2009年06月27日

成功する企業には新商品開発がある

                                         第19回  山﨑登志雄


5.アイデア評価は企画書で
- 新商品には優れた苗だけを -

5-2.アイデア評価のポイント

〔入・出力の大きさを見積もる〕
 アイデア評価は、企画書に基づいて行われます。企画書に書かれている商品と市場の5W2H情報は、投入と成果の対比を評価の基準にします。つまり、新商品の『開発投資や市場導入費の投入額』と、新商品開発によって『獲得可能な利益』の比較です。
 まず、投入のレベルです。開発投資額の大きさは、会社によって「投資し得る額」が自ずと決まります。が、はじめに「投入額は1千万円以内」といった、提案に対する評価基準があると、重大な機会損失を招く恐れがあります。本当に「儲かるアイデア」が提案されたのなら、「借金をしてでも実現させる」べきです。
 インプットとアウトプットの比率関係で、開発投資は過去の実績から比較的容易に割り出せます。したがってまず、開発成果の確からしさを点検しなければなりません。新商品開発の成果を利益におけば、【利益 = 販売数量×(単位売価 - 単位原価)】です。
 このうちまず、原価は過去の実績から比較的容易に想定できます。しかし新製品に「どれくらいの販売価格が設定できるか」となると、需給関係の中で競争条件の変化があるため、容易に推測できません。
 販売数量は、新商品の対象市場に存在する総需要と、自社商品の占有率で決まります。この占有率を上げるために新商品を開発するのですが、売価の設定はその占有率を左右するという、因果関係があります。が、客観的なデータベースなどを引用し、総需要の調査ができれば「販売数量の予測」は、売価設定ほど難しい問題ではありません。
 仮にこの見積もりが、いくら難しい問題であっても、具体的な計画を立てるときは、開発目標として設定しなければならないものです。ですからアイデア評価段階では、企画書に記載された大雑把な総売上高予想から、開発成果を推測するよりほかになくても、仕方ないでしょう。実行段階ではこの売上高予想が、販売目標にもなるのですから。
 ただ同じ売上高でも、どの時点をとって比較するかの問題が残ります。このため、複数の企画を比較評価する場合は、開発費を売上高によって「何年間で」取り戻せるかを判断し、相互の優劣を決めることがあります。回収のパターンは図表5-4の概念です。
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〔絶対評価と相対評価〕
 企画書に記入される情報は、荒削りの不完全なものにすぎません。ですから評価者の方でも最後は、図表1-11のように K、D、U つまり『勘』と『度胸』と『運』を頼って判断せざるを得ない要素が、多分に含まれています。
 投資成果を予測するのが難しい技術者やセールスマンへの『教育投資』や、広告宣伝費のような『販促投資』は「投資効率だけ」が問題です。つまり投資額の決定も含め、効果的な方法や手段、タイミングの選択が、投資効率を決めるというわけです。
 しかし開発投資の場合は「完全に失敗する危険性」があります。つまり教育や販促への投資は、効果に大小があってもゼロということはないのです。が、開発投資はONかOFFであって、効果がゼロのケースさえあります。このような開発投資の不確定要素は、完全にカバーできる最適な評価方法がありません。
 そこで実務的には、数ある企画の『代替案』の中から「より好ましいアイデアを選ぶ」比較評価法が使われます。アイデアは、多ければ多いほどよいとされるのも、選ぶ範囲が広がって安心できるためです。
 一般的に代替案の評価理論は、絶対評価の正当性がいわれます。が、提案アイデアを絶対評価すれば、たったひとつの提案も十分に審議できます。また多数のアイデアが、開発能力を越えてまでも、全部採用しなければならない事態も起こります。
 逆に会社の開発投資に余裕があっても、採用できるアイデアがない場合もあるわけです。絶対評価には、「次善の案」というものがないから、ここはやはり相対評価でいくべきです。
 しかし評価を受ける提案者は、「絶対評価を受けるつもり」でなければなりません。提案者側の意識が相対評価なら、誰しも自分のアイデアが可愛いから、採用案と非採用案との間では、『提案者同士の葛藤』が起こります。
 この葛藤は、競争社会で「今度こそは」とばかり有効にはたらく場合もあります。が、多くの場合は「社長の親戚だから」や「どうせ俺なんかは」といった妬みや僻みなど、好ましくない方へ向かいます。
 葛藤が起こる理由は、責任と権限において「評価を受ける者と評価する者」の意識が、混同されているからです。例えばベンチャービジネスなどで、ワンマン社長が評価者と非評価者を兼ねる場合は、厳しい絶対評価をしないと、『己の愚案』をもって大切な経営資源を消耗させてしまいます。第三者的な立場から、そんな事例も診たものです。

〔開発リスクと評価基準〕
 アイデア評価では、時間の要素を考えます。つまり図表5-4のように、開発投資と成果の間にタイムラグがあるため、両者の比較評価には時間差を配慮するのです。
 企業会計がワンイヤールールに則って、1ヵ年以内に決算しなければならないのですから、研究開発費は『繰延資産』にしないかぎり期中の損失です。が、多くのケースで開発成果のほうは、2年後とか3年後でないと利益に計上されません。
 さらに投資資金には、回収終了まで利息等の資本コストが追加されます。同時に、時間の経過とともに、『期間原価が増大』するばかりか『強力なライバルの発生』や『急激な市場環境の変化』など、リスクはますます増大するのです。
 ところがリスクの大きさというものは、容易に評価できるものではありません。が、図表5-5のように考えることによって、リスクが「時間との関数」で表せるであろうと思っています。
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 つまりリスクに関連した入出力比の評価基準において、開発期間という時間要素を絡めると、『短期決戦型』と『長期展望型』とでも言うべく、二つの評価態度が方向付けられます。図表5-6の区分ですが、新商品開発には「わが社の救世主」的に意気込むところがあって、かっこいい長期戦展望型の評価態度に走りがちです。
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 危険を冒せば冒すほど儲けも大きいというのは、シルクロードのキャラバン隊に通用しても、現代の新商品開発には通じません。ですから長期戦展望型の勇ましさが、必ずしも「上手いアイデア評価」というわけにいかないのです。
 この評価態度によって、現在の企業を支えているベースの製品や売れ筋商品が、経営資源の分散によって弱体化でもすれば、勇ましいどころか惨めです。
 しかし反面で、アイデア開発は「大いに夢を抱け」とハッパをかけてきました。ですから評価段階になって、夢を砕くような現実に戻ってしまうのはどうでしょう。
 二つの評価態度から「短期の防御」と「長期の攻撃」のごとく、開発テーマをミックスして選ぶのが理想です。が、開発資源が不足がちの中小企業が、能力を遥かに越えた開発テーマを抱え込んだのでは理想どころか、消化不良の現実に悩みます。
 結局ここでの判断は、平たくいえば「投入費用回収期間まで会社がもつか」ということです。それが会社の『リスク耐力』ですから、総合的な判断基準は会社を「永続的な発展」に如何に導くか。これに尽きるのではないでしょうか。

5-3.動機づけに活かす

〔評価票の作成目的〕
 アイデア評価は、記録に残せる『評価票の形式』で、ペーパーを用いて行います。が、企画書と評価票は、後世に残す意味が違います。
 評価の基本は企画書の内容を確認し、企画書相互の利益率を比べることです。が、テストの答案用紙に採点するように、企画書の中に評点を書き入れるのはいけません。評価票は特定のフォーマットを、別に準備すべきです。
 ただ企画書が、時期を失することなく「アバウトの情報」で十分だったのに対し、評価票は提案審査だけを目的にしていません。ある新商品アイデアは評価の結果、開発テーマになると、終了後の実を結ぶまでの期間が長期にわたります。
 その間、市場環境の変化を何度もチェックし、急激な市場動向があれば、開発テーマそのものを見直すくらいでなければなりません。要するに、開発テーマを評価し直さなければ開発が終わる頃、売れる新製品になっていないかもしれないのです。
 そこでチェックすべき項目は、テーマ終了までのすべてを想定して網羅しておくと、そのチェック・リストが開発過程の各ステップで使えます。図表5-7は、その評価項目をリストにしたものです。
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 このチェックリストが、図表5-1に提示した5W2Hよりも、やけに細かくなっているのは、欲張りすぎたのかもしれません。が、実務的にどこまでをチェックするか否かはともかく、これくらいの項目があるべきだということで網羅してみました。
 アイデア評価票は、このチェッリストをもとに作ります。もし評価ステップ毎に用紙を分けて作るなら、新商品評価と新技術評価が4ステップずつなので、8種類ができることになります。市場性評価と長・短所評価を分けるなら、全部で16種類にもなるため、自社で大切だと思える事項だけ、ケース・バイ・ケースで選んで利用してください。
 評価票に「項目」「ポイント」「方法」を全部記入すると、例えば開発見込みの難易度などをウエイト付けした「評点」の欄や、評価者の「コメント」欄が狭くなるでしょう。このため共通のチェックリストは全項目を網羅した一種類を作ります。そして項目以下の三欄は記号化し、用途別に8または16種類の白紙に近い評価票を作れば、A-4版一枚に納まり記録や保管が便利です。
 また、短期決戦型の目で評価すべき新商品イメージと、長期戦展望型の目で評価すべき新商品アイデアは、評定の日程を分けるといいでしょう。そうすれば、両者の重要性が区分されて評価できるのではないでしょうか。

〔評定の苦しみ〕
 評点は、評価票を前において企画書を見ながら、一件ずつチェックして付けます。が、実はこれがまた、大変な作業です。
 大きな組織では、部門ごとに一次評価をします。ある程度ふるいにかけた後に、選択されたアイデアだけを上層部にあげ、最終評価を求めることもできるでしょう。
 また評価者の側では、意志決定することも大変です。が、開発、生産、営業など、それぞれの思惑が違う各部門の関係者が集まって「小田原評定」に陥ってはなりません。
 中規模企業になると、評価票を『集め』『集計』し、結果を『再評価』するといった単純事務作業だけでも、大変な量になるでしょう。が、これを機械的に処理するだけでは、アイデアを「コンピュータ占い」か「人気投票」にかけているようなもので、当事者の意思が介在しなくなります。
 アイデア『開発』と『評価』の過程は、会社にとって「実務者を動機づける」絶好のチャンスです。中には「下手の横好き」もありますが、一般的には「好きこそものの上手なれ」が、ものごとの道理です。
 研究開発など「評価以後のプロセス」で、担当者が惚れ込んで提案する場合は、開発業務だけでなく会社の業務全体の効率が上がるものです。人間のやることは、何事も気が入ってやれば上手くいくことの証があるからです。
 開発者は自分で「やりたいテーマ」が、同時に「会社の目的に適い」、会社の「トップがそれを容認」する、三拍子揃った状態が、新商品開発で最も大きな成功要因になることに間違いはありません。まさに図表5-8に示すごとくです。
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 世間にあるピソードには「開発研究者がトップの反対を押し切り、夜中にこっそり実験を重ねて新商品開発を成功させた」結果「トップにアイデアの素晴らしさを認めさせた」というような話もあります。
 また『おらがアイデア』で『おらが開発した』んだから、「利益の半分はいただく」などとの主張が、マスコミを騒がせます。が、この開発活動に伴う最終的な「結果責任はトップが負う」のが、厳然たる企業の論理です。
 平たくいえば「会社の経営資源を活用」して「開発活動を展開」する結果、「大損をして」も「大儲けをして」も、後始末はアイデアの評価者たるトップが執るのです。「大損の補償」をアイデアの提案者に追及しません。
 ですからどうしても、提案者と評価者の「イメージが一致しない」新商品アイデアのときは、トップの意志を通すよりほかにありません。その場合は、まずトップ主導で実務者を説得して解決しなければなりません。これに対し実務者は納得という形で納めるべきです。
 このときトップは、開発や市場開拓に現場ではたらく実務者を、説得するだけの情報把握が必要です。トップの単純な好みや山勘で「損をするのは自分だから、命令に従え」と感情論で迫るのは説得ではなく、実務者の納得が得られるはずがありません。
 いくら「責任は自分でとる」といわれても、責任をとるのは経営者として当然のことです。そして部下が「感情論で強制された」と思うかぎり、結果的にその新商品が成功しても、後にしこりを残し生産にも販売にも支障をきたします。仮に失敗でもしようものなら、強制された方は「俺の人生どうしてくれる」と開き直ることになるでしょう。
 開発担当者には、職務を通じて社会人としての『自己実現を果たす権利』があります。このような上下関係のあり方が、産業民主主義というものです。その主権者の一人としては、評価時点の意見を別にして納得するかぎり、やはり「成功の美酒に酔いたい」ものです。特に今の若い人達は、この人間として当然の気持ちをはっきりと表します。
 時代はいつであっても、新商品開発や新市場開拓は、意志をもった人間がやる仕事だからです。むしろ、評価者たるトップも被評価者たるフォロワーも、自分の考えに対して葛藤が起きるくらいの『信念と誇り』をもって、けんけんがくがくの討論をすべきです。
 評価段階で、このようなプロセスを進行させることが、評価票を作るうえでの本当の意義なのでしょう。そしてアイデアの評価者も被評価者も、十分に納得があれば次のステップである研究開発へと進まなければなりません。

以上、第20回につづく

2009年05月27日

成功する企業には新商品開発がある

第18回  山﨑登志雄


4.中心課題アイデア開発
- 新商品の発芽は逞しく -

4-5.新商品イメージへの接続

〔猫でなければ〕
 「吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたか頓と見當がつかぬ。・・・」というのは、夏目漱石の処女作の出だし部分です。
 原文にあるように、発掘されたアイデアの名前は「まだなくて」もよいのです。が、はじめに「“猫”というイメージ」だけははっきりさせないと、プロローグ以後の筋が立ちません。同様に、商品イメージがはっきりしなければ、新商品開発が進まないのです。
 ただ小説のイメージキャラクターは、あくまでも”猫”です。犬であってもその他のペットであっても、たとえ主人公の迷亭先生や寒月君という登場人物の設定を同じにしても、この小説は『売れる新商品』になりません。
 引例は全くこじつけに過ぎませんが、創作という点では新製品企画も小説も変わらないでしょう。ですからこのこじつけは、図表4-17のようにKJ法的なまとめができるでしょう。また新製品イメージでなく、新サービスのアイデアを創出するのでも、このような方法で考え方をまとめていけるかもしれません。
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 さてブレーン・ストーミング(BS)のルールでは、その場で「結論を求めない」ともいわれますが、この留意事項は「アイデアを多くださせるための配慮」にすぎません。決して「思い付きの出しっ放し」でよいはずはないのです。
 あれこれ考え、議論し蓄積した意見を総合して「やっぱり“猫”でいこう」とばかり、イメージをはっきりさせていきます。その狙いは、BSメンバーに「おらがアイデアだ」という意識を植え付け、参加社員をこれから先の取り組みに動機付けるためです。

〔BSをまとめたイメージ〕
 まずBSをまとめるチャンスは、断片的な思い付きがあても、同じ意見が繰り返されるようになってきたときです。座長は多少の無理があっても、まとめの方向に誘導します。
まとめの留意事項は図表4-18に示します。
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 新サービスも新製品イメージも変わりませんが、重要なのは「猫なのか」「犬なのか」はっきりしなければ、このあと「どういうように考えていく」のか「何を作ればよい」のか、わらなくなります。
 たとえば商品フレームを「玩具に設定」している会社で、ただ「かわいい動物の縫いぐるみを開発しよう」といった商品イメージが出される場合です。これでは「縫いぐるみ」そのものが商品イメージになってしまい、“猫”であろうが“犬”であろうが「かわいい動物」でありさえすればいいことになります。
 ところがこの場合の「かわいい動物」は、単に製品条件にすぎません。商品イメージとして最終的にまとめるには、新商品に対する『条件付け』が必要になることもあるでしょう。それによって実際に開発するとき、“縫いぐるみの猫”をいかに「かわいらしくみせる」かが、デザイン課題となってきます。
 ここまで商品イメージがはっきりすれば、そこにまた新しいアイデアが生まれてくるというものです。しかし、製品条件を示されるだけの商品イメージが、先に出されたのでは「どんな縫いぐるみを作ればよいか」わからないわけです。それでは製品になりません。
 描いたイメージを商品像に結び付ける形態は、絵に画くか成文化です。上の例でいうならば、”猫の縫いぐるみ”を絵に示せばピタリです。また、縫いぐるみの「大きさはどれくらい」「材質は」「色彩は」というように、製品のもつ機能や仕様を成文化する方法なら、絵の下手な人にも示せます。
 このようなまとめは、後で評価する時点で「時期尚早」などと、仮に没になっても次の機会に日の目をみたり、別の機会に切り口を変えてみたり、新たに肉付けされることもあるわけです。
 ただ、商品フレームに外れたところで「素晴らしいと思える」脱線アイデアが出たときは、そのまま尻馬に乗って突っ走ってはなりません。必ず「商品フレームの見直し」に返って、フレーム自体を検討しなおすことです。
 だからといって、商品フレームを「玩具に設定」しているのに、フレームから全く外れた「こんな饅頭があったら売れるだろう」といった異端のアイデアは、まったく要らないわけではありません。出されたアイデアは、全部「企業の無形資産」です。
 会社のトップが、異分野の会合で聞いた話に「ピンと勘に響いて、このヒット商品が生まれた」といったようなエピソードは多くあります。したがって、他の商品フレームの分野でよいアイデアが続出するような場合は、原点に立ち返って「製品フレームの方を見直せ」というわけです。


5.アイデア評価は企画書で
- 新商品には優れた苗だけを -

パート5のポイント
[企画書]説得力のある企画書をつくる

 経営にとってリスキーな新商品開発では、アイデアを企画書に示し、トップの評価を受ける必要が当然あるわけです。と同時に、提案者側の遣り甲斐も、ここから始まりまるというべきでしょう。

新商品企画の真意を伝える
 企業経営にとっては大変リスキーな新商品開発は、アイデアをまとめてトップの承認を得てからでなければなりません。したがってまずここでは、トップにわかりやすく効果的に伝えられる企画書の作り方を示します。それとともに今度は、提示された企画書をもとにしたトップ側の、評価手法を紹介していきましょう。

5-1.新製品企画書のつくり方

〔企画書の役割〕
 描かれた新商品イメージは、新商品企画のプロセスを一歩進めて、企画書づくりのステップに移します。
 新商品開発は、「よし、何が何でもこれを開発しよう」という、トップの強い意志が大きな成功要因です。つまり「損をするのも設けるのも」すべての結果責任を負うトップが、新商品開発について「その気に」ならなければ、せっかく開発したアイデアが活かされないのは当然です。
 トップとて、人間であるからには好き嫌いもあるものです。アイデアに惚れ込むようでなければ、『その気』が興りません。そこで提案者は、アイデアに惚れ込ませるに十分な情報を『企画書の形式』で提供するのです。いわば企画書は、トップに対するアイデアのお見合用文書です。
 さらに文書になった企画書は、組織内の人々に発案者の『意図と内容』を知らせます。お見合いに差し出したアイデア姫の良さを、親戚縁者に知ってもらうのと同じです。ですからその内容は、企画書の「書式に設定」しておくと便利です。
 新商品開発は、企業経営の『命運を分ける大事業』ですから、開発が実行されたら初期の狙いと結果との差異を分析し、PDCAサイクルを回します。初期の企画書は、次の反省材料にするための資料でもあるわけです。これら企画書のもつ機能は、図表5-1にまとめます。
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〔企画書の要件とスタイル〕
 まず企画書のタイトルです。必ずしも名称は「新商品企画書」でなくて「開発計画案」「新商品提案書」「アイデア審議書」でも、気張らずに「新商品構想メモ」でもいいのです。要は「トップの承認」と「社内認識」を得る要件が備わっていればいいのですが、“書”というからには、記録、保存機能を備えた一定様式でなければなりません。
 企画書の要件は、常識的に5W2Hの形式で整理できるでしょう。図表5-2のとおりです。が、この表をご覧になると「ペテンにかかった」ように感じるかもしれません。
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 企画書の諸条件は常識的であっても「書き方は簡単」でないとの印象です。たしかに各項目は、新製品イメージを多面的に検証しなければ、埋めていくのが難しいことばかりでしょう。それを承知で、ここまで述べてきました。
 新商品イメージは、頭の中で描いた仮想の商品です。これを実際に『売れる新商品』に仕上げる前に、これら企画書の中に示す項目だけは、調べて検証しておかねばなりません。でないと、企画書づくりの目的が果たせず、「アイデアは開発した」が「新商品は企画できない」ことになります。このことは、新商品企画がアイデア開発と同じではない証拠です。
 企画書を巡ってトップ・サイドは、リスキーな新製品開発の「意志決定をする」のですから慎重です。が、提案サイドは企画書づくりに苦労しすぎると、それが故に評価段階で不採用になりそうだと、感情的にも容易に引けなくなるかもしれません。
 このような提案者と評価者の立場の違いから、第一次のアイデア評価を受けるために「どうしてもこれらの各項目」が、ざっと埋まっているだけの新商品企画書を考えます。それが図表5-3です。
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 この例示は、書式に図表5-2の5W2Hの要件をまとめただけです。たった一頁の企画書で物足りなければ、提案理由ともいうべき「書いた背景」の情報は、詳細な別紙にまとめて添付します。これはいわば、提案テクニックとでもいうところのコツです。が、企画書自体は一枚程度にまとめたほうが、訴求力が増すというものです。

〔企画書づくりのコツ〕
 アイデアの実現性という緊張感からか、企画書づくりは難しく考えがちです。が、企画書づくりのコツは「完璧な企画書を作ろう」と気張らないことです。完璧な企画書が、アイデアの実現を保証するはずがありません。
 いい企画書は、新商品イメージが、的確に表現されていることです。決して新製品の、実現性を表現する書面ではないのです。むしろ実現性を強調したいばかりに、誇張した情報を盛り込まれるのは困ります。
 書き方のコツは、まず「アイデアの強調項目」のアピールです。そのアイデアの目玉が、狙いとする『性能や機能』にあるのか、『市場規模』が大きいのか、『開発費』が安上がりになりそうか、『短期開発』が可能なのか、といった強調点です。
 次は、狙いや経済性の項目を「およそ、この程度」という概算であっても、必ず埋めることです。企画書をつくるため、随所で必要になってくる『予測はアバウト』で記入するわけです。
 その理由は、これからの新商品開発プロセスにおいて、何度も再確認を繰り返してアイデアの確実性を検証しなければならないからです。
 会社は激動する市場環境の変化に適応する新製品を、効率的かつ適時に開発したいでしょう。もちろん開発リスクは軽減したいところですが、リスク回避は、「どこまでやれば大丈夫か」完璧なレベルがわかりません。にもかかわらず、そのときに得られる情報は確度とタイミングとの兼合いで価値が変わってきます。
 情報の確度を上げるために「金と時間をかける」か、とりあえず情報収集の「迅速性を優先」するかです。ケースによって、この兼合い具合は変わるでしょう。が、タイミングを外すと新製品開発が成功し辛くなるものです。
 ですからアイデア提案に用いる企画書では、リスクを意識しつつも「拙速を尊ぶ」精神が優先されるべきであろうというのです。
 情報が完全に集まるまでは、アイデアをトップに提案し、評価が貰えないのでは、次の段階に進めません。企画書づくりに時間を要していては、好機を逸するおそれがあります。
 またどんな会社でも、数あるアイデアを全部採用できないはずですから、全ての提案に詳しいデータを揃えていると、かなりの部分の「調査費がムダ」になるはずです。
 企画書づくりの段階は、迅速性を優先した情報収集をもとに、大胆な予測をするわけです。が、まったく根拠のない予測と、大胆さとは違います。拙速のうちにも集めた情報に、勘(K)、度胸(D)、運(U)を大いにはたらかせようとするわけです。

以上、第19回につづく

2009年04月28日

成功する企業には新商品開発がある

第17回  山﨑登志雄


4.中心課題アイデア開発
- 新商品の発芽は逞しく -

4-3.発想技法とアイデア開発

〔技法上の共通原理〕
 アイデアを発掘するための、いわゆる発想技法は30種類以上もあるといわれます。ちなみに、よく知られる着想や発想の技法は、図表4-11のようなものです。
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 このように一覧表にして並べてみると、多くの技法や手法には、何となく共通点があることに気付きます。それは発想という人間の思考に関し、多分に心理学的な要素が加味されているからでしょう。その要素は、いわば発想の原理として、図表4-12のようにまとめられるのではないでしょうか。
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 発想は、沈着冷静に考えることも大切ですが、人々の思考を大いに振動させ、沸騰させた方がいいこともあるようです。つまり個人のヒラメキも大切ですが、各人のアイデアを掻き交ぜて反応させ、新しい物質を発現させようとする、いわば化学実験のような原理ではないかということです。
 こんなたわ言を発想の原理というのは、屁理屈かもしれません。が、「誰かの考え方や何らかのツールが、自分の思考にヒントを与えた」ことや「記録しなかったばかりに、インスピレーションを逃した」ことなど、どなたも経験しているのではないでしょうか。
 また、せっかく考えたことは、何らかの形で仕事に活かしたいと思うのも、ビジネスマンの心情です。ですから発想技法の理解には、それなりの意義があるわけです。
 それにしても人間が発想する過程は、あたかも彫刻を仕上げていく作業のように思いませんか。つまり製品フレーム(骨格)を立て、情報という粘土(アイデアの材料)を練って、アイデア(新商品イメージ)を自由にくっつけていくわけです。
 すると新商品イメージは、時間の経過とともに徐々に固まってくるというプロセスです。まさにアイデア開発は、図表4-13のような陶芸と同じ創造的な作業に違いありません。
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〔ブレーンストーミングの進め方のコツ〕
 発想技法がこんなに多くあるのは、こうすれば必ず「グッド・アイデアが生まれる」といった決め手がないからでしょう。しかしビジネス上の効率面からいえば、ただガムシャラに考えるよりも、やはり先人の考えた技法なり手法を用いて発想するほうが得策です。
 ただ難しい技法を駆使すれば、グッド・アイデアが保証されるわけではありません。したがってアイデア開発にあたっては、できるだけみんなに知られた、たとえばブレーンストーミング(BS)のような手法を選ぶのが賢明です。この進め方は図表4-14のような、ある種のコツがあるように思えます。
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 集中度をあげるためには、あらかじめ討論のテーマを明確にしておきます。できるだけ、関連情報のまとめを添えて、それを事前に提示しておくわけです。
 参加者の情報レベルは、プレBSのような形式で、事前に合わせることも必要になるでしょう。が、これには論理的な反論があるかもしれません。
 平素の情報交換はもちろん大切です。が「とにかくやって」みて、だめなら勉強して出直すのでは、BSという技法自体に失望を感じます。こうなると、やり直しの勉強会をやるとしても、それ自体がしらけます。
 技法の名称どおり「頭の中に嵐を起こす」ことは、決して「頭の中が空っぽ」であることを要求しているのではないはずです。既成概念を「嵐で吹き飛ばさない」ことには、新しいアイデアが盛り込めないからこう表現されるだけです。
 しかし吹き飛ばすべく概念さえなくては、嵐を呼ぶ必要もないでしょう。また、参加者にレベル格差があるまま、たとえば上長など特定の嵐に掻き回されたら、瓦礫の山ができこそすれ、新しいアイデアの構築など望めません。ですから実務的な経験上、プレBSの意義を認めるというわけです。

〔発案ローテーション〕
 発案は、数の多いほうがよいといわれます。が、BSの時間が経過すると発案件数は、はじめ多く、時間経過とともに急激に減少してきます。ですから発想は短時間に集中して行い、一休みして次の機会を待ったほうがいいのです。この一休みは、発想密度をあげる効果があります。
 7~8名以下でBSを行うのであれば、討論は40分~1時間までとし、2~3日後に再度2時間以内の議論を繰り返します。メンバー数は多すぎると、前段の情報レベル合わせも難しく、発言者に偏りがでてきます。逆に、少なすぎると議論が沸きにくく、空白の時間ができてきます。
 ひと休みの空き時間が長すぎると、集中度が落ちます。が、アイデア開発のプロセスでは、商品イメージが固まってきだすと、逆に、1週間ばかり休む方がイメージの内容を確認する時間がとれます。つまり先の引例でいえば、固まりかけた彫刻の粘土が本当に乾くには、そこから先の時間がかかるというわけです。
 連想の度合いをあげるために、発言者の意見は大きな紙に書いて面前に提示します。ただ現在では、電子黒板という便利な文明の利器もありますし、パソコンに整理してプロジェクターで皆が見られるようになりました。電子黒板を開発した沖電気工業の方々は、BSをやりながらこの着想を生んだのでしょうか。
 それはともかく第2回目のBSは、第1回目の記録も並べて提示し、第1回目と同じメンバーで繰り返します。またある程度、具体的な商品イメージが描けるまでは、交替要員でなく同一メンバーでやることです。


4-4.アイデア誕生の阻害要因

〔制約条件を与えない〕
 自由奔放に思考することは発想の原則ですが、事前に思考に対する制約条件を与えると、この原則が基本から破れます。たとえば、わが社には「技術がないのだから」「設備がない状態で」または「その市場を知らないのに」といった、現状への悲観論が発想への大きな制約条件になります。
 このように後ろ向きな、考えを念押しされると「そんな発案はできっこない」から「考えても無駄だ」と後で言われるだろうと、発案者に覚られます。発想する前に、こんなプロダクトアウト思考を条件付けるようでは、現状をブレークスルーする新しいアイデアなど、生まれるはずがありません。
 ところが多くのケースでは「わが社の現状の中で考える」ことが、より「現実的な発想」だと勘違いするのです。
 アイデア開発は「無から有を創造しよう」とするのです。ですから発想自体は、本来が非現実的な行為です。現実と離れるために『異分野の人』が加わって、『頭の中に嵐』を起こします。
 ですから制約条件は、「大いに夢を描け」といっておきながら、描くべき思考のキャンパスを狭めます。あたかも、図表4-15のごとくです。
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 トップが制約条件を付けたがる理由は、アイデア開発とアイデア評価を混同するからです。さらに過去の体験から、その混同が発想者側に意識されます。「前にこんなことを提案したとき、にべもなく断られた」ならまだいい方で「何とつまらない提案をするものだ」と叱られたとなると、現実的なアイデアどころではなく、アイデアそのものが生まれません。

〔結果責任はトップにあり〕
 アイデア開発とアイデア評価は、厳然と区別します。評価するのは組織のトップです。が、評価者側は発案者に「結果責任を押し付け」ようとする例をみます。
 たとえば「君が考えたことだから仕方なく採用する」が、「やってみた後の責任はあくまでも君がとる」つもりで「仕事に励んでくれ」といった調子です。ところが、評価者つまりトップのこのような態度は、発案者へ無用のプレッシャーをかけることになっても、決して励ましにはなりません。
 一体に結果責任というものは、発案者には取れないのです。業務の遂行責任は、業務遂行を託された開発、製造、販売、サービスの現業者にあります。
 しかし発掘されたアイデアの発案者と、業務遂行者は全く別の立場です。評価を受けた後のアイデアは、既に「発案者個人のもの」ではないからです。つまり特許権の帰属などと同じで、発想段階のアイデアは個人のものであったとしても、アイデアは「評価後に会社のもの」ひいては評価者たるトップのものになるのです。
 また発想者の側からみても、開発や仕入れ・生産・販売業務など、一部のプロセスを執行する業務遂行者にすぎません。しかしアイデアの実行は、これらすべての業務を総合して結果がでるのです。
 ときに『特許権益の争い』で、発明者が「何十億円の利益請求を主張した」などとマスコミを騒がせます。が、いくら優れた発明であっても、経営の『勇気ある意思決定』と『最適な生産設備』の確保、さらに多くの『生産・販売担当者の努力』があってこそ、「何十億円もの利益」があがるのです。その考案だけで、利益が生まれるはずはないのです。
 ですから、評価されたアイデアに基づく開発遂行の結果責任は、すべての業務を統括するトップに帰属するのは当然です。
 もっと平たく言えば、新商品開発の「成功によって儲かる」のも「失敗で損をする」のも、結果のすべてがトップに跳ね返ってくるということです。あたかも図表4-16のような循環です。
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 トップからすれば「誰でもいい」から、全く「無責任な発言でもいい」から、多くの意見を出させることです。一見無責任に思えるアイデアの中には、十分評価し得る本人さえも『自覚し得ないほどの名案』があるかもしれません。
 企業の発展につながる可能性が大きく、素晴らしいと評価できるアイデアが発掘できれば、その商品化に万全の努力を払うのが企業経営というものです。アイデア実現のためには「新しい技術を習得」させ、借金をしても「最適な新設備を導入」し、必要ならば「新しいマーケティングルート」を開拓するのが『トップの役目』というものです。
 提案者側が、発想前の制約条件や結果責任逃れのために、アイデアが出せない状況があるとすればトップにとって、また会社にとって大きな機会損失を招く要因になることを知らねばなりません。

                                        以上、第18回につづく

2009年03月27日

成功する企業には新商品開発がある

第16回  山﨑登志雄


4.中心課題アイデア開発
- 新商品の発芽は逞しく -

4-2.商品アイデアにかかわる情報とは

〔アイデアの深さ〕
 いわゆるアイデアには、図表4-6のような三つの類別があるでしょう。アイデアは人間の思考ですが、ヒラメキまたは思い付きと混同してはなりません。
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 思い付きは、設定したフレームや収集情報にかかわりなく、裏付けのない考えがポンポンと飛びだすものです。しかし思い付きの多い人は、世間からアイデアマンだと勘違いされます。一般的に、思い付きマンという呼称がないためか、勘違いされた本人もアイデアマンの称号を喜んで受けるふしがあります。
 ヒラメキは、たしかにアイデアの芽に違いないのです。それは、フレーム内で集めた豊富な情報を根拠に、考えに考え抜き、悩みに悩み抜いた揚げ句でないと、パッと閃かないからです。思い付きも、一種のヒラメキかもしれませんが、そのレベルが違います。したがって、ヒラメキマンという、ひやかしの呼称もないのでしょう。
 アイデアは、ヒラメキを核にして更に思考を発展させます。これは、商品化が実現可能なレベルまで高められた考案です。
 思い付きがヒラメキに発展していくには、図表4-7に示すように、大変なブレークスルーがなければならないのです。あらゆる情報をもとに、頭の中にこびりついた思い付きの「殻を突き破る」深い思考が必要です。
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 しかし必ずしも、思い付きとヒラメキの間に関連性はないでしょう。が、アイデアはヒラメキの発展形態であるはずです。部分的なヒラメキが、総合的で具体的な思考にまで高められます。
 ですからヒラメキだけでは、よくわからない思考であっても、アイデアになると客観的な認識を可能とします。多くの人々が、一つの開発にかかわる現代の新商品開発では、客観的な思考でなければ工業化することができません。
 アイデアと呼ばれる思考を商品にするためには、製品像やサービスの方法まで、具体的に浮かび上がらせておかなければなりません。サービスは容易に具体的な姿に描けないかもしれませんが、製品像は客観的に認識できるものです。ですから新商品開発段階で、具体的な製品像が、実験や試験を多くの社員が分業できるようになるわけです。
 中小企業の親父さんが一人で開発する場合でも、製品像は具体的にしておかなければなりません。単なる思い付きであっても、それがベースになってより高度な思考に発展する可能性は十分にあります。
 人間の思考には連鎖性があるのですが、思考の核や種になる思い付きほど消えやすいものです。メモを怠って種が消えると、次のアイデアに連鎖せず、「逃がした魚」を口惜しく思うことでしょう。

〔思い込みの危険性〕
 思考レベルの低い『思いつき』は、『思い込み』になりやすいのです。思い込みが製品像だと勘違いされると、ビジネス活動ではむしろ「危険な思考」に変わります。
 特にトップ層の思いつきは、自分の思考が「可愛い」が故に要注意です。トップ層は日常活動に追われているため、グローバル(広範囲)な情報をもっていない場合が多いのです。だのに幸先のよい「結果を急ぐ」ため、何の根拠もないところへ「のめり込んでしまう」危険性があるのです。
 思い付きからブレークスルーするには、多くのエピソードが生まれます。アルキメデスが「入浴中に身体が軽くなって浮力を発見」したり、ニユートンが「リンゴが落ちるのをみて万有引力を発見」したりの類いです。
 アルキメデスは、このヒラメキから「王冠の中に交ざった安物の金属」を「比重の違いから見付ける」アイデアに発展させます。思い込みだけでは、お客様である王様のニーズに応えられません。浮力を知ることは、それ自体で立派な大発見ですから、2300年以上たった今でもアルキメデスの原理として残ります。
 しかし現代風にいうと、自然現象の発見だけでは特許権になりません。が、この原理から、図表4-8のようなフロート式比重計に転じれば、特許などの工業所有権になるでしょう。
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 つまり、思い付きがビジネスにつながるアイデアにまで昇華し、新商品へと転じる機会を得るのです。

〔ユーザーニーズとアイデア開発〕
 ビジネス上のアイデア開発は、たまたま「耳寄りな話を聞いた」といった偶然性を待つだけではだめです。アイデアは必要なとき、意図的に生みださなければ、会社の仕事としてのアイデア開発になりません。
 もちろんアイデア開発には、根拠となる情報が必要です。だから日夜、血眼になって情報を収集するのですが、日常的な情報とアイデアがストレートに結び付くケースは、無くもないでしょうが希でしょう。
 仮に、耳寄り情報がストレートに結び付きそうでも、その間に人間の思考過程が入らなければ、意図的に開発したアイデアとはいえません。ですから会社のアイデア開発は図表4-9のような運びでやります。
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 新商品は「消費者やユーザーのニーズを基にしなければ」売れないといいます。が、市場で顕在化したニーズは、誰でもキャッチできます。そんな普遍化した情報を根拠に「こんなものならば売れるだろう」と、新商品イメージを描くのは容易なことです。が、そんな新商品アイデアが、他社と差別化された売れる商品になるはずはないでしょう。
 誰にも気付かれないニーズを懸命に求めるのは、隙間市場を探しているのと同じです。そんな暇があったら、むしろ「こんな商品ならばニーズにフイット(適合)するのではなかろうか」とばかり、企業側が新商品イメージをつくっていかなければなりません。それが、意図的なアイデア開発というものです。
 手順としては、そのアイデアを基に、ニーズにフィットするかどうかの裏付け情報を探します。その情報こそ、商品イメージに必要な供給要件、つまり新商品に盛り込まなければならない製品機能やサービス要件です。

〔提案型のアイデア開発〕
 ニーズが市場に顕在化しているにもかかわらず、いまだ満たされてないとします。するとその理由は明らかで、企業側の技術水準が、供給要件を満たすだけの技術レベルに達していないのです。
 ニーズを満たす技術がなければ、商品化できないのは道理です。が、実際は「できもしない新商品を求める」感覚、それがニーズだとは言わないのではないですか。
 また逆に、現在の技術で十分に満たし得るはずのニーズ(要求)が、ウオンツ(欲求)の形式で潜在化していたとします。するとウォンツは、企業側も「同じ人間として想定できる」のですから、この場合は新商品企画に大いなるヒントを与えます。
 そのアプローチは先ず、思考の対象分野で顕在化しているニーズの周辺に、別の「ウォンツがある」であろうと推測します。推測の確からしさは情報収集で検証し、それを基に新商品イメージを描きます。次に、元のウォンツは、会社が一方的に推測したのですから、実際の製品やサービスに具現化して、消費者やユーザーに認識していただかなくてはなりません。図表4-10に事例を示します。
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 このような手順がとれる理由は、消費者やユーザーが自分自身のウォンツを満たすアイデアなり、生産手段をもっていないことです。生産手段は供給側である会社がもっています。
 ですから会社がアイデアを開発し、具体的な新製品や新サービスの形にして消費者やユーザーに提案するのです。新商品を知れば、消費者やユーザーはウォンツをニーズに変えて「あれが欲しい」となるわけです。
 ただ、提案型のアイデア開発といっても、新商品イメージだけで市場に示せば、ライバルに気付かれます。新商品アイデアは最高の企業秘密ですから、現物なりシステムにしてから市場に披露します。
 しかし実物にした新商品が、ウォンツにフィットするとは限りません。この当たり外れが、いわゆる『開発リスク』というものです。
 いわばウォンツの推測が、リスクの程度を決めるわけですから、提案型のアイデアを開発する場合は、リスク軽減のための情報収集が不可欠です。

以上、第17回につづく

成功する企業には新商品開発がある

第15回  山﨑登志雄


4.中心課題アイデア開発
- 新商品の発芽は逞しく -

パート4のポイント
[着 想]企画力を強める方法はこんなにある

 素のアイデアが、ちょっとした思い付き程度では、そのまま新商品になりません。アイデアという『人々の思考』を実際の商品にするには、それなりの手法があるものです。ここではその手法について考えます。
 商品に関する『思いつき』や『ひらめき』などのいろいろな思考は、新商品として具体化できるアイデアのレベルまで高めなければなりません。さらにその思考は、会社のみんなが工業製品やサービスに形づくるため、関係者の誰もが認識できるようにしなければなりません。
 それが『新商品企画』です。つまり新商品企画には、アイデアの出しやすい環境づくりから、発想技法の活用や企画書への具体化があるわけで、そのためのコツやノウハウがいろいろあるというわけです。

4-1.新商品イメージを描く

〔商品イメージが必要なわけ〕
 これまでに、設定された商品フレームの中で豊富に収集された情報をバックに「あのマーケットにこんな商品はどうだろう」というように、新商品のイメージを描いていきます。あたかもコンピュータの世界の『バーチャル・リアリティー』のような形式で、新商品イメージが描かれます。
 描かれ方はグラフィック・デザインなどで『実物と同じように』描かれるのと同じことでしょう。が、まだこの段階では『モックアップ模型』のようなところまで、具体的に形づくっていかなくても、漠然としたイメージだけで十分です。
 新商品企画の第3ステップはこのように、商品イメージの形式で新商品アイデアを開発していきます。なにごとにおいても、創造は人間だけがなしうる不思議な行為です。が、新商品開発に関心を集中し、意識的にマーケット事象を見ている過程で、図表4-1のように涌いてきませんか。
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 まさに、何となく「こんなものがあれば」便利ではないかとか、商売として「これはイケるぞ」といったイメージが描けてくるわけです。
 しかし「涌いたり」「何となく感じたり」では、新商品アイデアはいつ生まれるかわかりません。これでは会社の計画的な行動になりません。
 ですからアイデア開発は、いろいろな調査をして蒔いた新商品の種を、うまく発芽させる作業として、意識的に会社の業務としてやらねばなりません。
 そこで、あるポスターを画くことに例えて、アイデア開発を考えてみると、図表4-2のようになるでしょう。 %E5%9B%B3%E8%A1%A84-2.gif
このような過程を経て、印刷されたポスターは裁断や包装され、販売できるような商品に仕上げていきます。これが新商品開発に必須な各ステップですが、その素となる最初の新商品構想がなければ、ポスターは完成する保証がないのです。

〔フレームの洗礼〕
 情報は、人間活動すべての潤滑油ですから前に述べたように、商品フレームを設定するためにも事前の情報が必要です。自社のもつ技術を棚卸しすることや、自社が所属する業界やその周辺の実態を把握することは、フレーム設定のための情報収集です。この場合は、社内データのチェックや再分析などが、情報源となるわけです。
 そして、大枠の事業領域として決定された新商品フレームは、その有用性、正当性、有利性、安全性、発展性、有望性などが、情報の洗礼を受ける順序です。先に設定したフレームは、いわば製品コンセプトの仮説ですから、常にフレームを外部情報と照合します。調査とは「仮説の検証である」といわれるとおりだからです。
 一方では、トップの承認まで得て設定された商品フレームを「なぜ見直すのか」との、疑問があるかもしれません。が、調査・情報収集には金と時間がかかります。ですから、仮に設定したフレームをトップの承認と開発ステップに駒を進める業務命令を得ることだと解釈すべきです。
 一度踏みだした決定は、第11回掲載の図表3-1のように、時間の経過とともに軌道修正が難くなるものです。ですから仮説のうちに、慎重な検証をするのです。また、ワンマンのトップが決めたフレームは誤りがあったとしても、内部告発ではあるまいし、企業内の誰もそれを指摘できません。が、首を覚悟でワンマンを諌めなくても、客観的データを揃えて『検証された論理的思考』の形式で、新商品フレームを提示します。そうすればきっと、賢明なワンマンにはわかってもらえます。

〔領域の中での商品イメージ〕
 新商品アイデアの開発では多くの場合、既存製品にどのような『新要素を加え』または『要素を変更する』ことによって『価値を付加するか』を考えます。したがってこの場合、新商品イメージを描くことは『加える要素』を考案することです。
 しかしいざ、新商品イメージを描こうと改まれば、とかく「売れさえすればいいから、何かよいアイデアはないか」式の、暗中摸索状態に陥ります。アイデア開発に携わった人は、誰にも経験があるでしょうが、常にこの種の試行錯誤を繰り返す、模索過程があるものです。
 したがって新商品イメージを描くときは、描くべき『目的別、動機別の領域』を図表4-3のようにはっきりします。
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 例えば、既存商品にクレームが発生したときの対応です。こときは、商品の改善、改良のアイデアが、対応策として必要でしょう。この対策を練る手続きは、『クレーム内容の確認』『原因究明、分析』などの情報収集が、前段にあります。
 内容と原因によって「とりあえず応急処置をとる」か「原因部分のみに手を加える」か、または「これを機会に全面的モデルチェンジを図るか」といった具合に、目的に沿った対策が選ばれます。
 そこで『案を練る範囲』を速やかに決定します。領域が決まれば目標が絞れ、とりあえずその範囲内でアイデア開発に取りかかれます。同様に、アイデア開発の動機から領域の方が決まることがあります。クレーム発生などの外的要因が、全面モデルチェンジのトリガー(引き金)になるような事例です。
 また、イメージを描く領域によっては、アイデア開発の態度がかなり違ってきます。つまり、用途開発などソフトなアイデアか、ハードの改造に及ぶアイデアか、必要とする領域が違えば、アイデア開発の取り組みが違ってくるわけです。

〔商品機能が着眼点〕
 次は、前段で設定した製品フレームと、新商品イメージの関連を考えます。例えば、自社で初めて手掛ける、新商品のイメージを描く場合はどうでしょう。
 いくら「自社に前例のない製品を開発する」と意気込んでも、いきなり『車輪のない自動車』『羽根もプロペラもない飛行機』的な商品イメージに飛躍したのでは、その開発にチャレンジするわけにいきません。
 もちろんこの種の突拍子もない考えは、科学技術者の夢として将来的に実現しないとも限らないので、それなりに社会的な意味があるでしょう。
 ですが、ホバークラフトが『車輪のない自動車』あるいは、ロケットが『羽根もプロペラもない飛行機』のイメージから発展していった新製品ではないはずです。これらは、製品に求めた特定の機能を実現するために、開発を進めた結果このような形になっただけでしょう。
 商品イメージを描いたときは、自動車や飛行機と同一のフレームの中に入っていたはずです。そして『地上をスムーズに走る』『空を速く飛ぶ』という製品機能の追及から、スムーズなり速くの達成手段が、ホバークラフトなりロケットの形体になったのです。
 商品イメージの形成過程では、車輪や翼やプロペラという機能の達成手段が製品条件になります。が、製品条件から開発することはできません。その関係は、図表4-4に示すとおりです。
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ただ、世の中にない新商品をイメージしようと意識すると、ぜひとも「奇抜なアイデアをださなければ」と気張ります。たしかにこのときは、手段つまり製品条件からアプローチした方が、奇抜なアイデアに映ります。
 もちろん、トランジスタをICに変えて超小型化が図れたように、手段を変えて機能が向上したかにみえる新商品の事例はいっぱいあります。しかしこれらは、超小型という製品機能の達成手段に、技術の向上によって生まれたICを活用しただけです。
 言い過ぎのようですが製品機能の向上は、新商品開発の結果です。小型、低消費電力、高効率といった機能を無視し、ICという手段の活用が、初期アイデアにはなりません。なぜならば、商品イメージを描くアイデア開発の時点で、社会の科学的、技術的な水準は、そのイメージを新商品に具体化するまでのレベルに達してないからです。
 つまり「車輪や羽根やプロペラがない」といった製品条件は、社会文明の進展を待たないと達成できません。裏付けとなる科学技術的な実現手段が発見され、発展されてこそ製品条件が満たされます。その結果、ホバークラフトやロケットという新商品が、実現したに違いないのです。

〔商品フレームと新商品イメージ〕
 飛躍した商品イメージは、むしろ夢、空想、憧れの類いです。企業経営のアイデア開発としては、天才的科学者ならぬ普通のビジネスマンのために、初めに製品フレームを設定しているのです。だからといって、製品フレームが手枷足枷になって何の発想も涌かない、ものではありません。
 製品フレームの枠が狭くても、発想の制約条件にはならない事例をあげましょう。ある企業では「わが社は先祖代々の家業である豆腐屋を今後も続ける」といったように、一見、大変狭い範囲のフレーム設定をしたとします。しかし、豆腐の新商品は「油揚げ、がんもどきのアレンジ」だけにとどまりません。
 現に豆腐という商品は、味覚機能からみれば、大豆以外の素材が混合されて広範囲に展開します。また従来の豆腐は、大きく作って四角に切り分ける生産プロセスですが、これを丸い容器の中で一個ずつ作るものと考えます。すると、同じ絹ごし豆腐に新しいデザイン機能が加わるのです。何年か前に、豆乳という『飲む豆腐』が大ブームになったことでも、この栄養機能がわかります。
 この事例で材料や容器、および『飲む』という摂取形態は、機能を達成する手段です。このように、製品機能を明確にしてその達成手段を変えることは、十分に新商品を生む機会になるわけです。
 しかし、はじめの新商品イメージは、手段や形態から描くものではありません。拡販やコストダウンを目的に、製品機能から商品イメージを描きます。豆腐の事例は、製品機能に着目し、その切り口を変えてみたのです。図表4-5のような展開です。
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このように製品フレームが豆腐から発しても、やがて豆腐からは似ても似つかぬ製品が生まれるかもしれません。それでも、斬新さと従来にない栄養、味覚、価格などの新規性が付加できれば、フレーム内で立派な新商品が生まれます。
 「豆腐屋を続ける」という、自社商品のフレームがしっかりしているから、ここまで商品イメージが展開できるというものです。フレームに、関心度が集中するからこそ描ける、新商品のイメージです。

以上、第16回につづく

2009年01月29日

成功する企業には新商品開発がある

第14回  山﨑登志雄


3.情報モンスターに挑む
- 新商品開発の幹を構築 -

3-3.能動的な情報活動

〔実際の調査ステップ〕
 情報活動の中心は調査です。調査とは「積極的に情報を集めにいく」ことが第一要件です。そして次の調査要件は、得られた大量の情報を整理・分析し、社内で使える情報レベルまで質を高めることです。調査ステップは、常識的ですが図表3-9に示すとおりです。
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 一般的な調査対象から得られる基本情報は、図表3-10のようなものです。また、一般的な調査対象としては、情報の三要素に類別すると図表3-11が考えられます。一般的な調査はいずれも、全く常識的な内容になるわけです。
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ただ、実施段階では調査テクニックが、効率性と調査品質を決めます。調査対象が個別的・専門的な内容であれば、前工程の調査実行で高度なテクニックを要し、一般的、常識的な内容であれば、後工程の整理・分析段階で工夫を求められます。
 それにしても、新商品企画のためと勢い込んだところで「どこかに潜り込んで極秘情報を得る」的な、産業スパイもどきの活動が、調査担当者に要求されるわけがありません。
 また、アップストリームに情報を求めるときは、至極当然ながら調査テクニックよりも技術的な基礎知識の方が要求されます。経済的知識がなければ、経済調査ができないのと同じで、これは調査テクニックと違います。

〔調査上の留意点〕
 調査活動の実施方法は、図表3-12に要約します。ここでは、調査の留意点を考えてみることにしましょう。
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●まず、アンケート調査です。最近のアンケート調査はDMなど郵便方式より、電話などの直接質問方式に主力が移りつつあります。が、アンケートを装ったPRが多く、受け手の迷惑を考えれば、逆効果になることもあります。それはE-mailも同じで、独自のアンケート設計に工夫を凝らしても「迷惑メールに間違われる」のが落ちです。
●郵送料の関係から、やはりPRを兼ねて質問事項を刷り込んだチラシなどをみますが、これもノベルティハンターの餌食になるだけでしょう。それよりも、商品に添付される品質保証書と同封された「お買い上げカード」「お得意さまカード」などのアンケートが有効です。アンケート内容の設計次第では、次期新商品の企画に役立つ情報になるかもしれません。
●ヒヤリング調査には、事前に質問マニアルを準備します。形式はヒヤリング調査でも、学生アルバイトなどを使うと、アンケート調査と同様の定量分析しかできません。が、専任担当者が行うヒヤリング調査は、情報の定性分析を可能にします。『定量分析』、『定性分析』というのは化学分析用語ですが、アンケートの集計・分析のようなケースの表現でも、便利に使える用語です。
●文献調査の対象は、単行本、雑誌、新聞の類いから情報探査するのが代表的な方法でしょう。が、この前段にインターネット調査を挟み、浅く広くリサーチを掛けてから、文献で内容を『深堀り』するほうが、トータルの調査エネルギーを有効に使えます。まったく便利になったものです。
 新聞や一般誌は、記者の目を通して書かれているので客観性があるのですが、内容が広すぎて容易に目的テーマへ迫れません。その点で専門雑誌は、当事者自身が書いているので、いろいろな学問の体系や産業の体系にわたる学際的、業際的調査テーマに迫る場合は、分野別の専門誌を通読するのが有効です。
●目的とする情報が発見できたら、必ず『抄録にまとめる』ことが必須です。調査活動に活用できる電子情報の代表格は、データベースです。近時はデータベースがハードディスクで販売されていたりしますし、インターネットのお蔭で手元のパソコンさえ叩けば無料で利用できるデータベースがずいぶんとあります。
 しかし反面でテータベースの発展は、調査マンに技術的、経費的な障壁を高くする側面もあります。これを乗り越えるため、中小企業支援機構の地域情報センターなど、中小企業向けの各種支援を活用するのが有効です。


3-4.調査報告書をつくろう

〔記録を残す意義〕
 調査者には、報告義務があります。資金と時間を費やして調査したのですから、義務があるのは当然といえば当然です。誰に報告するかは、それぞれのケースがあるでしょうが、報告の形式には、口頭報告と書面報告とがあります。
 調査者自身のための調査なら、口頭報告は要らないでしょうが、調査書は不可欠です。そのうえ別に、調査依頼者がいる場合は、口頭報告と調査書の両者をミックスします。
 しかし自身が必要とする調査でも、パソコンのメモリーや紙に残す形式はともかく、調査書は作っておかなければなりません。つまり調査結果は、ニーズがどこにあろうが、会社が共通に活用すべき情報だということです。
 調査報告書は、依頼者を意識して作らなければならないのですが、そのために『一定の形式』をもたせておけば、調査結果が社内の共有情報になり、将来の再使用にも適します。
 また中小企業などの例で、仮に社長自身が調査し、他に報告する先がないとしても、せっかく調べたことは何らかの決まった形式で残しておき、『企業の共有情報』と『自分自身の備忘録』にしなければなりません。共有情報にするためには、「本人しか知らないパソコンの中」より、多少時間と経費がかかっても「誰でも何時でも見られる紙に書き残す」べきです。
 特定の依頼者があるときは、『中間報告』、『定期報告』、『最終報告』というように調査時間の経過とともに、報告の形態が変わってくるものです。問題によっては、情報を得た時点でとりあえず口頭報告し、急きょ対応策をとることもあるでしょう。しかし調査はあくまでも、最終報告書によるまとめをもって終了とすべきです。

〔調査書の整理方法〕
 調査報告書の蓄積は、社内の貴重なプライベート・データベースになります。これは最終報告書だけでなく、調査過程で得た細かな諸情報を書き留めたメモでさえ、残しておくべきデータベースの一枚です。
 ISO9000Sの要求事項は、紙に書かれたドキュメント(記録)類を残すことが必須です。その内容は、研究開発部門の実験記録や製造部門の設計図、作業手順書、検査部門のデータ集、販売部門の業務日誌、サービス・メンテナンス記録など、あらゆる文書類が対象になります。
 欧米的合理主義、形式主義が理念のISOが要求する文書管理方式は、調査情報の整理にも役立ちます。そのポイントは、共通化されたフォーマット(書式)の『統一性』と『継続性』です。また整理方法は、この理念に習えばいいのです。
 調査報告書の場合データベースの分類に習えば、小さなメモまで全部まとめたファイルは、課題別のファクト・データベースです。報告書の形式は『文献抄録』や『実験データ集』などと同じ要領で、図表3-13のような書式にまとめます。調査結果の欄が狭ければ、1~2枚のレポートを作って下に入れます。
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ファイルの中身の方は、メモまで含めるとファクト部分が膨大になるでしょうから、目次を作ります。しかしファクトデータが増大する過程で目次を作ると、何度も作りなおさなければならないので、インデックスを張り付けるのが実用的かもしれません。が、とにかく細大漏らさず収録することです。
 次は「情報の一元管理」です。図表の左下の部分にファイル記号・番号欄を設けましたが、これを付けるためのルールを決めておきます。いわばこれは、社内データベースの大分類コードに相当するわけです。
 小さな組織では、特定の情報は「社内の誰々に聞けばわかるか」ことになっています。知っているのが社長であれば、そのことを社長に聞けばいいのです。が、大きな組織でも分類のルールとともに、この件は「誰々が知っている」ことが、みんなに認識されていれば便利です。ただ便利なだけに、面倒な分類のルールを整備することを忘れてしまいます。

以上、第15回につづく

2008年12月23日

成功する企業には新商品開発がある

第13回  山﨑登志雄


3.情報モンスターに挑む
- 新商品開発の幹を構築 -

3-2.情報力で商品展開(その2)

〔人がもたらす情報力〕
 会社という組織的な生きものは、社員である組織構成員個々がもたらす情報を組織全体が認識し、共有化することによって取得できます。社内情報を共通化、共有化する制度的手段は、常識的ですが図表3-5上の表のようなものでしょう。
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 しかし組織情報の共通化、共有化の中では、階層別の機密情報というものがあるものです。機密のレベルは、ビジネス社会の常識の範囲を適用するほかに、慣習や会社別の規程を以て、階層間の漏洩がないように配慮します。
 新商品企画に関連する情報では、特許などの工業所有権にかかわる情報は、出願前に漏らせません。さらに新商品発売前はマーケティング戦略上、自社の狙いどころを漏洩しないことも当然です。そのために、特定な部門や階層内だけで共有化の範囲を限定する情報があるのは、組織的な生き物ものの本能として当然です。
 そこで、社員個人がもたらす日常的な情報取得手段です。製品フレームの設定など、企画の初期的段階に必要な情報の収集は、図表3-5下の表に示すように、これも常識的なものになるでしょう。が、問題はこのような手段を、いかに有効に用いるかによって、人それぞれの情報感度が決まるということです。
 ちなみにそのポイントは「これらの機会」に「これらの手段」で得た情報を、前回示したラジカセのたとえ的にいえば、最終的に覚えておくことです。例えば私が、コンサルタント活動に必要とする一般情報は、図表3-6のようなどろくさい手段で、十分に役立つプライベートデータベースを形成しています。
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〔対人情報の類型〕
 個人的な情報活動の基本になるのは、対人情報です。対人とは、お客さんであったり、先生、先輩、同僚、後輩、同級生、勉強会などサークルの仲間であったり、ときには近所の人達さえもが対象になります。これらの人々と逢い、または電話などで話し合ううちに得る情報です。
 日常的な対人情報の取得に関しては、図表3-7に示すような原則を守ることが大切です。誰しも、気を許さないと話し難いものですが、聞き手の気持ちで好ましい人間関係が築かれ、やがて個人的な情報ネットワークができてきます。
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ところが通常のビジネスマンは「気を許す仲間を増やす」といっても、会社以外では同級生との交流のような、狭い人間関係以外ではあまり拡張できません。ですから最近は、仕事関係の同一系情報ネットワーク以外に、ビジネスマンの間でサークル活動がトレンドのようになってきました。
 活動グループは、交換される情報が一般的であっても、話題は豊富です。その場で新商品企画にかかわる直接的な話題は、めったに出ないかもしれませんが、聞き手の態度によっては、多くのヒントが与えられるものです。
 このサークル活動を、企業レベルで行うのが異業種交流活動だと思います。ただ融合化法などにみられる官製の異業種交流に関する発想は、技術がありさえすれば「何とかなりそうだ」という、プロダクトアウトのにおいが気がかりです。
 新商品開発が、マーケットインの指向ならば、異業種交流は当然、市場の一般的な動向を知るところから出発しなければなりません。その意味で、異業種交流は「会社レベルの情報活動の一環」と位置付けておいた方がよさそうです。
 異業種交流グループは、図表3-8のような構成で成り立つ進行ステップがあるでしょう。このプロセスにおいて、「社長の飲み会」だと冷やかされるかもしれません。プロダクトアウトに比べ、マーケットイン思考の実践は、じれったいものですから、成果を急がないことも大切です。
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以上、第14回につづく

2008年11月27日

成功する企業には新商品開発がある

第12回  山﨑登志雄


3.情報モンスターに挑む
- 新商品開発の幹を構築 -

3-2.情報力で商品展開(その1)

〔人につく情報力〕
 会社の情報は、社外の一般社会や市場から「社員がもたらしてくる」ものです。当然、社員ひとりずつの情報機能が集積し、会社全体の情報機能を形成することになります。
 社員がもたらす情報は、その会社にとって最高品質の情報です。つまり、会社にとって社員は最も高価ながら、最も高級な情報メディア(媒体)といえます。
 また社員がもたらす情報は、会社が再確認できる情報です。会社が欲する情報を、社員に指示して積極的に収集させることもできます。ですから逆にいうと、社員の知識レベルを越えた情報は、会社に入ってこないことになります。
 だのにトップの中には、社外の話はよく聞いても「社員に耳を傾けよう」としない人がいます。トップが部下を無視するのは、自己の「情報網を断つ」ことを意味します。
 ただ、組織構成員の情報機能には個人差があることも、また仕方のない現実です。したがって会社の情報力を高めるには、トップが情報の担い手たる社員を自分の情報ルートとして教育しなければなりません。
 そこでここに、情報マンイドを高めるための私案があります。個人の情報機能を『ラジカセ』というクラシックな情報機器の基本回路に例えて、図表3-4のように分解します。そしてこれらの各要素を磨いていけば、情報力が高まろうというわけです。
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 この図表は洒落で表現していますが、人々が情報を扱ううえで大切な要素を含んでいます。したがって今号は、くどいようでもこの内容を詳細に説明しておきたいと思います。説明は図表3-4に示した番号、各部分の名称、その機能及び留意点、そして各機能の詳細説明の順に並べます。
① アンテナ
機 能:情報の捕捉、留意点:指向性
説 明:アンテナには周波数特性と指向性がある。周波数が高いほど、情報密度は濃いが指向性が強くなるから、アンテナはしっかりと情報源に向けなければ機能しない。
 したがって社員たる者は、自社の商品フレームに関心を集中し、狙い分野に周波数の規格を合わせ、狙い市場・技術分野に的確に向ける。情報発生源が不明確なら、電界強度計を使って予備調査をする。
② 同 調
機 能:情報の選別、留意点:情報価値の評価
説 明:数局の捕捉電波をフィルターに通し、必要な信号だけを取り出す。クラシックラジオは選局のためにダイアルを用い、ピーピー、ガーガー鳴らしながら目当ての局を探す努力をしたものだ。
 昔のバリコン式フィルター相当の情報選択基準が、かなり絞られてくると今のラジカセのように、広い範囲から探し出さなくても、ワンタッチ方式で効率的に狙った情報に衝天を輪セル事ができるようになる。
③ 高周波増幅
機 能:原始情報の拡大、留意点:雑音除去
説 明:同調後の微弱な放送波(高周波)を増幅する機能だが、同時に混入雑音も拡大してしまうおそれがある。
 この段階の情報処理では、雑音を消去するために負帰還(出力を負の信号に変えて元へ返す)回路をはたらかせる。信憑性のチェックなど、原始情報に見方を変えたネガティブフィードバック(負帰還)を掛け、雑音成分を打ち消す必要がある。
④ 検 波
機 能:情報の整理、留意点:独自の理解
説 明:受信した高周波は、人の耳に聞こえる音声周波数帯に変えられる。この機能は自分や社内の誰もが、共同で情報を活用できるように、情報マン自身が選択した情報を自分なりに消化する必要がある。
 情報マンの個人的な知識水準が消化剤として作用するため、社員は常に情報マインドを高め、見聞を広めておかなければならない。
⑤ 低周波増幅
機 能:情報の加工、留意点:共通性
説 明:検波情報を文書や数値、図形化など、スピーカが鳴らせる電力まで高めるように増幅する。
 情報加工ミス等、内部で発生する雑音は電力が大きくて(思い込みが強くて)取り除き難くなるため、ここでも強力な負帰還回路をはたらかせる。しかし企業情報活動の雑音防止策としては、社員の個人的な情報処理能力を高めるよりほかにない。
⑥ 録 音
機 能:情報の保管、留意点:整理整頓
説 明:メモリーの機能は、情報の取得と活用のタイミングと活用場面を調整するため、将来の活用を見込んでコード番号などをつけて整理したうえで保管する。この記録は、社内共通のデーターベースであり、将来、再加工できる原始情報でもある。
⑦ 再 生
機 能:保管情報の再生、留意点:確実性・迅速性
説 明:「必要なときに必要な情報を探して」取り出す検索と再生は、録音と組みになった機能。検索の迅速性と確実性が、再生機能の要件となる。
⑧ スピーカ
機 能:情報の活用、留意点:接続性
説 明:アンテナに入った原始情報を最終的に活用する、マン・マシン・インターフェイス(人と機械の接続)機能。
 スピーカとは「無駄なおしゃべりマンの代名詞」だったかもしれないが、社内では大いにこの称号に甘んじ、有益な情報を流そう。
 さてこうしてみると、情報処理とは何と「多段階で面倒」なものでしょうか。しかも、これらの機能の中のどれひとつ欠陥があっても、スピーカはよい音色で鳴ってくれません。
 ここで示した情報機能の分析は、あたかもスローモーションを見ているがごとくもどかしいでしょう。ですが、実際に優れた情報マンは誰でも、これらの機能をプロセス別に「無意識のうちに消化」しているものです。

以上、第13回につづく

2008年10月26日

成功する企業には新商品開発がある

第11回  山﨑登志雄

3.情報モンスターに挑む
- 新製品開発の幹を構築 -

パート3のポイント
[情 報]生きた情報が商品を育てる

 新商品開発には情報が不可欠ですが、開発対象のターゲットを絞り込んでいなければ、必要な情報に集中できません。フレームが固まった次は、情報収集のテクニックを述べなければなりません。
 売れる新商品に育て上げる企画には、基本となる考え方に情報を媒介とした市場の洗礼を受けることが必要です。いわば新商品企画に、命を吹き込むのですが、企画を一人前にさせるために有用な情報とはなにか、その集め方、分析手法、そして活用方法を全社員共通に身につけていきましょう。

3-1.情報に基づく検証

〔情報源を求めて〕
 かなり以前に、情報という言葉は森鴎外の造語だと聞きました。つまり「情を通じて報を知る」ことからきたといわれます。明治の大文豪が「心そこにあらざれば、もの見えず」とつぶやいたかどうか、知る由もありません。が、『情報洪水』とか、『情報公害』とかいう言葉さえ聞かれる現代、その対象に関心がなければ、同じ情報でも有効に入ってきません。
 この実感からすると、コンピュータの世界で『情報処理』という言葉が使われるのは、『信号処理』というべきです。信号は、機械で処理できますが、情報は人間でなければ処理できません。
新商品企画のために、情報そのものに対する認識は、たしかに必要なことです。が、情報を収集し、処理し、活用していくうえで、情報の性質を整理して理解しなければ、絶対に活用できないものでもなさそうです。
 新商品開発に際しては勘や閃きが貴重です。もちろん勘や閃きがはたらくのも、豊富な知識という情報の蓄積があればこそですが、「あのとき、なぜ閃いたか」といったような詮索は不要です。インスピレーションなど、情報の活用問題と離れたところに関心事が流されるおそれがあるわけです。こうなると、新商品開発で「占いによる地震予知」を期待するような側面が強まり、およそビジネスの話でなくなります。
 さて、情報収集の話が製品コンセプトの後にきた意味です。たしかに、情報とコンセプト樹立は「鶏と卵の関係」にあって、「情報収集が先かコンセプト樹立が先か」迷います。が、この場合はやはり「コンセプトを先」におき、その周辺分野から情報を集めていくことです。
 その理由は、自社の商品フレームが「どちらに向かっている」のか、「どのような領域にある」のかということがはっきりすれば、情報に対する集中力が増加することです。
 集中力が増し、情報マインドが高まると、情報源が定まってきて、上質の情報が的確に入ります。
 ただ、ここでは新商品企画の必要性から、情報の受け手側が積極的に収集しようとする情報だけを主体として考えましょう。そでないと、この『情報というモンスター』には、とてもかないません。

〔フレームの洗礼〕
 情報というものは、企業活動すべての潤滑油です。ですから商品フレームを設定するためにも当然、情報が必要です。
 自社のもつ技術を棚卸しすることや、自社が所属する業界やその周辺の実態を把握することは、フレーム設定のための情報収集です。が、その情報源は社内データのチェックや、再分析などで十分な場合が多いのです。
 そして、大枠の事業領域として決定された新商品フレームは、その『有用性』『正当性』『有利性』『安全性』『発展性』『有望性』などが、情報の洗礼を受けるという順序です。
 先に設定したフレームは、いわば製品コンセプトの仮説ですから、常に「フレームの的確性」を外部情報と照合します。調査とは「仮説の検証である」といわれるとおりです。
 一方では、トップの承認まで得て設定されたフレームを「なぜ見直すのか」との、疑問があるかもしれません。が、調査・情報収集には金と時間がかかります。ですから、仮に設定したフレームをトップの承認と開発ステップに駒を進める業務命令を得ることだと解釈すべきです。
 一度踏みだした決定は、図3-1のように時間の経過とともに、軌道修正が難くなるものです。ですから仮説のうちに、慎重な検証をするのです。
 また、ワンマンのトップが決めたフレームは、誤りがあったとしても誰もそれを指摘できません。が、首を覚悟の決死隊が諌めなくても、客観的データを揃えて提示すればきっと、賢明なワンマンにはわかってもらえます。
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〔フレーム検証の手順〕
 情報収集には、収集者のスタンスが反映されるものです。人間は、五感という情報インターフェイス機能をもっています。つまり人間の情報センサーですが、中でも目が捉らえる情報が最も多く、確実です。
 そこで目と情報収集のスタンスの関係は、図3-2に示すようになるのではないでしょうか。つまり目の高さによって、事象の見え方が違ってくるわけです。
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 フレーム設定のときは、基準においた自社の企業活動分野の周辺をみてきました。次にフレームの検証では、市場や技術の動向を鳥瞰する、つまりスタンスを高くとるわけです。
 例えば図3-3のように、鳶は地上の獲物をみつけるために上空を旋回します。そして、「設定したフレームを支柱にした新商品開発が大丈夫」そうなら、目の位置を下げて焦点を徐々に短くズームアップしていきます。
 大所高所から、製品フレームの的確性を逐一調べていくのは、実に大変な作業です。が、この先何年間か「企業全体の商品を規定する」コンセプトを構築するための調査ですから、大変でもやらなければなりません。
 また、設定されたフレームは、調査結果によってのみ確定すべきです。調査は、仮説フレームを確定するのに「都合のよい情報」だけを集めないことです。企業が進む先には、都合のよいことばかりではないのです。都合の悪い情報も集め、その悪さ加減を検証し「この程度の不都合ならいける」という見方もできるわけです。
 しかしこの場合も、情報を収集した結果による判断であって、収集時点で仮説に有利性や不利性を偏って与えた結果ではないわけです。
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以上、第12回につづく

2008年09月25日

成功する企業には新商品開発がある

     第10回  山﨑登志雄


2.新商品コンセプトの樹立
- 新商品の根っ子の部分をしっかりと -

2-3.商品戦略を考える(その2)

〔全社の統一認識〕
 通常の経営状態では、有望市場に向けて主力商品が立ち上がり、正規分布型つまり富士山型の『商品-市場分布図』になるのが現実的な姿でしょう。が、経営効率の面から新商品は有望市場に集中させ、上右部分で団子型に固まった分布図のパターンにしたいところです。図表2-8のような概念です。
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 ただ現実問題として、経営のベースになる商品、つまり富士山の裾野に当たる部分の商品がなくて、勢いのある新商品だけが有望市場に束になって売れる状況は、そう多くはないでしょう。しかし商品フレームは、目指すべきところを示すものですから、あくまでもこの理想図であるべきです。
 そして先の図表2-6に示すマトリックスチャートは、毎年作ったものを重ねて、パラパラとめくるとすれば、あたかも動画を見るように、富士山の頂上が有望市場に向けて力強く伸びていくといったイメージです。
 企業のフレームはどれも、トップの意志決定として明確に定めます。フレーム設定までのプロセスは、ボトムアップ方式でもトップダウン方式でもいいのです。が、最終的にはトップの意志が明確な企業の決定事項でなければなりません。トップの意志が入っていなければ商品フレームは、確固たる企業の商品コンセプトにならないのです。
 次に、ここで設定された商品フレームは、それ自体が「訴求力をもつ形態」に整えておかねばなりません。つまり商品フレームは、例えばそのイメージを『短い言葉』にまとめて表現したり、『キャッチフレーズ』や『解説文』をつけたりして、できるだけビジュアルな、誰もが見て認識できる形態で表現しておくわけです。
 ビジュアルな表現形態があると、市場に対して訴えるときも有効に使えます。商品フレームを社外に向けて一般社会や市場に公表することは、跳ね返って社内の認識をより高めるのに役立ちます。
 表現の一例として、よく用いられるツリー形式によるイラストを図表2-9に示します。これは、北陸地方のある中堅企業の会社案内書にブロックチャートで示されていた商品フレームをヒントに書き換えたものです。
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                                                以上、第11回につづく