2007年12月20日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(38)

最終回 松尾由弘 「変化に対応できているかをみるのが定期監査」

 今回は、視点を変えた内部監査のやり方を紹介します。


▼ ISOは決め事が守られているかを確認せよ、だが・・・

 ISO9001の「8.2.2 内部監査」には、
 「以下の事項を明確にするために、あらかじめ定められた間隔で内部監査を実施すること」と定められています。
 以下の事項というところには、こんなことが書かれています。

 a) 製品の作り方やマネジメントのルールが守られているか
 b) マネジメントのルールが効果的に運用されているか

 これは、明らかに同じ仕事を継続している企業を対象にしています。

 以前にもお話したことですが、中小企業の多くは、多様化する経営環境の変化に晒されています。
 一年に一回程度の監査をすることにどれほどの価値があるのでしょうか。
 ISOが無駄なことを強いているような気がしてなりません。


▼ 変化に対応できているかを見ることが肝心

 いまどき、一年中同じことをやっている中小企業があるとすれば、よほどの改善嫌いか、成熟して成長が止まった企業いうことになります。
 中小企業は、日進月歩、成長を続けなければ生きていけません。

 定期的な監査では、自分の会社が変化する経営環境に、どれだけ追随できているか、遅れていることはないか、逆行していることはないか、等を見ることが大事なポイントになります。


▼ 父親参観日は子供の成長を確かめる定期監査

 定期的な監査の意義を子供の成長にたとえてみましょう。

 ● 子供が幼稚園にあがった。
   いっときも目を離したことのない我が子が、他人に預けられた。
   初めての父親参観日、母親参観日。
   元気に先生や友達に順応しているわが子を見て、感激した経験もあるでしょう。
 ● 幼稚園から小学校へ
   ここでも、ランドセルを背負った子供を観察(監査)したことでしょう。
 ● 中学、高校、大学、やがて社会人に
   あらゆる節目で、親は子供の成長を観察(監査)してきました。

 定期的な内部監査のあり方は、このように考えればよいのです。


▼ 日本には品質月間がある

 日本科学技術連盟、日本規格協会、日本生産性本部、日本能率協会が主催して、1960年に「品質月間」がスタートしています。

 私がお勧めする定期監査は、毎年行われるこの「品質月間」を利用して、品質意識の高揚を図りながら、企業のトップに従業員の努力の過程を見ていただく監査です。
 
 監査する側は、この一年間の経営環境の変化、事業構造の変化をベースにして、現在の状況がそれに順応しているか、無理はないか、遅れはないか、逆行していることはないか、などを見ます。

 監査される側は、この一年間の努力の過程と成果を見ていただけるように、準備して迎えます。

 品質月間にこのような監査をやれば、決して無駄な監査にはならないはずです。
 努力の成果に対する表彰制度などを加えれば、もっと楽しい定期監査になるはずです。

 ISO9001に則った監査は、とかく、泥棒と警察ごっこの監査になりがちです。
 そんな無駄な監査はやめて、私がお勧めする「子供の成長を楽しみにするような監査」へ切り替えましょう。
 工夫してみてください。


▼ 最後に

 この 「ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論」は、

 第一部 ISO9001を斬る
 第二部 品質保証の基本を極めよう
 第三部 もっとよく効く内部監査をやろう

 のシリーズで展開してきました。
 
 当初、これに「マネジメントの活性化を図ろう」を加えた四部作を考えていましたが、少々時宜を逸した感もあり、この三部作でシリーズを終了させていただくことにしました。
 拙い論旨ではありましたが、継続してお読みいただいた方に深く感謝申し上げます。

 なお、ISO9001については、まだまだ言い足りないことが多数あります。
 時宜を捉えて、別の形でアラカルト風に紹介してみようかな、と思っております。その節は、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

2007年11月25日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(37)

第三十七回 松尾由弘 「製造品質の内部監査をやろう(その5)」


今回は製造品質監査の最後の項目、「精密監査」について紹介します。


▼ 提供する新製品や新サービスを精査する

 製品やサービスの品質には、実施段階では確認が困難な品質特性があります。
 それを、開始前に調べておこうというのが、この精密監査です。

 電気製品や自動車の「耐久性」や「使い勝手」などがこれに該当します。
 サービス業では、実施したサービスの「耐久性(日持ちなど)」があります。


▼ どのようなことをやるのか

 電気製品や自動車を例にとってみましょう。
 量産開始に先立ち、本番と同じ設備、同じ材料、同じ方法、同じ作業者など同じ条件の下で製品を作ります。
 これを実際の使用状態と同じ条件で、可能ならば加速試験などを併用して、保証期間以上の稼動をさせてみます。
 自動車のドアを例に取れば、毎日通勤に使用する人を想定すると、一日に4回開閉することになるので、5年保証では、365日×5年×4回=7300回の開閉になりますから、その回数だけ連続して開閉してみます。
 その後で、ドアを分解して、オイルの拡散状態や変色や劣化の状態を見る、といった具合です。

 冷蔵庫のドアや、ガスの元栓、パソコンのキーボードなども同様で、劣化や使い勝手の変化等を見ます。

 床屋さんが新しいやり方の散髪を始めるときを例に取れば、
 本番と同じ条件で、老若男女、様々な人について本番同様の散髪を行い、その後で、着ているものの中まで毛が散っていないか、風を当てても髪は乱れないか、洗髪して毛先の不揃いはないか、などを見ます。

 ここは設計品質の確認ではありませんので、製造上の問題の摘出を目的に考えて行うことが肝要です。
 要するに、本番に入ってしまうと確認できないことを、事前に精査しておこうというのが、この精密監査です。


▼ 業界によっては法条例がある

 事前に法条例で確認が義務付けられている業界もあります。

 食品業では、検査機関による事前の安全検査があります。
 建設業では、少し趣きは違うももの建築確認などがあります。

 これらも、この精密監査の一部と考えてよいでしょう。


▼ 饅頭のあんこ

 マスコミの話題になりましたが、饅頭のあんこの日持ちなども、試作品と量産品とでは、製造条件が違いますから、本番のものを使って経過日ごとに味や食感、色や匂いなどの変化を調べます。
 これが精密監査に該当します。


▼ 問題があれば製造条件の見直しを

 一旦、設計品質の監査に適合したものが量産開始を迎えているわけですから、この精密監査では、設計に起因する問題ではなく、製造に起因する問題が摘出されるはずです。

 ここで摘出される問題は、量産の諸条件に、なにか想定外のことが起きていることを疑わなくてはなりません。
 設備、材料、作業者の技能、作業方法や加工方法の違いを調べてアクションをとります。

 ここで設計に起因する不具合が見つかるようでは、設計品質監査で見落としたことになりますので、設計段階まで遡ってアクションを取らねばなりません。


▼ 製造品質監査を完了したら

 問題がクリアできたら、責任者が出荷開始、サービス開始のゴーサインを出すことにすると良いでしょう。

 ISO9001の、8.4項「製品の監視及び測定」には、
 「合否判定基準への適合の証拠を維持すること。記録には、製品のリリースを正式に許可した人を明記すること」 と記されていますが、これは量産中のことを云っています。

 それよりも大事なことは、新製品の量産開始や新サービス開始のゴーサインです。
 開始の合否判定基準は何か、それを誰が許可するのか、などをきちんと決めて実施しましょう。


▽ 次回は、量産中、サービス実施中の定期監査について紹介します。

2007年10月25日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(36)◆

第三十六回 松尾由弘 「製造品質の内部監査をやろう(その4)」


新製品や新サービスの提供を開始するときに実施しなければならない内部監査について、(1)準備状況の確認、(2)購入品の品質保証状況や下請け業者の仕事の確認、について紹介しましたが、今回は提供する製品やサービスの品質の確認について解説します。


▼ プロセス間の特性から品質の安定度を確認

新製品や新サービスの立ち上げ時には、顧客へ提供する最後の品質だけでなく、その過程で生じる様々な特性を確認する必要があります。

身近なもので例えれば、ボールペンとキャップの勘合。
お客様は、購入した一本のボールペンの勘合がよければそれでよいのですが、製造する側は不良品を少なくするために、寸法のバラツキが重要な管理点になります。

キャップが嵌められる部分の外径とキャップの内径、両者のばらつきにより勘合のきつさ、緩さが変わりますので、そのばらつきの大きさから、キャップの勘合の程度、すなわち顧客が使うときの品質の安定性が分かります。

特性値から品質の安定度を推定する手法には、「工程能力指数」がありますので、これを使うとよいでしょう。

特性の平均値が規格の中央にあり、かつバラツキが小さければ工程能力指数は高い値を示し、平均値が規格の中央から片寄っていたり、あるいはバラツキが大きい場合には、工程能力指数は低い値を示します。

「工程能力指数」の詳しいことは、JIS規格のZ9041「測定値の処理方法」に定められていますので、参考にして下さい。


▼ 本番のスピードでも品質が確保できるか

欲しいもの(品質:Q)を、欲しい値段(コスト:C)で、欲しいとき(納期:D)に手に入れたい。これが顧客の願い、言い換えれば「顧客満足」ということになります。

従って、新製品や新サービスを提供する際に行う内部監査では、生産能力(スピード)の確認が必要になります。
特に、大企業の二次下請け、三次下請けのような仕事を受け持っている中小企業では、納期順守は重要な確認事項になりますので、試作、試運転を行う場合には、本番のスピードを想定してやってみましょう。

製造業では、顧客の最大需要を見込んだ生産体制で、サービス業なら顧客の最大数を想定して、量産試作、サービス体制を考慮して行います。

例えば、お店の新規開店などは、どっと人が集まりますから、最大人数を想定した販売体制や警備体制を想定して、また顧客の層をも考慮に入れて行います。


▼ 信頼性の評価

次に、顧客に提供されるときの品質だけでなく、顧客が使用した後の品質を保証するために、信頼性の評価を行います。

設計品質監査のところで、試作品、試験的なサービスにおいて、信頼性の確認を行っていますが、本番の製造やサービスでは、生産量(スピード)の違いや、使用する設備、施設の違いや、作業者の技能の違いなどから、信頼性に違いが出ることがあります。このために、本番の製品やサービスでもその信頼性を確かめておかねばなりません。

信頼性の評価項目には、寿命、耐久性、耐候性などがありますが、いずれにしても時間のかかる評価になります。
一般には、最終確認を待たずに、製品やサービスの提供を始めることになりますので、この確認は、あくまでも「設計段階で評価されたものを本番で再確認する」という位置づけで取り組むのがよいでしょう。


次回は、製造品質監査の締めとして「精密分解検査」を解説します。

2007年09月25日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(35)◆

第三十五回 松尾由弘 「製造品質の内部監査をやろう(その3)」


品質トラブルというのは、定常時よりもプロセスの開始時、あるいはプロセスに変化を生じたときに多く発生します。この考えに基づいて、内部監査は新製品、新サービスの開始時、あるいは新工法の採用時に行うのが適切であるという考えでこのシリーズを解説しています。

今回は製品やサービスに使用する部品や材料の品質確認について説明します。


▼ ISO9001の「購買」を実行しても、望みどおりのものを入手することはできない

ISO9001の7.4項の「購買」には、以下のことが定められています。

(1)購買先を評価して選択すること
(2)購買先へ購入したい製品やサービスの仕様をきちんと伝えること
(3)購買した製品やサービスを検証すること

などです。

しかし、このルールを実行しても、購買した材料や部品の品質不良の影響でトラブルを起こしている例は少なくありません。原因は何でしょうか。

以下のことが考えられます。


▼ 間違っている購買先の評価方法

まず第一に上げられるのが、購買先の評価方法です。
一般に、過去データなどで、あるいは過去のお付き合いの実績に基づいて、発注先が決められているようです。それだけで、望みどおりの材料や部品が入手できるでしょうか。

「良い購買先」=「望みどおりの製品」、ではありません。

会社を選ぶ目的は、継続して欲しいときに欲しいものが入手できるか否かを判断することにあります。倒産したり操業が不安定でないか、などを評価します。

「継続して購入するための会社選び」
「望みどおりのものを購入するためのプロセスの確認」

この二つを使い分けなくてはなりません。


▼ 間違っている検証方法

第二に、考えられる原因は発注した製品の検証です。
一般に、「検証」=「受入れ検査」として考えられているようですが、ここに落とし穴があります。

いわゆる「受入れ検査」では、隠れた瑕疵を発見することは困難です。

例えば、中国から食品素材を購入するとしましょう。
サンプルを検査しただけで、その後のものの購入まで保証できるでしょうか。サンプルは一時的なものかもしれません。
やはり、製造プロセスを確認しなくては、不安が残りますね。


▼ 内部監査では、プロセスを確認しよう

新製品や新サービスに使用する材料や部品は、それを製造しているプロセスを確認して採用を決める必要があります。

見るポイントは「4M」です。
すなわち、man(人)、machine(設備・機械)、material(材料)、method(方法)です。

例えば、中国から食品素材である「うなぎ」を仕入れるとしましょう。
日本に持ち込まれた「うなぎ」を検査して有害物質が検出されなかった、としてもその後の購入品の品質が保証できるでしょうか。「否」ですね。

そこで、4つのMを監査するわけです。

 ● うなぎを養殖している設備、施設、
 ● そこで仕事をしている人の技術、技能、あるいは人の異動状況、教育・訓練
 ● 使用している餌の内容、入手先、使用量、病気防止の薬品の使用、稚魚の入手方法
 ● 水の供給、交換の方法

などが、監査ポイントになります。

そして、これらの4つの「M」が、標準化され、継続して維持できることを確認します。


▼ 監査の実施時期

ここで述べている内部監査は、購入の開始時、あるいは変更があったときに行うことを前提にしています。

出荷元がきちんと品質保証をしていることが確認できれば、平常時は通常の受入れ検査でよいでしょう。それも、輸送途上の影響を確認すればよいのです。

大手企業の間では
 (1)出荷元が品質を保証する
 (2)受け入れ側は、輸送途上の影響の有無を確認する
 (3)梱包等に異常がなければ、中味は保証されていると判断し無検査で受け入れる。
というのが商習慣になっています。


▼ 自社の監査シートを確立しよう

これらについて、自社の製品、サービスに応じて、ノウハウを盛り込んだチェックシートを作成しておくと良いでしょう。

お客様へ製品やサービスを開始する前に、使用する材料や部品の事前の内部監査を実施して、問題があれば対策を講じる、これをきちんと実行することにより、トラブルフリーを実現することができます。


次回は、生産能力の充実度の監査について解説します。

2007年08月27日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(34)◆

第三十四回 松尾由弘 「製造品質の内部監査をやろう(その2)」


前回は、お客様へ製品あるいはサービスの提供を開始する前に確認しておかねばならないことを、5項目挙げておきました。
今回から順を追って、その5項目について解説してまいります。
第一番目は、製造・サービスの事前準備の充実度の確認です。


▼ 標準類の整備状況の確認

まず、製造・サービスの基本になる標準類が整備されているかを確認しましょう。
工程の順序、それに関わる設備・機械・道具類、それぞれに必要な規格基準が整備される必要があります。

それらについて内容も確認します。過去の類似製品、類似のサービスと比較してみる、さらに、過去問題が対策されているかなどを見ると良いでしょう。

製造業では「製品検査規格」や「QC工程図」、建設業では「施工品質計画書」などというものがこれに該当します。


▼ 設備・機械・治工具の整備状況

標準・基準類が確認できたら、それらを基に、生産やサービスに必要な、設備・機械あるいは治工具が揃ったことを確認します。

特に、それらの所定の性能、特性、能力などが確保できたかどうかを詳細に確認します。
間に合わないからと云って、仮の設備や機械を使う場合もあると思いますが、原則は本番用でなければなりません。お客様には、同じ品質を提供しなければならないからです。


▼ 作業マニュアル、記録用紙等の確認

製造業では、日常管理のツールである、要領書や記録用紙・管理図などの整備状況を確認します。
これには、初めて使用される機械・設備の操作マニュアルなども含まれます。

サービス業や建設業でも、初めて行う作業や、新規に採用した人がいる場合などは、それなりに要領書や記録用紙類が必要になるでしょう。


▼ 必要な人材の確保

製造・サービスの実施には、必要な資格や技能を持った人の確保も大事な要素になります。
内部監査では、それらが必要条件を満たしているかを監査しましょう。

人材の確保には、教育訓練する方法、外部機関に研修を受ける方法、資格や技能を持った人を採用する方法などがあります。

次回は、製造品質監査の二つ目として、部品、材料の品質確認について解説します。

2007年07月26日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(33)◆

第三十三回 松尾由弘 「製造品質の内部監査をやろう」(その1)


▼ 設計品質監査とは・・・・・・

 ◆次世代携帯電話の設計が完了した、生産準備に入ろう、設備投資をしよう。

 ◆新ビルの設計が完了した、建設を始めよう、そのために投資をしよう。

 ◆ラーメン屋を開店したい、その企画が出来上がった、設備投資をしよう。

経営トップが大きな投資を決心する。このようなときのために設計品質監査があります。

設計品質監査は、検証や妥当性確認とは違います。
設計の「プロセス」を監査することにより、設計品質の「充実度」を判断するのです。

競合製品との比較、過去問題の解決、作りやすさの改善などといったことがきちんと行われたか、そして問題を処理できたか、などのプロセスを見ることにより、設計の充実度が分かります。

前回までに、このような話をしてまいりました。

今回から製造品質の監査について解説してまいります。


▼ 製造品質監査とは・・・・・

 ◆新ビル建設の準備が出来た、建設を開始しよう(建設会社)。

 ◆新ビルが出来上がった、使用を開始しよう(ビルのオーナー)。

 ◆ハリーポッター完結編の印刷を始めよう(印刷会社)。

 ◆ハリーポッター完結編の発売を開始しよう(出版会社)

 ◆新番組の放映を開始しよう(テレビ局)。

 ◆ラーメン屋の新装が成った、開店しよう(店主)。


これらは顧客に製品やサービスの提供を開始する大事なときです。失敗があればその後の商売に大きく影響します。
関係者は、「失敗は許されない」という覚悟で臨んでいる事でしょう。
そのために、前日までに徹夜で点検や練習を行ったという話も良く聞きます。

このようなときに、必要なのが「製造品質監査」です。

「製造品質監査」も、「設計品質監査」と同様に、製品やサービスの品質そのものではなく、準備の過程(プロセス)で行われた品質保証活動を確認して判断します。


▼ 監査の対象は

生産やサービス提供の準備が完了したことを確認し、顧客への提供の開始を決断するために確認する事項には、以下のようなものがあります。

(1) 製造やサービスを行うための事前の準備の充実度

(2) 使用する部品や材料の品質保証の充実度

(3) 生産能力やサービス能力の充実度

(4) 提供する製品やサービスの品質の充実度

(5) 表面に出ない不具合の有無 


これらについては、次回以降、順を追って具体的に解説することにします。

2007年06月27日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(32)◆

第三十二回 松尾由弘 「設計品質の内部監査をやろう」(その3)


ここから少し業界特有のチェック項目が出てきますが、サービス業、製造業、建設業、食品業など、それぞれの業界に応じてアレンジしてみてください。


▼ 特許など、固有技術の評価

1、関連特許、意匠、関連する法規制に対する配慮をしたか
2、DRをしたか
3、外観、デザイン、フィーリングを考慮したか

最近のマスコミのニュースを見ると、関連特許、意匠、法規制に関する問題は、結構多いものです。
商品を提供する段階になってから問題が出ると、その損害は計り知れないものがあります。
また、設計の後のプロセスからの意見の吸い上げるという意味で、DR(デザインレビュー)は欠かせません。中味の濃い、DRが行われているか、よく監査しておきたいものです。


▼ 後工程への意図伝達

1、設計の公差の妥当性を、試作、試運転、試打ち等で確認したか
2、設計のFMEAを実施したか
3、設計の意図を、後工程へ伝達したか

やや大きな会社になると、設計と現場のコミュニケーションが希薄になり、これが原因で品質問題を内在させている例もあるようです。意思の疎通という意味でも、こんなチェックが欠かせないでしょう。

FMEAとは、故障モード解析の手法ですので、馴染みのない企業の方は、商品の故障やクレームが起きるメカニズムを考えて、必要な処置をとられればよいでしょう。


▼ 試作・実験に関する監査

一般に、新製品、新商品、新サービスを開始するときは、試作やモニターテストなどが行われます。
このステップがきちんと行われたかを監査しましょう。

1、使用した部品や材料の品質を確認したか

補助的な部品や材料の品質を確認しないまま、試作やモニターに使ってしまうことはないでしょうか。
それができばえに影響していることもあります。

逆に、試作では選りすぐった部品や材料を使って良い結果を出して、量産で設計通りに生産・サービスを行ったら不具合が発生した、なんてこともあります。

2、試作・モニターで設計どおりに、作らなかった部品や材料、特性などはないか
3、試作・モニターで検出した問題を設計にフォローしたか
4、評価段階で把握した問題について対策されたか


▼ 相手物との相性の確認

1、その製品を、顧客が顧客の製品に組み込むときの相性を確認したか
2、使い勝手、誤組み付け、異常操作などの検討をしたか

顧客が間違った使い方をしないようにすることはもちろんのことですが、製造やサービスを行う人が、間違った作業やサービスをしないように、気配りすることも必要です。


▼ 新製品、新サービスのランクに応じて

これで設計品質の内部監査の説明を終わりますが、これら全てを新製品、新サービスに適用するのではなく、ランク付けして使い分ければよいでしょう。

例えば、新機能を持った製品、新分野へ進出する製品やサービスならば全項目を。
従来製品の外装だけ変えた製品なら、全部ではなく、必要な項目だけ監査するというように、区分します。

いずれにしても、設計に内在する品質問題を的確に抽出して対策を取り、不具合を未然に防止するという意味で、設計品質監査は大変、重要な監査なのです。

次回は、生産準備段階の内部監査について説明します。

2007年05月27日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(31)◆

第三十一回 松尾由弘 「設計品質の内部監査をやろう」(その2)


▼ 設計のプロセス監査をやろう

設計が完了して、次のステップへ進める前に、設計に内在する問題を顕在化させなくてはなりません。
設計に内在する問題には、プロセスに起因する問題と、技術的な問題とがあります。今回は、プロセスに起因する問題を顕在化させるための内部監査について紹介します。


▼ 商品企画段階から持ち込まれた問題

ISO9001では、7.2項の「顧客関連のプロセス」のところで、顧客要求事項を確認して受諾前に承認しておけ、というような事を言っていますが、現実には判断が出来ないまま設計に入ることもあり、問題のあることが設計の途中や設計検証、妥当性確認などの段階で判ることもあります。
このため、設計が終わったときに、以下のようなチェックを入れます。

1、企画段階で設定された技術目標に抜けはなかったか
  (項目の抜け、低すぎる目標、評価条件の不備などを確認)
2、企画段階で設定された技術目標に無理はなかったか
  (過剰な項目、過剰な目標、無理な評価条件などを確認)

定められていない技術目標があったとすれば、設計者の判断(ときに独断)で進められている可能性がありますので、顧客の使用状況とマッチングしているか否かを当事者以外の立場のものが確認する必要があります。
高すぎる技術目標があったということは、設計的に無理をしている可能性が考えられますので、信頼性の再評価を行う必要があります。
この段階で検出された問題は、商品企画のプロセスの改善にも役に立ち、次期製品の企画の充実につなげることができます。


▼ 自社の類似製品との比較

次に、自社の類似の製品や商品で発生している諸問題が、設計に反映されているかを見ます。

1、自社類似製品で発生したことのあるクレームを設計に反映したか。
  (直接の顧客だけでなく、その先の顧客で発生しているクレームについても確認)
2、自社類似製品のVA分析を行って、設計に反映したか。
3、自社類似製品の工程上の問題を設計に反映したか。
  (設備能力、FP(ポカヨケ)、工程の管理レベルへの配慮など)
4、自社類似製品の安全、公害に対する配慮を検討したか。
5、自社類似製品のPL問題を検討したか。

特に、設計部門に独立性があり、設計者が後工程で起きている問題に直面する機会が少ない会社では、このチェックが有効に生かされることでしょう。
これらのチェックは、設計者の頭の中で答えさせるのではなく、以前に紹介した「経験不具合チェックシート」を使って客観的証拠をもって答えさせる必要があります。


▼ 他社の類似製品との比較

同業他社との比較は欠かせません。
1、他社類似製品の品質をチェックしたか
2、他社類似製品の品質と比較して、当製品が優る点はあるか

業界トップに立つためには、新製品をひとつ出すごとに、他社より一歩先に出なければなりません。
私が勤務していた会社では、設計者がプライドにかけて、この質問に答えてくれたものです。


この続きは、次回に。

2007年04月23日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(30)◆

第三十回 松尾由弘 「設計品質の内部監査をやろう」(その1)

商品企画の内部監査における指摘事項について是正処置が取られると、いよいよ設計・開発活動です。ISO9001で言えば、7.2項の「顧客関連のプロセス」を通過し、7.3項の「設計・開発」の手順に入ることになります。


▼ ISO9001と内部監査の関係

 ISO9001には、設計・開発と製造・サービスとの間に、7.4の購買がありますが、製造・サービス開始の準備のステップがありません。

 企業が新規事業や新製品を開発して進める過程には、「投資判断」という重要な節目があります。

 すなわち、
 ① 顧客の注文を受けるか否かという判断
    → OKなら、設計開発費用を投資して設計開発を行う
 ② 設計したものを製品化するか否かという判断
    → OKなら、部品、材料の購入準備をする、設備等必要な機材を整える
 ③ 部品、材料を試作・購入して、それが使えるか否かという判断
    → OKなら、購買先と契約を結び購入を開始する
 ④ 設備等必要な機材が使えるか否かという判断
    → OKなら、製造・サービスを開始する。あるいは納品を開始する

 このように、4つの投資に影響する重要な判断過程があります。
 しかるに、ISO9001では、①が顧客関連のプロセス、②が設計開発、③が購買、に該当していますが、④に該当する条項はありません。

 この内部監査の改造論では、
 ①の顧客関連のプロセスの監査を、「企画品質監査」
 ②の設計開発の監査を、「設計品質監査」
 ③の購買の監査を、「購買品質監査」
とし、
 ④の生産準備が完了したことを確認する監査を、「製造品質監査」
として述べて参ります。


▼ 設計品質監査とは
 
 ISO9001の設計開発の
 7.3.5項には、設計開発の検証、
 7.3.6項には、設計・開発の妥当性確認
という項目がありますが、これらを設計・開発が完了した時点で、監査しようというのが、この設計品質監査です。
 次のステップに投資してもよいか否かの判断に供するのが目的です。
ここで駄目なら、設計を見直して対策を取らせることになります。
 そのためには、設計開発の当事者が行う第一者監査ではなく、その利害関係にある部署が行う第二者監査で行うところに意義があります。


 ▼ 何を見るか

 設計品質監査で監査する項目は、大きく分けて二つあります。

 ひとつは、「システム監査」です。
 これは、既にISO9001を導入していて内部監査をやっている企業のかたがたはご存知のやり方です。「ルール」通りに仕事をしたか、という監査です。
 ただし、「ルール」は、ISO9001の規定だけでなく、その業種に適したものがありますので、見直していただく必要はあるでしょう。

 二つ目は、「技術監査」です。
 設計品質が商品企画で意図したものが出来ているか、言い換えれば顧客の要求する品質が設計段階で確保されているか、という監査です。
 評価データ、あるいは試験資料などを見ることになります。当然、それなりの技術的な「目」が必要ですが、市場の状況を掴んでいる部署あるいは人(品質担当者や営業担当者)が監査するのがよいでしょう。

 次回は、「システム監査」と「技術監査」の詳細なやり方について説明します。

2007年03月26日

◆ナンバーワンを狙う企業のためのISO9001改造論(29)◆

第二十九回 松尾由弘 「商品企画を内部監査しよう」


 前回までに、
 ISO9001を導入した企業で内部監査が形式的になっており、十分に活用されていない。
 お客様に信頼されるためには、よい製品が作り出されていることを監査しなくてはならない。
 製品を層別して、品質リスクの大きさに応じて監査するとよい。
 層別には、未経験の機能を含んだ製品やサービス、新分野へ進出する製品やサービス、デザインを変更しただけの製品などがある。
という話をしてきました。
 今回から、新製品展開プロセスのステップにおける内部監査について解説してまいります。


▼ 引き合い時から、品質リスクは始まっている

 どこの企業でも、新しい仕事の引き合いがあれば、最初に検討することは、その事業をやるかやらないかという決断です。
 大企業では、企画提案、企画会議という仕組みがあり、総合的に判断されて決済されますが、中小企業では、社長が総合的に考えて決定していることが多いようです。
 この段階が、製品やサービスの内部監査の最初のステップになります。お客様の要求を引き受けた段階から品質リスクが始まっているからです。また、この段階で品質リスクに対応が必要だからです。

 原価、売価、数量、設備投資、資金繰りなど、検討項目は多数ありますが、品質リスクにどう対応するかをよく検討しておかないと、思わぬ失敗を招くことになります。
 最近、マスコミをにぎわしている欠陥商品、湯沸かし器、石油暖房機、洋菓子など、企画段階から内部監査で確認する仕組みを作っておけば、こんな問題は防げたと思われるものも少なくありません。


▼ ISO9001、7.2.2項のc)が意味するところ

 ISO9001の7.2項は、顧客関連のプロセスですが、
 細目の7.2.2は、製品の要求事項に関するレビュー、という項目になっています。
 さらに、その細項目の c)に、組織が、定められた要求事項を満たす能力をもっていることを確実にしなさい、とあります。
 言い換えれば、お客様から注文を受けたときに、お客様の要求事項を満足した製品やサービスを提供できるか否か確かめて、確実に満たせるようにしなさい、ということです。
 能力という言葉は、単なる生産能力ではなく、品質、原価、納期すなわちQ・C・Dを満たす能力を指しています。


▼ 満たす能力があることを確認するには

 一般に、ISO9001を導入した企業で、安易に考えられ、見過ごされがちな項目ですが、ISO9001で云っている 「要求事項を満たす能力をもっていることを確実に・・・」は、重要な要求事項です。
 これを内部監査で確認するにはどうしたらよいでしょうか。
 
 いくつか、チェックポイントを挙げておきます。各社でアレンジして見てください。

(1) 自社で初めての機能を持っている製品やサービスの企画ならば、まず競合メーカーの製品やサービスの調査が必要です。
 内部監査では、監査員が、当事者に
「競合製品の品質を調査し、優位性を確保できますか」
という質問が監査の切り口になるでしょう。

(2) 既に、経験のある製品やサービスの類似の製品やサービスを展開する企画ならば、過去問題をリストアップして確実な対策を立てる必要があります。
 監査の切り口は、
「自社の過去問題を分析し、新製品の企画に盛り込んでいますか」
となるでしょう。

(3) 新分野への展開ならば、その分野の品質環境を調査し対応する必要があります。例えば、常温で使用していたプリンターを自動車に搭載するとすれば、自動車の振動条件、温度条件、静電気の条件などがわからなくては、その分野へは進出できません。
 監査の切り口は、
「その分野の品質を取り巻く環境を調査しましたか」
となります。

 他にも、監査の着眼点はいろいろ考えられますが、いずれにしても企画段階で内部監査を行うことは、早い段階で品質保証の対応が可能になるというメリットがあります。


▼ 誰がやるか

 ISO9001の内部監査員の資格には、内部監査員の力量があること、と定められていますが、ここでは、さらに付け加えて、「品質保証の責務を担っている者、過去の品質問題に対する知識と経験を持っている者」ということになります。
 平たく言えば、この場合の内部監査員には、品質担当者がふさわしいということになります。。

 次回は、設計品質監査について解説します。