◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(24)◆
第二十四回 松尾由弘 「変化点管理をやろう(その1)」
▼ ISO9001には、トレーサビィティの条項はあるが・・・
ISO9001の「7.5.3 識別及びトレーサビリティ」には、こう書かれています。
「トレーサビリティが要求事項になっている場合には、組織は、製品についての固有の識別を管理し、記録すること」
この規格は何のために設けられたのでしょうか。
おそらく、製品に不具合が生じたときに、原因の追跡や対象の特定などをやりやすくするために作られたものなのでしょう。
▼ 食品業界では有効な手段だが
農林水産省がユビキタスなどを利用した食品のトレーサビリティ制度の構築を進めています。食品は一般に多くの生産者の製品が入り混じって販売されています。スーパーに並ぶ豚肉をみても全国の生産者から集められたものが混在しています。
消費者の安全を考えると、生産地・生産者・生産過程の素性などを追跡できるようにしたこの制度は、たいへん意義のある制度と云えるでしょう。
しかし、一般に生産者が混在しない工業製品、サービス業で、このような「トレーサビリティ」は有効性があると言えるのでしょうか。
▼ 事後のために記録させる重大な過ち(規格の欠陥)
品質管理、品質保証の原則から言えば、事後に備えるよりも、事前に確認をして必要な処置を講じて不具合が発生するのを未然に防止しなくてはなりません。
この意味からISO9001には重大な欠陥があるといえます。
なぜなら、トレーサビリティの条項だけ設けて、製造・サービスの開始時の品質確認、諸条件の変更時の品質確認の条項を設けていないからです。規格には未然防止の考え方がありません。
▼ 品質不具合の大半は4Mの変更時に起きている
新聞やテレビで報じられる自動車事故。
大半は、交差点や踏み切り、カーブや雨で濡れた路面、追い越し時のスピードの出し過ぎなど、平常と異なる場面で発生することが多いようです。
品質不具合も、何かを変更したときに多く発生しています。「何か」とは前にもお話したことのある4つの「M」です。
4つの「M」とは、man(人)、machine(機械、設備、治工具)、material(材料)、method(方法)ですが、変化には意図的な「変更」だけでなく意図しない「変化」もあります。
▼ 例えば、こんなときに潜在的な不具合が作られる
休憩時間などによる作業中断後、前の続きをせずに一動作を飛ばしてしまった。熟練者が休んだので新人が作業を行った。機械の故障を修理したときに設定条件が変わってしまった。材料の入手先が変わった。
こんなときに不具合の原因を作ってしまうことが良くあります。その場で気がつく現象ならいいのですが、その場ではわからない性能や耐久性に潜在的な不具合を残すこともあります。
顧客の手に渡ってから発生すればクレームになります。顕在的な不具合も潜在的な不具合も、すべて変更時に検出できるようにしなければなりません。
ISO9001を導入した企業の多くは、「トレーサビリティ」の記録として4Mの変更を残しています。しかし、4Mの変更時の品質確認をルール化している企業は少ないようです。
ISO9001には、事後に備える「トレーサビリティ」はありますが、事前の品質確認を意味する変更管理あるいは変化点の管理の条項はありません。
次回は、「変化点管理」の具体的なやり方について解説します。