中基研10月
中小企業相続税事例
納税資金づくりのための対策とそれが事業経営にもたらす影響 10月は、納税のための7通り対策の結果、生じる事業経営への影響を確認してみます。また、9月に予告しました中小企業基盤整備機構の事業承継ガイドライン検討委員会委員として活躍された高井正昭講師に、事業承継ガイドラインなどについて講演が確定しましたので、今回は、その案内と講演参加のお願いをさせていただきました。奮ってご参加下さい。(詳細末尾)
インタビュー事例にみられる納税対策と、その結果生ずる影響を整理すると以上のとおりであるが、実際には、実行される対策も一通りではなくいくつもの対策が併用されるケースも多く、それらのもたらす影響もさまざまに重なりあっているのが実状である。
そこで、以下最終回までの5回では、納税資金づくりのための対策とそれが事業経営にもたらす影響についての典型的な事例を選び5つの項目に整理してみた。
① 事業用地の売却による事業縮小、廃業
② 流動資産の充当等による相続人の資金調達力の低下
③ 自宅の売却による経営基盤喪失
④ 自社株の売却または物納による経営権の縮小
⑤ 納税による資産減少や延納による事業継続意欲の減退
今回は①についての具体的事例を取り上げる。
① 事業用地の売却による事業縮小、廃業 相続税に充当できる余裕資産がない場合には、会社の事業に必要な土地を売却したり、物納せざるをえない。その場合、事業の効率が落ちたり、規模が縮小したり、最悪の場合には廃業という事態も起こりうる。
(事例15.その他23区)
A氏(70歳代後半)は、造園業を営む会社(業歴50年以上、従業者数約10人)の創業社長である。A氏は父の相続で取得した土地を材料置き場として造園業を始めたが、近時の地価高騰でこの土地の評価が急上昇(472㎡、254百万円)し、予想される相続税額は高額(140百万円)にのぼっている。
もし、A氏の相続が発生すると、金融資産を充当するだけでは足りず、この土地の一部を分割し、売却せざるをえないと考えられる。その場合、代替地が見つかればよいが、そうでなければ事業規模の縮小を余儀なくされよう。
(事例16.その他23区)
A氏(70歳代半ば)は、清掃業を営む会社(業歴40年以上、従業者数約20人)の創業社長である。A氏の資産(相続税評価額268百万円)のほとんどが不動産(自宅と会社に提供している事務所)と株式であり、金融資産の蓄積は少ない。もし、A氏の相続が発生した場合(相続税額1.2次計74百万円)、自宅を相続分割の対象からはずすとすると、事務所を分割相続せざるをえず、その場合事業の継続に支障をきたすことになる。
中小企業基本問題研究会(略称:中基研) 合田、亀井
出所:「事業承継(相続税制)が中小企業経営に与える影響」(平成6年、東京都労働局)