第二十八回 松尾由弘「システムは売り物ではない、製品を監査しよう(その2)」
前回は、多くの企業でISO9001の内部監査が、システムのみの監査に偏重していて、製品やサービスが提供されるプロセスに対する監査が疎かになっているという話をしました。
規格の主語が「品質マネジメントシステム」になっているために、システム監査に偏重するのはやむを得ないという気がしますが、お客様は製品やサービスにお金を払っているのであって、文書管理や記録の管理にお金を払っているのではありません。
売り物である製品やサービスを提供するプロセスをもっとよく見る必要があります。今回は、製品の品質監査、サービスの品質監査とその層別について解説します。
▼ 中小企業ほど製品やサービスの変化が激しい
ISO9001の要求事項は、その起源をさかのぼれば、大企業が下請けの企業から物を購入するときによいものを買いたい、というところにあったと思われます。
その場合、下請け企業はいつも単一製品を作っていることを前提にしていたのでしょう。規格には、製品やサービスの重要度に応じて監査の重点を変えるという発想がありません。
しかし、企業は日々変化しています。顧客の要求に応じて提供する製品やサービスは変化します。変化の重要度に応じて監査点も変わるはずです。そこで、重要度について考えて見ましょう。
▼ 品質のリスクの大きいものほど監査が必要
早い話が、品質のリスクが大きいものほど、監査の必要性が高いということです。大企業が生産サイクルの永い製品の比率が高いのに対して、中小企業では、短いサイクルで新製品やサービスが発生しています。
毎日同じ作業を繰り返している間は、品質のリスクはさほど大きくないのですが、新製品や新サービスでは、品質のリスクは大きいといえます。品質のリスクに応じて内部監査の頻度と監査ポイントを変えることが合理的でしょう。
ひとくちに新製品と云ってもいろいろあります。従来の技術の応用で作られる製品もあれば、新しい技術や工法あるいは設備導入を必要とするものなどもあります。
そこで、こんな定義で、新製品を層別してみましょう。
▼ 重要度層別の定義
重要度:大・・・・・新機能を持った製品やサービス
新分野へ提供する製品やサービス
初めての顧客へ提供する製品やサービス
重要度:中・・・・・従来の製品やサービスの新ヴァージョン
重要度:小・・・・・従来の製品やサービスの部分変更
大雑把な層別ですが、こんな定義で層別して、それぞれに応じた監査を行うとよいでしょう。
「大」を、時計の製造業で例えれば、
新機能・・・「初めて電波時計を開発して発売」
新分野・・・「時計業界以外の建設業界へ販売」
新顧客・・・「従来品を初めて海外へ販売」
といった具合です。
これを参考に、皆さんの企業で扱う製品やサービスの層別を考えてみてください。
次回は、新製品展開の各段階で行う監査のポイントについて解説します。