2つの事件と独禁法指針
今回は、「支払遅延」について触れるはずであったが、先月報じられた2つの象徴的な事件を取り上げないわけにはいかなくなった。談合マニュアルまで整備され、公取法違反容疑で6人の逮捕者を出した「緑資源機構」の官製談合事件である。後日、政治家などの自殺者まで出した。もう一つは、NEC国内営業のソフトウエア開発関係部が、下請先へ総額約22億円にのぼる架空や水増しの発注を繰り返し、下請先から現金約5億円をキックバックさせたと言う業務上横領事件である。
発注元は、「下請先」を、それぞれ役人の天下り受け皿にしたり、裏金捻出機関にしているのである。この様な犯罪行為は、日ごろの経済活動の現場から見ると、結局、発注側の「優越した地位」の利用に基づく不公正な下請取引の実態がまずあり、「その延長線上で行われた結果」だと言っても過言ではないと思われる。
一方、公正取引委員会は、「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法の指針」(平成16年3月31日)で、支払遅延、代金の減額要請、著しい低い対価での取引要請、やり直し要請、協賛金等の負担要請、商品等の購入強制、情報成果物に係る権利等の一方的取扱いなどの禁止等を打ち出しているが、先に見た事件を考えると、下請法そのものの本質を確認しておく必要があろう。
ここでは、下請法九つの特徴を述べる。
下請法九つの特徴
下請法九つの特徴を要約すると、次のようになる。
第1の特徴は、規制対象の範囲を取引の態様と経済力格差の観点から明確化している(第2条)。下請法は規制対象になる親事業者および保護の対象である下請事業者を資本金を基準にして「法定」している。
第2の特徴は、下請代金の「支払期日」を法定する(第2条の2)ことによ
り、支払遅延の基準を明確にしている。
第3の特徴は、親事業者に発注内容を明確に記載した書面(発注書面)を、取引の都度、下請事業者に交付することを義務付け、取引条件の明確化、下請取引に係るトラブルの未然防止を図っている(第3条)。
第4の特徴は、親事業者のどのような行為が優越的地位濫用行為に該当するかをあらかじめ明確に示すことによって、違反行為の未然防止を図るとともに事実認定を容易にし、違反行為を速やかに排除できるようにしている(第4条)。
第5の特徴は、親事業者に下請取引に係る書類の作成・保存を義務付けることにより、親事業者に対し違反行為を起こさないよう注意を促すとともに、公正取引委員会、中小企業庁の調査が実効的に行い得るようにしている(第5条)。
第6の特徴は、中小企業庁長官に対し、調査の結果、親事業者に遵守義務違反の事実があったときは公正取引委員会へ措置請求できるようにしている(第6条)。
第7の特徴は、違反行為によって受けた下請事業者の不利益を元の状態に戻すよう親事業者を指導(原状回復措置を勧告)する仕組みになっている(第7条)。
第8の特徴は、「勧告」に従った場合は独占禁止法を適用しないと定めている(第8桑)。
第9の特徴は、公正取引委員会と中小企業庁長官に広範な調査権限を認め、行政機関が積極的に違反行為を発見する仕組みをとっている(第9条)。
参照:「新下請法マニュアル」(商事法務・鈴木満著)
今回の事件の内、官製談合は、連綿と続く「商慣行」であり、商取引以前の悪弊である。この悪弊を排除するには、官製談合を犯罪と決め付ける下請法を策定する必要があろう。また、NECのケースは、強いて言えば、優越的地位の濫用である。これに類することは、商取引において不当な担保提供や保証金差し入れなどの慣行としてほとんどの業界で行われていることを考えれば、も少し具体的に踏み込んだ違反行為を規制対象とすべきであろう。
次 回は、今回触れなかった「支払遅延」について取り上げる。
中小企業基本問題研究会(略称:中基研) 合田、亀井