第三十七回 松尾由弘 「製造品質の内部監査をやろう(その5)」
今回は製造品質監査の最後の項目、「精密監査」について紹介します。
▼ 提供する新製品や新サービスを精査する
製品やサービスの品質には、実施段階では確認が困難な品質特性があります。
それを、開始前に調べておこうというのが、この精密監査です。
電気製品や自動車の「耐久性」や「使い勝手」などがこれに該当します。
サービス業では、実施したサービスの「耐久性(日持ちなど)」があります。
▼ どのようなことをやるのか
電気製品や自動車を例にとってみましょう。
量産開始に先立ち、本番と同じ設備、同じ材料、同じ方法、同じ作業者など同じ条件の下で製品を作ります。
これを実際の使用状態と同じ条件で、可能ならば加速試験などを併用して、保証期間以上の稼動をさせてみます。
自動車のドアを例に取れば、毎日通勤に使用する人を想定すると、一日に4回開閉することになるので、5年保証では、365日×5年×4回=7300回の開閉になりますから、その回数だけ連続して開閉してみます。
その後で、ドアを分解して、オイルの拡散状態や変色や劣化の状態を見る、といった具合です。
冷蔵庫のドアや、ガスの元栓、パソコンのキーボードなども同様で、劣化や使い勝手の変化等を見ます。
床屋さんが新しいやり方の散髪を始めるときを例に取れば、
本番と同じ条件で、老若男女、様々な人について本番同様の散髪を行い、その後で、着ているものの中まで毛が散っていないか、風を当てても髪は乱れないか、洗髪して毛先の不揃いはないか、などを見ます。
ここは設計品質の確認ではありませんので、製造上の問題の摘出を目的に考えて行うことが肝要です。
要するに、本番に入ってしまうと確認できないことを、事前に精査しておこうというのが、この精密監査です。
▼ 業界によっては法条例がある
事前に法条例で確認が義務付けられている業界もあります。
食品業では、検査機関による事前の安全検査があります。
建設業では、少し趣きは違うももの建築確認などがあります。
これらも、この精密監査の一部と考えてよいでしょう。
▼ 饅頭のあんこ
マスコミの話題になりましたが、饅頭のあんこの日持ちなども、試作品と量産品とでは、製造条件が違いますから、本番のものを使って経過日ごとに味や食感、色や匂いなどの変化を調べます。
これが精密監査に該当します。
▼ 問題があれば製造条件の見直しを
一旦、設計品質の監査に適合したものが量産開始を迎えているわけですから、この精密監査では、設計に起因する問題ではなく、製造に起因する問題が摘出されるはずです。
ここで摘出される問題は、量産の諸条件に、なにか想定外のことが起きていることを疑わなくてはなりません。
設備、材料、作業者の技能、作業方法や加工方法の違いを調べてアクションをとります。
ここで設計に起因する不具合が見つかるようでは、設計品質監査で見落としたことになりますので、設計段階まで遡ってアクションを取らねばなりません。
▼ 製造品質監査を完了したら
問題がクリアできたら、責任者が出荷開始、サービス開始のゴーサインを出すことにすると良いでしょう。
ISO9001の、8.4項「製品の監視及び測定」には、
「合否判定基準への適合の証拠を維持すること。記録には、製品のリリースを正式に許可した人を明記すること」 と記されていますが、これは量産中のことを云っています。
それよりも大事なことは、新製品の量産開始や新サービス開始のゴーサインです。
開始の合否判定基準は何か、それを誰が許可するのか、などをきちんと決めて実施しましょう。
▽ 次回は、量産中、サービス実施中の定期監査について紹介します。