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2008年06月 アーカイブ

2008年06月29日

「経営の未来」(ゲイリーハメル、ビルグリーン著、日本経済新聞出版社刊)を読む

横塚由光

経営管理のトレードオフ
 この本の帯のコピーに「正統派経営理論の正反対を行く経営理論イノベーション」とあり、その成功企業としてゴアテックス、グーグル、ホールフーズを紹介するとある。
 著者の近代経営管理論についての問題意識は「複雑な作業を小さな反復可能なステップに分解すること、標準的な業務手順に従わせること」及びコスト計算、社員活動の調整、など効率化、コスト低下には成功してきたが、一方で、「創造力と自主性を無駄にする」「組織の適応力を低下させる」「上意下達の組織に隷属させる」また「企業の倫理性を高めてきた証拠はない」という。つまり経営の効率はアップしたが、同時に人間の自主性や創造力は活用されず、管理に隷従してきたとして、これはトレードオフの関係にあるとする。

新しい関係を目指す
 そこで著者は、「監督者の階層を築かずに何千人もの人々の活動を調整する方法」「創造力を抑圧せずにコストを厳しく管理する方法」「規律と自由が互いに排斥し合う関係でない組織を築く方法」を学ばなくてはならないのであり、21世紀の経営管理は、先の「トレードオフを超越することを目指さなければならないと」という。

3社の経営イノベーション
そこで著者は先の3社を紹介する。ホ-ルフーズ社は日本ではあまり知られていないが、「愛、コミュニティ、自治、平等、透明性、使命という独特の経営原理に支えられ」「人々によりよい食べ物を提供する」と言う理念の共有と徹底した民主的な運営であるとしている。組織の基本単位はチームであり、チームに権限を付与し、大きな自治権を与えられているという。同社は194店舗、年商60億ドル近いスーパーマーケットである。
ゴアテックスで有名なWLゴア社は、「経営は人々の幸福に役立つ製品・サービスを提供することであり、それをいかに効率的に提供するかである」として「階層的ではなく格子型組織」を構成しているという。管理職層はなく、組織図もない、「業務の中心単位は小規模な自己管理型のチーム」としている。
今やIT検索のトップのグーグルは「徹底的にフラットで、大胆に分権化された組織」という。これは従来の管理者と非管理者を区別する組織ではなく、個人の創造性、フラットな組織、従業員の株式所有など、企業としての使命感に共鳴する経営への参加を希求する組織となっている、と述べている。経営管理そのものの革新がそこにあるという。
管理者と被管理者の区別の終わり
 以上は筆者の独断的な短い要約であり、誤謬の怖れもあり、興味のある方は実際の本を参照して頂きたい。筆者の見た3社の経営の要点は、企業理念の共有と徹底した権限委譲であり、経営参加である。欧米の経営管理は、管理者・経営者と被管理者としての労働者の階級的分離をしてきたが、それが終わりを告げていることを感じた。階級的差別も資本主義の一時期が築いたものであり、永遠に続くではない。今日のグローバル化した競争とICT(情報通信技術)の驚異的進歩は、個人の創造性を発揮できる主体的経営参加が必要になっている。そこにこそ「経営の未来」はある。その実現のためには、経営管理のイノベーションが必要なことを同書から感じ取ったものである。

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