中基研レポ
納税資金づくりのための対策とそれが事業経営にもたらす影響⑤
納税資金づくりのための対策とそれが事業経営にもたらす影響についての以下のような5つの典型的な事例に整理されているが、今回は⑤についての具体的事例を取り上げる。事例紹介については、今回が最終回となった。ご愛読ありがとうございました。
① 事業用地の売却による事業縮小、廃業
② 流動資産の充当等による相続人の資金調達力の低下
③ 自宅の売却による経営基盤喪失
④ 自社株の売却または物納による経営権の縮小
⑤ 納税による資産減少や延納による事業継続意欲の減退
⑤ 納税による資産減少や延納による事業継続意欲の減退
納税の結果、経営者の資産が減少し、あるいは延納により後継者に新たな負担が生ずる。この結果、事業の将来性が明るくないときなどには、後継者は事業継続の意欲を失いかねない?以下は、相続により事業継続意欲が減退するおそれのある事例である
(事例23.都心3区)
A氏(70歳代前半)は、船舶用機器を製造している会社(業歴40年以上、従業者数約10人)の創業社長である。これまで資産蓄積に努めてきた結果、A氏の相続が発生しても、相続税(1,2次計550百万円)は現在の金融資産の範囲内で納税できる見込みとなっている。ただ、納税の結果自宅と持ち株と若干の金融資産しか残らないため、後継者(長男)は、経営者として資産の余力がなくなるのと、事業の将来性も厳しいことから事業意欲がわきにくくなるだろうとA氏は考えている。
(事例24.その他23区)
A氏(年齢不詳)は、装飾品の製造卸業を営む会社(業歴50年以上、従業者数数人)の2代目社長(創業者の娘婿)である。創業者である義父の相続に続いて、義母の相続が発生した。この結果、事業を営む店舗つきマンションは自分たち夫婦の手元に残ったが、納税(相続税額649百万円)のためにそのマンションの底地(339㎡、評価額1,136百万円)を物納せざるを得ない状況である。事業の基盤である店舗の底地がなくなってしまうのと、今後発生する地代の負担を考えると、利益の薄い事業を続けていく意欲がなくなってしまう。
中小企業基本問題研究会(略称:中基研) 合田、亀井
出典:「事業承継(相続税制)が中小企業経営に与える影響」(平成6年、東京都労働局