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2008年03月 アーカイブ

2008年03月28日

成功する企業には新商品開発がある

第4回  山﨑登志雄


1.新商品・新サービスは企画から
- 新商品をものにする土壌づくり -


1-3.技術シーズ依存の開発態度

〔技術と技能の違い〕
 新商品開発は、ただ「新しい商品を送りだして」いけばよい、というものではありません。
 商品企画は、新商品を産み出す基礎の土壌づくりですから、この取り組み態度が最終的な成果を決めます。ですからこれまで『どのような考え方』で新商品を開発してきたか、改めてチェックする必要があろうかと思います。
 まず製造業の取組みは、既存の技術シーズだけを頼りにした新製品開発の態度が、多くみられることです。もちろん製造業として「わが社の強みたる技術自慢」がなくては困ります。むしろ技術は、製造業の一番大きな経営資源です。
 特に中小製造業にとっては「資本力なく」「販売力なく」「技術力だけを頼り」に生きている場合が多いのはよくわかります。
 しかし「わが社には技術がある」と自認し、安心している中小企業を診断すると、実は『技術ではなく技能だけ』であるケースが多いのです。中でも下請け中小企業では、技術ならざる技能にのみ頼り、生計を立てている実態に出くわします。
 広義には、技術も技能も一括して技術と呼ばれますが、両者には図表1-6のような違いがあると思います。

ym1-6.gif

 またサービス業が、サービスを創生しようとするときも、やはり既存の技術シーズが頼りになるわけです。新しく供給するサービスの内容が、装置や設備を必要とするか、提供者の個人的技量への依存度が大きいかといった違いがあっても、依存すべき技術と技能が前提となることに違いはないのです。
 ただ、提供者の技能だけが前提となる新商品開発は、下請け中小製造業と同じく、生み出しうるサービスの内容が限定的になってしまうでしょう。
 一方で技能には、ノウハウといわれる強みがありますが『技能だけ』では、新商品になる可能性は低いのです。反面で『技術だけ』の場合は、設計図を渡して技能者に作らせれば、新製品が開発できます。知恵を絞って考案したサービスは、腕のよい職人さんをスカウトして提供することもできるはずです。
 現に、機械設備や作業者といった『生産手段をもたず』、新製品開発だけで利益を上げる企画専業の企業もあります。この企業形態は、大きな資本を要する生産設備がもてない、ベンチャー・ビジネスのひとつの姿だともいえます。
 ただ、技術だけに依存したアイディア開発は、生産手段をもった企業が買ってくれるか、資本を投じて下請け企業に外注しなければ、新商品になりません。また、マーケティング力が伴わなければ、造っても売れません。
 したがって企業の新商品開発力は、開発技術と生産技能を合わせ、かつ販売力を付加した経営資源総合の水準で決まります。が、総合力であって、決して資本力でないところに『企業経営の妙味』があるというものです。

〔新商品開発での技術指向〕
 これまでの製造業は、経営の領域を決める原点で「わが社の技術で何ができるか」と考える傾向がありました。つまり新製品開発に取り組む態度が、プロダクトサイドの都合で決まります。
 例えば、ガラス加工の技術を誇る会社だと、それで何が作れるかと考えます。もちろん製品の色彩や形状の変更は、売れる新製品を生む大きな要因に違いありません。が、ガラスは新商品にとって『単なる加工対象』にすぎないのです。
 新しい色彩や形状を変える開発思考なら、むしろ新しいデザインを検討すべきです。いいデザインが開発できれば、ガラス以外の素材の方が、価値を高めるかもしれません。だのに生産者側は、加工の都合にこだわります。
 これが、いわゆるプロダクトアウトとよばれる思考の類型です。製造業の場合は「○○ガラス工業株式会社」と、社名からしてプロダクトアウトであるのが不思議です。これでは、考えをガラスから離せといっても無理かもしれません。
 一方、マーケティングアウトという言葉は、一般的には使われませんが、これに類する新商品開発態度があります。時間と資金は貴重な経営資源だのに、それを費やして開発した商品が、もしも売れなかったら一大事です。
 このため、新商品開発は初めから「自社ルートで売れるものは何か」を探そうとします。要するに、自社の得意分野なら安心できるのでしょうが、市場情勢をまったく気にせずに新商品を開発しようとする態度は、マーケティングアウトと呼べると思います。
 サービス業が、永年培った技能だけを頼りに、新しい商売をしようとするのも同じですが、このような新商品開発態度に関する思考の流れは、整理すると図表1-7のようになります。
 これからの企業に必要な新商品の開発態度は、マーケットインでなければなりません。この思考は、市場ニーズの探索から始まります。つまり新商品開発の態度は「市場でいま何が求められているか」「求められようとしているのか」を基盤におくわけです。
 もちろん従来の新商品開発においても、市場ニーズは探索されました。同様にマーケットインの思考でも、まず市場ニーズを探索します。が、ニーズがキャッチできれば、次に新しい技術シーズ(種子)の獲得、育成のプロセスを続けます。
 そうでなければ、プロダクトアウトのまえに、市場ニーズの探索プロセスを付け足したに過ぎず、またもや「ニーズにフィットしたガラス製品は何か」といった思考に陥ります。
 マーケットの動向に沿って、自分自身の得意技術の方をマーケット側にシフトさせ、つまり技術の『移転』、『適合』、『変革』を図るのです。新商品開発は、シフトされた新技術でやろうとする、マーケットイン思考に基づく態度です。図表1-7上段に示すような思考の流れになるのでしょう。

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 販売態度の方でも、市場ニーズに技術シーズを適合させようとしなければなりません。つまりプッシュセールスと違った、プルセールスが介在しなければならないのです。

以上、第5回につづく

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