第5回 山﨑登志雄
1.新商品・新サービスは企画から
- 新商品をものにする土壌づくり -
1-4.商品企画ループを回す
〔新商品開発の経営原則〕
新商品開発は企業にとって大変リスキーな、経営本体の死命をも制する事業です。したがってその遂行には、次の三大原則の遵守が不可欠です。原則の相互関連は、図表1-8のとおりです。

● まず、マーケティング先導の原則です。マーケットインの理念に基づく開発ですからこの原則は当然ともいえますが、激動の時代に経営機能の硬直、とりわけマーケティング活動が現状維持という『保守の金縛り』に合ってしまうと、新商品開発は成功しません。
マーケティングのフレキシビリティ(柔軟性)は、情報という潤滑剤により弾力性を増加させます。
● 次は、新商品開発中枢の原則です。企業のもつすべての経営資源、とりわけ技術力の総ては、新商品開発のために集結しなければなりません。
製造業や建設業に限らず企業には、新商品設計の開発技術力、商品化のための生産技術力、高度技術の商品には販売技術力、顧客のもとで商品効用を保てるサービス技術力といった、機能の異なる技術力が存在します。
ですから新商品開発には自社が発揮しうる、これら総ての技術力を結集させるというわけです。
● 企業のもつ経営資源のすべては、時代の変化に適合させていくのですが、新技術導入の原則については、とりわけ技術力をマーケットの変化に適合させなければならないということです。
新商品開発に総資源を投入するに当たって、技術水準が現状のままでは、投入効率が落ちるばかりか、劣悪な競争条件におかれるのですから、開発リスクも増大させます。
ただ中小企業ではどんなケースにおいても、これらの原則はわかっていながら、どうしても「仕方ない」現実があります。
この場合はむしろ、少ない人的資源をパワー分散させて「取るに足らない平均化を図る」よりも、一点集中型に徹するのが賢明といえます。いわゆる『重点主義経営』の思考です。が、三原則の部分強化の指向性や方法が何であれ、マーケットインの新商品開発が、経営資源強化に絶好の機会を与えることだけは確かです。
〔環境変化の適応サイクル〕
経営環境は、時々、刻々と変化します。経済社会の流れが変われば、世の中が必要とする製品やサービスも変わります。商品の供給者である企業は、常に商品をリフレッシュすることで、経営環境の変化に適合するのです。
商品企画は企業経営の意図を込め、製品の状態に好ましい変化を与える仕事です。『開発』、『改造』、『新用途』、『新サービスの付加』など、どんな商品企画であっても、次の5段階のステップが必要です。その概念は、図表1-9のとおりです。

「今日のマーケテットイン」思考は、古びてくると「明日のプロダクトアウト」思考に変ってきます。したがって、新商品企画のステップの繰り返しは、企業の生き残り要件です。その原理は、ビジネス界の常識でもあるマネジメントサイクルと同じです。
すなわちマネジメントでは、P(計画)からD(実行)へ、Dの後はC(確認)へと回り、さらにA(修正、行動)へと繰り返して、再び原点のPに帰るサイクルです。同様に新商品企画も、5段階ステップのサイクルを回すというわけです。
ただ商品企画の場合は、各ステップ相互の間に課題別に業務の時間的なずれが存在します。サイクルを回すときは、課題の時間的なスパン(幅)の違いを調整しなければなりません。各課題には、それぞれ図表1-10のような時間要素があるからです。
