2008年08月28日

百貨店はどこへ行くか? 横塚由光

百貨店は大苦戦
 8月13日の日経流通新聞には、百貨店にとってはショッキングな見出しが並んだ「改装効果持続せず、2/3が減収」、「伊勢丹流も地方は苦戦」「減収店が2割、小型店落ち込み鮮明」。これらは同紙による2007年度の百貨店調査の結果である。「百貨店売上高は既存店ベースで06年度比0.6%減と2年連続でマイナスとなった」という。これは「衣料品と高額品の不振で百貨店市場は悪化の一途をたどる」としている。19日の日経本誌では「7月の全国百貨店売上高は前年比2.5%減(既存店ベース)」とあり、これは「5ヶ月連続のマイナス」という。短期的にも長期的にも厳しいい状況にある百貨店である。
超広域型SC(ショッピングセンター)は脅威か
 同調査で百貨店の経営環境の悪化として上げられているのが大型SCである。そこで最近の首都圏の10万平米以上のSCの出店状況を見ると次の通りである。
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加えて最近価格的魅力のアウトレットモールも各地に開業しいる。軽井沢や御殿場などでは観光気分で買物を楽しんでいるとう。ブランド品を低価格で販売するから、都心には出店できないから、各地域のレジャーを含む買い物といえる。
かつての百貨店要素を完備したち大型SC
 考えてみれば、かつて百貨店が小売の王者を誇っていた頃、百貨店には、劇場、映画館、美術館、大食堂などが内外のブランド品とともに存在した。今の大型SCはシネコンを備え、各種レストランから軽食を完備した上での、豊富な専門店群と総合スーパー・家電量販店などの核店舗を入れ、スポーツ関連からイベント広場、自治体の市民サービス部門までを備えている。これでは10万平米の百貨店でもとても太刀打ちできない。
業態見直しまたは転換が必要
 商品の豊富化と多様化、プロダクトサイクルの短縮化、小売業態のコンビニから各種専門店・SCまでの多様化を考えれば、今日自らの小売業の中のどの位置にいるかの見極めが百貨店には必要である。その上で対象とする顧客と商品の選択が必要であり、他業態との差別化・独自性の追及が今や不可欠なのである。一方でインターネット、テレビなどの無店舗販売は伸びている。店舗販売に拘る必要もない。日本国内だけにこだわる必要もない。改めて消費者の欲求を見極めて、商品政策と顧客対応戦略を立て直す時期となったである。
 特に地方小型店は、旧市街地に立地し店舗は狭隘では総合スーパーにも勝ち目はない。旧そごう有楽町店は、今ビックカメラ店として賑わいを見せている。好立地でもあの面積では百貨店としての経営は不適であつたのだ。宇都宮の福田屋百貨店は旧店舗を見限り、郊外の広い店舗へ移動し、新業態を開発して成功した。百貨店は今決断と選択が必要だ。

2008年07月31日

働く意欲低下をどうするか、労働経済白書を読む

横塚由光

 7月22日厚生労働省は「平成20年版労働経済の分析」(労働経済白書)を発表した。全文を読むのは年と共にしんどくなったので、要約を読む。以下の引用は全て要約からであることを予めお断りしておく。
 筆者の注目点は次の2点である。第1点は働くことへの満足感の低下傾向である。第2点は、「業績・成果主義な賃金制度の運用などには多くの問題点があった」とする部分である。
第1点の意欲の低下傾向は、非正規雇用の拡大と関連があるという。それは企業の「コスト削減志向が極めて強いものであつた」としている。つまり何時雇用が打ち切られるか分からない状況では、到底働く意欲も沸かないと言うのは至極当然であろうと考えられる。
 第2点の成果主義の問題点である。失われた10年の時期に、年功賃金が崩壊して、業績・成果主義賃金に多くの企業が走った。しかしそれは失敗と言える。なぜか、大部分は評価について納得が得られないというものだ。仕事に対する意欲が低くなった理由の第一は賃金が低いに次いで評価の納得性が確保されないが2位となっている(要約第25図)。これは、元富士通の城繁幸氏の「内側から見た富士通成果主義の崩壊」で明らかであろう。元ソニーの天外司朗氏の「文芸春秋」の掲載論文では「人間のパフォーマンスを数値化して」「客観的で公正な評価」するのは「私は無理だと思う」といっている。
 企業がコスト削減を意図するのは、グローバル化の結果であろう。しかしその結果が、非正社員の増加、全般的な低賃金となれば、経済の成長そのものが停滞してしまう。
 働く意欲が低下すれば、当然ながら生産性は低下を余儀なくされることとなる。2000年以降は低生産性の産業に労働力が集まる傾向が生じているという。
 人口減少傾向が続く日本においては、就業率の上昇と生産性の向上が不可欠の条件であるのに、こうした事態は由々しき状態といえるのだ。
 そこでこの白書も、働き甲斐を高める企業の取り組みが必要としている。白書では常識的な提案に留まっているが筆者は大胆な経営改革が必要と考えている。それは、非正社員をやめて正社員として、将来展望がもてる雇用とする。何時首切られるか不安の中ではとても意欲は湧かない。結婚もできず、少子化も解消しない。このままでは日本沈没に向かうであろう。とりわけ派遣労働は日雇派遣だけでなく、一部の専門職を除いて全般的に縮小しなければならないであろう。
 第2点の賃金制度は、同一労働同一賃金に向かわなければならないであろう。正規、非正規、派遣、パートに関係なく、同じ仕事には同じ賃金を支払う仕組みを考えなければならないであろう。
 厚生労働省では、産業別の「職業能力評価基準」を順次設定している。これはスーパーマーケットでいえば、統括責任者、担当責任者、販売部門責任者、販売担当者の4レベルしかないが、このレベル内をさらに2分割か3分割すれば、それを賃金に対応することができる。つまりそこで労使が産業別賃率で合意することである。社会的・客観的賃金率が出来上がれば、賃金額以外の不満は少なくなる。
 あとは経営に対する参加意識の高揚である。働きがいのある職場を作ることである。それは大きな経営改革となるであろう。

2008年06月29日

「経営の未来」(ゲイリーハメル、ビルグリーン著、日本経済新聞出版社刊)を読む

横塚由光

経営管理のトレードオフ
 この本の帯のコピーに「正統派経営理論の正反対を行く経営理論イノベーション」とあり、その成功企業としてゴアテックス、グーグル、ホールフーズを紹介するとある。
 著者の近代経営管理論についての問題意識は「複雑な作業を小さな反復可能なステップに分解すること、標準的な業務手順に従わせること」及びコスト計算、社員活動の調整、など効率化、コスト低下には成功してきたが、一方で、「創造力と自主性を無駄にする」「組織の適応力を低下させる」「上意下達の組織に隷属させる」また「企業の倫理性を高めてきた証拠はない」という。つまり経営の効率はアップしたが、同時に人間の自主性や創造力は活用されず、管理に隷従してきたとして、これはトレードオフの関係にあるとする。

新しい関係を目指す
 そこで著者は、「監督者の階層を築かずに何千人もの人々の活動を調整する方法」「創造力を抑圧せずにコストを厳しく管理する方法」「規律と自由が互いに排斥し合う関係でない組織を築く方法」を学ばなくてはならないのであり、21世紀の経営管理は、先の「トレードオフを超越することを目指さなければならないと」という。

3社の経営イノベーション
そこで著者は先の3社を紹介する。ホ-ルフーズ社は日本ではあまり知られていないが、「愛、コミュニティ、自治、平等、透明性、使命という独特の経営原理に支えられ」「人々によりよい食べ物を提供する」と言う理念の共有と徹底した民主的な運営であるとしている。組織の基本単位はチームであり、チームに権限を付与し、大きな自治権を与えられているという。同社は194店舗、年商60億ドル近いスーパーマーケットである。
ゴアテックスで有名なWLゴア社は、「経営は人々の幸福に役立つ製品・サービスを提供することであり、それをいかに効率的に提供するかである」として「階層的ではなく格子型組織」を構成しているという。管理職層はなく、組織図もない、「業務の中心単位は小規模な自己管理型のチーム」としている。
今やIT検索のトップのグーグルは「徹底的にフラットで、大胆に分権化された組織」という。これは従来の管理者と非管理者を区別する組織ではなく、個人の創造性、フラットな組織、従業員の株式所有など、企業としての使命感に共鳴する経営への参加を希求する組織となっている、と述べている。経営管理そのものの革新がそこにあるという。
管理者と被管理者の区別の終わり
 以上は筆者の独断的な短い要約であり、誤謬の怖れもあり、興味のある方は実際の本を参照して頂きたい。筆者の見た3社の経営の要点は、企業理念の共有と徹底した権限委譲であり、経営参加である。欧米の経営管理は、管理者・経営者と被管理者としての労働者の階級的分離をしてきたが、それが終わりを告げていることを感じた。階級的差別も資本主義の一時期が築いたものであり、永遠に続くではない。今日のグローバル化した競争とICT(情報通信技術)の驚異的進歩は、個人の創造性を発揮できる主体的経営参加が必要になっている。そこにこそ「経営の未来」はある。その実現のためには、経営管理のイノベーションが必要なことを同書から感じ取ったものである。

2008年05月30日

中小企業と生産性

―中小企業白書2008年版全体概要から―             横塚由光

成長維持には生産性の向上が急務

全体概要は3部構成となっていて、第1部では、2007年度における中小企業の動向と題して、サブプライム問題、原油価格の高騰、建築着工件数の減等で日本経済の今後の見通しは不透明とている。こうした状況から中小企業では利幅が悪化し、収益は伸び悩み、大企業との差は広がり、資金繰りも弱含みとなっている、としている。
 第2部では、中小企業の生産性の向上に向けてとして、労働力減少が始まっている状況から、持続的な経済成長を維持するには、労働生産性の向上が不可欠としている。
労働生産性の世界比較では、わが国は、米国の7割程度でしかない。大企業と比較すれば、中小企業は全ての業種で低い。これは資本装備率が低いことが原因であるとしている。
これの克服には、SaaSの活用が必要という。付加価値の伸びも少ないという。付加価値向上の取り組みとしては、付加価値実現のための取引環境の整備が必要としている。
 中小企業のITの活用状況については、ITの資産・ソフトウェアが少なく、活用の環境が整っていないとして、IT関連の人材の育成・確保とSaaSの活用が期待されるとしている。
ホームページの活用や、電子商取引を行なっている企業は生産性が高い。グローバル化を進めている企業も業況はよく、生産性も高く、付加価値が増大しているという。
第3部は地域経済と中小企業の活性化として、小規模企業は少数精鋭であること、技術・ノウハウの独自性があること。金融機関は、コーポレートガバナンスの構築を重視していること、そして、ネットワークの形成に取組むことを課題としている。以上は筆者の独断的要約であるが、そこから見えてくる中小企業の課題は次の通りである。
低コスト、短期導入のSaaSでITの利活用をはかる
 SaaS(Softwaer as a Serviceの略)は、インターネットを通じて、アプリケーションソフトウェアを利用することで、導入も短期で、コストも安く導入できる。しかもバージョンアップはSaaS提供者が行うから、常に最新のソフトを利用できる。小額のIT予算で運営でき中小企業には最適な利用方法である。自社内にITの専門家も必要なく導入できる。
経済産業省も支援
 経産省は20年度予算で「中小企業経営革新プラットホーム整備事業」として中小企業のIT活用と経営力強化の支援に乗り出すという(「ソフトバンクビジネス+IT」より)。またSaaSのサービス提供会社との契約に関してもガイドラインを通産省は設定しているので参考にすると良い。
IT化は必須となった中小企業
 グローバル化と激烈な競争下では、企業としての維持成長には、独自性による差別化と、付加価値増大のための生産性の向上と、創造性をもつた人材の育成が不可欠である。また小規模でも十分大企業に太刀打ちできる電子ネットワークの活用が決め手となる。それらのいずれにもIT化の推進が不可欠である。今年後半に予想される経済の停滞は、経営の革新の必要性が益々増大すると考えられ、そこにもITの利活用が不可欠となる。

2008年04月30日

流通業の低迷から何が見えてくるか?  横塚由光

明白な流通業の低迷
 昨年のスーパーの売上高が、前年比0.8%減となり、前年比減は11年連続という(4月23日の日本経済紙)。それを聞いても、もはや誰もそのことに驚きはしないであろう。それより先、セブン&アイは4月10日に2月期決算が減益となったことを受けて、新たな3ヵ年計画を発表し、外食店、スーパーの不採算店を閉鎖、コンビには600店を閉じる一方で千店を新規出店するとしている(4月11日日本経済紙)。イオンも総合スーパーは100店を閉鎖・転換し、国内事業は縮小均衡に向かわせるという(4月8日日経紙)。百貨店でも高額品のブランド衣料や雑貨が不振という。もはや流通業の低迷は明瞭なのだ。
 外食産業もすかいらーくが営業利益は2月期で22億円の前年比86%減で、サイゼリヤは営業利益21億円と前年比5%減としている(4月15日同紙)。外食産業はガソリンの相次ぐ値上げで車での外出を控えた影響という。しかしすでに昨年すかいらーくがMBOにより上場廃止したのは、経営の抜本的な対策を実行するため短期的利益を求める市場からの影響を切り離したものといわれる。これもファミリーレストランという営業形態が消費者に飽きられていていることの認識と言える。ファミレスに変わってショッピングセンターのフードコートが客を呼んでいるという(TV東京WBS)。競合店が隣接し顧客にとって選択が多いからという。しかしそのSCも伸びは小さくなっていると言う。これら小売・外食の停滞は、日経社の消費者調査では9割の人が消費を節約していることで裏づけられる(4月23日同紙)。

今年も賃上げは少なかった
 一方で輸出関連の上場企業はこれまで増収・増益を続けてきている。しかしながら競争の激化を理由に人件費は抑制気味に終始してきていた。今年こそは大幅な賃上げを要求していた労働側も、にわかに起こった米国のサブプライム問題の影響から、本年もまた経営側は賃上げ抑制と動き、日本経団連の調査で、大手企業で1.89%、中小で1.68%の低額の賃上げとどまった。
個人消費の減少は低成長への悪循環
 しかし資本側は、配当額と設備投資は増えているのである。失業率は減り、雇用者は増加しているものの、多くはパート・派遣・期間雇用者等で低賃金に抑えられているから給与所得総額は増えていない。労働分配率は低下の一方なのである。
 人口減少の中での、所得の低下傾向では、どうあっても消費は低落を続け総需要の減につながり、低成長という悪循環に陥いるのである。
 大企業経営者は賃金抑制は自らの市場が狭くなり、自らの首を占めることを知らねばならない。ここで伊藤忠商事会長丹羽宇一郎氏の言葉を紹介する「少なくとも、大企業には、中小企業への発注額を上げて、中小企業におカネが回るようにするなど、できることから始めてほしい」(週間ダイヤモンド3月8日号)。大企業経営者の発想の転換が必要である。
 文化的生活を保障する賃金を払っても競争に勝てる独自性ある差別化商品の生産には、生産性の向上が不可欠であり、創造的構想力を発揮する優れた個人が必要なのであり、そうした人々を育成する、経営を実践しなければならないことを経営者は十分に自覚してもらいたいところである。

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2008年03月31日

ICT(情報通信技術)は経営の戦略的利用へ

銀座松屋はデータマイニングで効果
 先月号で伝えたように、百貨店は11ヶ月連続で前年を下回った売上を続けている。そんな中で、松屋百貨店(東京銀座・浅草)は、データマイニングの利用により、催事の企画の管理、DM発信先の選別に効果を発揮して、毎月のように対前年増の売上を記録しているという。3月7日の日本テラデータ㈱が開催した「Teradata Universe Tokyo 2008」のなかで同社が発表した。同社ホームページで見ても、銀座本店は19年1月から9月までは毎月売上高は前年を増加させている。10月11月は減少したが、12月は増加している。これはまさに同店が様々な形で蓄積した顧客データをデータマイニングにより、催事やDMの企画にICTを戦略的・戦術的に活用した結果であると考えられる。
日本のICT利用は米に劣る
 日本でのこれまでのICTの利用について、「平成19版情報通信白書」では、企業のICT利用の効果に関する日米比較を行い、「顧客・市場のニーズ把握』や「マーケティング・商品開発業務」で「米国の方が導入割合が高くなっている」として「日本企業は業務の効率化に関する分野でのICTシステム導入が中心である」と述べ、さらに「日本企業は、組織構造の見直しを伴う抜本的な業務・組織改革には特に消極的である」としている。
 こうした結果「米国企業に比べて、付加価値向上に結び付くような効果は生まれていないと考えられる」とまで「白書」はいっている。そうした中で、松屋銀座店の事例はICTをマーケティングに応用して付加価値をあげた好例なのである。
日本のコスト重視だけでは時代遅れ
 どうやら、ICTの利用は日本企業においては、業務部門別の業務コスト削減という狭い範囲で行なわれていて、経営全体の革新には至っていないということだ。これはICTというとコスト削減を目標として、単なる筋肉労働の機械への置き換えに主眼を置いた、1時代も前の古い考えにとらわれているように思われる。
ICTは経営革新に戦略的に利用
ICTは単なる業務の機械システムへの置き換えではなく、CRM(顧客関係管理)や、データマイニング(多量のデータから需要予測・顧客の行動予測などの規則性を見出す方法)などマーケティングに直結したICTの手法を活用すべきなのである。高速大容量の通信機能はサプライチェーン・マネジメントの生産から販売までの他企業と一体となった業務革新をも推進する。
 ICTは経営の中核となり、全ての業務が統合され、リアルタイムに処理されれば、いわゆる可視化経営が可能となる。ERP(Enterpraise resource Planning)は基幹業務統合処理システムと呼ばれ可視化経営を実現する。ERPは、これまでの優れた企業の業務プロセスを取り込んでいるから、ERPに業務プロセスをにあわせることで、業務プロセスを革新する、いわゆるリエンジニアリングが可能となる。
SaaSで低価・短期導入も
今や、SaaS(Software as aService)の利用など、最新のシステムを短期に安く導入する方法を検討することで経営へのICTの戦略的な活用をする必要がある。

横塚由光

2008年01月31日

スーパー、百貨店11年連続売上減にみる流通業の構造変化、マルチチャネルを考えよう

横塚由光
 日本チェーンストア協会は「2007年の全国スーパーの売上高は、前年比1.4%減の13兆9千7百55億円と、11年連続で前年を下回った」と1月22日発表した。一方日本百貨店協会は同年の「全国百貨店売上高は前年比0.5%減の7兆7千52億円と、1997年から11年連続で前年を割り込んだ」と発表している。
 昨年度の前年比減については、百貨店では、秋冬衣料の販売不振、株安を受けての高額品の売れ行き鈍化を、スーパーでは、秋冬衣料の長雨、残暑などでの不振をそれぞれにあげている。しかし11年連続減はより構造的原因と考えなければならない。
 この有店舗の2業態に反して、無店舗販売の通販は好調といえる。日経MJによる2007年版「eショップ・通信販売調査」では、「06年度の通信販売の総合売上高は(前年と比較可能な233社)は05年度に比べ7.5%増加した」「インターネット通販は21.7%と依然高い伸びを示す。携帯電話を使ったネット通販は24.5%増だった」としている。
 またテレビ通販は24時間放映などが浸透し、23社で「売上高は3千191億2千5百万円」「伸び率は比較可能な21社で17.3%」としている。同調査では物販以外でも、宿泊や旅行が3割延びているとしている。
 これらの現象は明らかに流通業における大きな構造的変化が進行していることを示している。そしてその裏には消費者の購買行動が変化していることを示している。
 一般的に言われる個性化・多様化しているという欲求とともに買物の仕方そのものが多様化しているのである。有店舗無店舗に拘らずに、欲しいものは、欲しい時に、その時に適切な方法で買物をしているのである。もはや百貨店やスーパーの動向だけで消費者行動は判断はできなくなっているのだ。アパレルや高給ブランド店などは百貨店を離れて独自の路面店を広げている。家電量販店は一方で再編が進む中で、ネット通販も広げており、独自の割引率などの低価格販売で売上拡大を図ってもいる。
 アメリカの証券会社のチャールズ・シュワプがオンラインと店舗のいわゆる「クリック・モルタル」で成功したのはかなり昔のことだったが、日本ではこれからのマーケティングはマルチチャルを考えなければならないことが明白になったといえるのである。有店舗に拘っていては顧客の要望に応えることはできないのである。もはや流通業は、多様化する消費者行動にフィットする様々な販売チャネルを提供しなければ大競争時代を生き抜けないのである。

2007年12月27日

SaaSで中小企業のIT化と生産性の向上を    横塚由光

 かって筆者は平成12年に「eビジネスの決めて!ASP活用のすべて」を共著で上梓したが、あまり売れなかったし、ASPそのものが普及しなかった。インターネットの大容量・低廉化、いわゆるブロードバンド化もあまり進んでいなかったことと、適切なソフトそのものも少なく、各企業では自前主義の考え方が多く、ソフトを借りて使用という考え方に慣れてもいなかった。

 今再び、SaaS(Software as a Service)という名称で、SaaS・ASPという言い方もされて登場している、これはまったくASPと同様に、インターネットを通じてのソフトウエアの利用である。何よりも高速・大容量・低廉化した回線の普及と、ソフト側の進歩があっての再登場である。そして企業側の利用姿勢の変化、アウトソーシングに対する意識の変化もある。

 改めてそのメリットを要約すれば、①いつでも最新のソフト・システムを利用できる。バージョンアップの煩わしさがない。②使用料金を月単位等の期間で支払えばよいから経費で処理できる。③システムの導入期間が短期間でよい。④導入コスト、運用コストも安い。⑤何時でも止められる。などが上げられる。

 いまや大企業でもセブンイレブンなど、IT部門をまることアウトソーシングで成功している例も多い。ITの進歩の速さに自社のIT部門では追いつかない。常に最新のITを利用できるメリットは大きい。

 インターネットの利用と言うことで、セキュリティへの懸念もあるが、これもかなり進歩したと言えるし、さらにVPN(Virtual Private Network)閉域ネツトークも利用できる。

 さらに好適な事に、「経済産業省と総務省は12月13日,情報基盤強化税制と中小企業投資促進税制が2年間延長され,2010年3月31日まで適用されることになった。」

「中小企業のソフトウエア投資を活発化させる狙いで,投資要件の金額が300万以上から70万円以上に大幅に引き下げられた。」「実現するASPやSaaS事業者が適用の対象となることも明確化した。」 (日経ITPRO12月14日福田崇男)
とある。

中小企業のITの強化と生産性向上には好機となると考えられるのである。

横塚由光
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