して顧客満足の向上を目指す場合」です。

▼ 審査制度を改定する必要はないのか
前者は「〜実証」ですから第三者機関が「審査」することには意義があります。証拠を集めて判断することも可能です。しかし、後者の「〜向上を目指す場合」は、「審査」で「合否」を決めるのは、いささか難しい気がします。向上を目指す姿は、画一的に合格、不合格に分けられるものではないと思うからです。

▼ 受審企業のISO9001にかける期待も変わった
ISO9001認証取得の目的は、おおむね以下のように変化しています。
制定当初・・・・・・・欧州に輸出するために、認証を取得しなければならない。
1994年版のころ・・・クレームを低減したい。不良を低減したい。
2000年改定以降・・・経営体制を整えたい。
私は、規格の改定、受審企業のニーズの変化、それらを考えると「審査制度」は「診断制度」に進化しなければならないと考えています。

▼ こうすれば審査制度はもっとよくなる
日本古来の柔道、剣道、書道、そろばん、あるいはスキーや英語のTOEICでもそうですが、検定試験というものがあり、級位、段位などが与えられる仕組みになっています。
人間ドックは、多数の測定項目がありますが、項目ごとに標準値の範囲が示されていて、自分の値がどの位置にあるかが分かるようになっています。 受験者・受診者は、この制度があるから上を目指して頑張ることができます。
いまどき高い審査料金をとって、ISO9001の審査は合否判定だけ。時代錯誤も甚だしいと言ったら言いすぎでしょうか。審査結果にはコメントが付けられますが、これもISO9001の規定事項の範囲の中での指摘であり、総合的な経営改善の観点からは、有効的とは言い難いものがあります。
ここで提案したいことは、合否判定だけの審査はやめて、級位、段位を与えるとか、人間ドックのように細目ごとに相対的な点数を与えるとか、「診断」の要素を取り入れた制度を設けて、受診企業が努力できる場を作ってはどうか、ということです。
ISO9001診断結果は合格、不合格ではなく、人間ドック風に、品質方針の管理は「A」、文書管理は「B」データの分析は「C」などと発表されれば、企業経営の改善に役立つものとなるでしょう。

▼ 認定制度の比較
ここで、いろいろな認定制度の利点、欠点を比較してみましょう。
ISO9001・・・・・・合否判定のみ、維持することだけが目標になってしまう
各種の資格制度・・・段位、級位などがあり、努力目標ができる
人間ドック・・・・・細目ごとにデータがとられてA〜Eのランクが示されるので、どこを改善すればよいか、よく分かる

▼ ISO9001は自己診断に使える 
「審査制度」が「診断制度」へ進化するためには、診断の公平性など、まだまだ検討すべき課題があります。
一方、規格の序文に「ISO9001は自社の能力を自分で評価するためにも使える」と述べられています。自己診断してISO9001に適合したことを「自己宣言」してはいかがでしょうか。
ちなみに、日本規格協会から「TR Q0005、TR Q0006、クォリティマネジメントシステム、持続可能な成長の指針/自己評価の指針」という規格が発行されています。少し難しい部分もありますが参考になると思います。
また、自己診断と内部監査と同じではないか、という人がいるかもしれませんが、私は「自己診断」と「内部監査」とは、まったく別のものとして考えています。
この改造論で述べた事項を含めて自己診断できるように、私が作ったチェックシートを第四部で紹介する予定です。

▼ 今回で「第一部ISO9001を斬る」を終了します。次回から第二部に入ります。次回以降は、
「第二部 品質保証の基本を極めよう」
「第三部 変化に対応できるシステムにしよう」
「第四部 もっとよく効く内部監査をやろう」
と続けてまいります。

ご意見、ご質問を賜ります。下記ホームページの「メール連絡」をご利用いただければ幸いに存じます。

松尾由弘 http://www15.ocn.ne.jp/~blecture/