働く意欲低下をどうするか、労働経済白書を読む
横塚由光
7月22日厚生労働省は「平成20年版労働経済の分析」(労働経済白書)を発表した。全文を読むのは年と共にしんどくなったので、要約を読む。以下の引用は全て要約からであることを予めお断りしておく。
筆者の注目点は次の2点である。第1点は働くことへの満足感の低下傾向である。第2点は、「業績・成果主義な賃金制度の運用などには多くの問題点があった」とする部分である。
第1点の意欲の低下傾向は、非正規雇用の拡大と関連があるという。それは企業の「コスト削減志向が極めて強いものであつた」としている。つまり何時雇用が打ち切られるか分からない状況では、到底働く意欲も沸かないと言うのは至極当然であろうと考えられる。
第2点の成果主義の問題点である。失われた10年の時期に、年功賃金が崩壊して、業績・成果主義賃金に多くの企業が走った。しかしそれは失敗と言える。なぜか、大部分は評価について納得が得られないというものだ。仕事に対する意欲が低くなった理由の第一は賃金が低いに次いで評価の納得性が確保されないが2位となっている(要約第25図)。これは、元富士通の城繁幸氏の「内側から見た富士通成果主義の崩壊」で明らかであろう。元ソニーの天外司朗氏の「文芸春秋」の掲載論文では「人間のパフォーマンスを数値化して」「客観的で公正な評価」するのは「私は無理だと思う」といっている。
企業がコスト削減を意図するのは、グローバル化の結果であろう。しかしその結果が、非正社員の増加、全般的な低賃金となれば、経済の成長そのものが停滞してしまう。
働く意欲が低下すれば、当然ながら生産性は低下を余儀なくされることとなる。2000年以降は低生産性の産業に労働力が集まる傾向が生じているという。
人口減少傾向が続く日本においては、就業率の上昇と生産性の向上が不可欠の条件であるのに、こうした事態は由々しき状態といえるのだ。
そこでこの白書も、働き甲斐を高める企業の取り組みが必要としている。白書では常識的な提案に留まっているが筆者は大胆な経営改革が必要と考えている。それは、非正社員をやめて正社員として、将来展望がもてる雇用とする。何時首切られるか不安の中ではとても意欲は湧かない。結婚もできず、少子化も解消しない。このままでは日本沈没に向かうであろう。とりわけ派遣労働は日雇派遣だけでなく、一部の専門職を除いて全般的に縮小しなければならないであろう。
第2点の賃金制度は、同一労働同一賃金に向かわなければならないであろう。正規、非正規、派遣、パートに関係なく、同じ仕事には同じ賃金を支払う仕組みを考えなければならないであろう。
厚生労働省では、産業別の「職業能力評価基準」を順次設定している。これはスーパーマーケットでいえば、統括責任者、担当責任者、販売部門責任者、販売担当者の4レベルしかないが、このレベル内をさらに2分割か3分割すれば、それを賃金に対応することができる。つまりそこで労使が産業別賃率で合意することである。社会的・客観的賃金率が出来上がれば、賃金額以外の不満は少なくなる。
あとは経営に対する参加意識の高揚である。働きがいのある職場を作ることである。それは大きな経営改革となるであろう。